ねじり応力とは①~鉄骨造の場合

どうもimotodaikonです。

 

今回はねじり応力について考えます。

 

ねじり応力とは

ねじり応力とは、部材に生じるねじれる力のことです。

鉄骨造、鉄筋コンクリート造問わずねじり応力が生じるパターンは往々にしてあります。

今回はねじり応力が発生しやすい状況とその対策について考えたいと思います。

 

ねじり応力~鉄骨造の場合

まず鉄骨造においてねじりが生じやすいパターンを考えます。

ありがちなのが、大梁の弱軸側に庇受け用の片持ち梁を配置する場合でしょうか。

 下図のような場合を考えてみたいと思います。

 

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 庇がG1の弱軸側に取り付いています。

庇受けであるCG1はG1に剛接合とします。

断面図を下図に示します。

 

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 この場合、CG1が受けた庇の重量に、実長を乗じたねじりモーメントMTがG1に作用することになります。

 

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  サンブナンのねじり定数とは

上述のねじり応力MTに対し、H形鋼自身のねじり抵抗力で処理する考え方があります。

ねじり応力に対する抵抗力をサンブナンのねじり定数といいます。

鉄骨断面によって抵抗力の大きさが変わってきます。一般に鉄骨部材が大きくなるほど抵抗力も大きくなります。また、細幅よりも中幅、中幅よりも広幅の方が抵抗力が大きくなります。

 

H形鋼のサンブナンのねじり定数の算出式は以下によります。

 

J=1/3x{Btf^3+(H-tf)xtw^3}

H:梁成

B:梁幅

tw:ウェブ厚

tf:フランジ厚

 

実際に検討してみる

ここからは実際に例題を通して検討をしてみます。

設計条件をまとめます。

1.庇は折板とし、流れ方向はX方向とする。 

2.庇の重量Wは500N/m2とする。(鉄骨・ブレース含む)また、長期荷重とする。

3.庇の出は2,500mmとし、幅は3,000mmとする。

4.折版はCG1先端つなぎのbで受けるものとする。また、bの反力が集中荷重として、CG1先端に加わるものとする。

5.G1断面は【H-600x200x11x17_(SS400)】とする。

 

以上の条件に沿って検討を行います。

 

ねじり応力の算出

ねじり応力を算出します。

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CG1先端に生じる集中荷重は、bの反力によって求めます。

ねじり応力MT=Pxℓより2.34kNmと求められました。

 

サンブナンのねじり定数の算出

サンブナンのねじり定数を算出します。

式は上で書いた通りです。

 

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許容応力度の算出及び断面算定

設計荷重とねじり定数が求められたので、許容応力度の算出と断面算定を行います。

設計応力は先ほど算出したMTにウェブ厚twを乗じてせん断応力として設計します。

許容せん断応力度は長期荷重の為、fs=F/√3/1.5=90.5N/mm2ですね。

 

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以上でねじり応力の計算は終了です。

結果的に検定値0.31となりました。

検定値1.0未満なので、ねじり応力だけであれば鉄骨のねじり抵抗で処理できることになります。

ただし、ここで注意すべきなのが、曲げ応力が生じる梁の場合、曲げ応力とねじり応力を組み合わせて検討を行う必要があるということです。

一般的な梁では曲げ応力は基本的に生じるものなので、部材の検定値に余程の余裕がない限り、鉄骨のねじり抵抗でねじり応力を処理する方法は大変危険です。極力避けるべきです。

 

対応策を考える

鉄骨のねじり抵抗力でねじり応力を処理することは出来ます。

ですができる限り避けるべきです。では他ににどのような対策が考えられるのか見ていきたいと思います。

 

1.控え梁を設ける

1つ目の策として控え梁を設けるというものがあります。最も一般的な方法です。

下図を見てください。

 

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CG1の裏にCB1を設けます。接合方法は剛-ピンとします。

その場合の応力図は下図のようになります。

 

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控え梁CB1を設けることで、CG1端部に生じる曲げモーメントに対して釣り合いを取ることができます。

控え梁がない場合は、G1が右側にこける様に回転してしまいますが、控えを入れることで、回転を抑え込むことができます。つまりG1にねじり応力は生じません。

シーソーの両側に同じ体重の人が乗れば、シーソーは傾かず平行な状態を維持しますよね。そのような状態と考えるとイメージしやすいかと思います。

この時、CG1とCB1は同断面としておけば問題ありません。

CB1の断面の方が小さくならないよう気を付ければOKです。

2.補強PLを入れる(閉鎖型・日の字型にする)

2つ目の策はHの両側に補強PLを入れる方法です。

下図のような感じにPLを溶接して角型鋼管(コラム)のようにします。

 

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補強PLをPL-16としてねじり定数を計算しました。

BJ=40095207mm4となり、PLを入れる前と比較して500倍以上のねじり抵抗力となります。PLを入れるだけで抵抗力が大幅に向上することが理解いただけたかと思います。

ただし、断面算定にはBJは用いません。

閉鎖型の場合、角型鋼管とみなし角型鋼管の計算式に準じます。

H形鋼・角型鋼管・鋼管によってねじり定数及び設計せん断力の計算式が異なることに注意しましょう。

 

今回は鉄骨造のねじり応力について考えました。

鉄骨造だけでなく、他の構造でもねじり応力が生じる場合があります。

次回は鉄筋コンクリートの場合を考えたいと思います。

 

それでは今回はこの辺で。

ではまた。

 

 

鋼構造許容応力度設計規準

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新建築土木構造マニュアル

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