官庁施設②_ 層間変形角の制限値

どうもimotodaikonです。

 

今回は、官庁施設の大地震時の層間変形角の制限値について解説していきます。

以前の記事でも触れましたが、 層間変形角とは、各層のスラブ間の変形量を示す指標です。

ルート1の許容応力度設計以外では必ずチェックする項目になります。

今回は官庁施設の層間変形角の制限値について見ていきます。

 

官庁施設の大地震時における層間変形角の制限値については、「平成30年度版建築構造設計基準の資料P.14~」に記載されています。

構造種別によってそれぞれ制限値が違います。

 

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※建築構造設計基準の資料P.14より引用

出典:国土交通省大臣官房間庁営繕部整備課

 

ここでいう地震とは二次設計に該当する地震力を指します。

保有水平耐力計算時の地震力と読み替えてよいです。

 

表を見てみると鉄骨造のみ1/100,他は1/200と設定されています。

これらの数値以下になるように変形角を調整しなさいということですね。

理由として、官庁施設は、災害時の応急対策活動の拠点としての機能を果たす必要があり、人命を第一とした十分な安全性を確保した建物でなければなりません。

その為、変形角の制限は勿論、津波に対する計画や、耐久性など細かなルールが定められています。

 

鉄骨造の変形角の制限値が1/100まで緩和されているのは、RC造、SRC造に比べて変形しやすいからです。

仮に1/100→1/200とすると

構造部材の高い剛性が必要→部材断面が大きくなる→コストが上がる

ことになります。

現実的ではない断面になる可能性があるため、1/100を制限値としているのだと思います。

 

ここから層間変形角の計算方法について見ていきます。

 

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※建築構造設計基準の資料P.14より引用

出典:国土交通省大臣官房間庁営繕部整備課

 

地震時の層間変形角の計算方法は上記によります。

「層間変形角の計算方法は、建築物の規模、振動性状等に応じて①から3までのうち適切な方法による。」と書かれています。

 

①時刻歴応答解析

建築物の高さが60mを超える場合の解析方法です。

時間とともに変化する地震力を精密に算出し、建物に加え建物の挙動を確認します。

通常の構造計算より緻密な解析結果が得られるものと考えてください。

 

②限界耐力計算

住宅などの建築物が地震力に対しどこまで耐えられるかという指標を計算するものです。

また、積雪時や暴風時などに安全係数を見込んで設計する手法でもあります。

・積雪時:G+P+1.4S

・防風時:G+P+1.6W

など。

 

 

③「令」第82条の2に規定する層間変形角より推定する方法

今回はこの③について触れます。

δpの式に各値を入力していけば計算できます。

鉄骨造、ルート3で層間変形角の制限値を1/100と仮定して計算してみると

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以上より、δe=1/1062.5が求められました。

この変形角を一次設計において満足しておけば問題ありません。

この変形角は二次設計時の層間変形角の制限値である1/100から逆算して求めた一次設計時に満足すべき層間変形角です。

一次設計において層間変形角がδe=1/1062.5以下に収まっていれば、大地震が来た時でも変形角の制限値1/100を超えない十分な剛性を保有しているとみなします。

 

ちなみにDs値とは構造特性係数といって、建物の靭性を表す指標になります。

靭性とは、粘り強さと言い換えてもよいです。

Ds値が小さい建物は靭性が高く、塑性変形能力が高い。

Ds値が大きい建物は靭性が低く、塑性変形能力が小さい。(急激に壊れやすい)

と考えてください。

また、Ds値が大きい程大地震時の設計地震力は大きく設定しなければなりません。

Ds値が大きいということは粘り強さがなく、突然破壊を起こすなど不安定な建物とみなせるので、ペナルティを課せられる訳ですね。

なお、DsはS造で0.25~0.50、RC造で0.30~0.55です。

一緒に覚えておくとよいですね。

 

今回は官庁施設の層間変形角の制限値について触れてみました。

いかがだったでしょうか。

 

官庁施設の設計には様々なルールがあるので構造設計基準の資料に目を通しておくことをお勧めします。

 

それでは今回はこの辺で。

ではまた。