どうもimotodaikonです。
今回は冷間成形角型鋼管について考えます。
冷間成形角形鋼管とは
冷間成形角形鋼管とは、鉄骨の規格の一つで、四角形をした部材のことです。なおかつ「冷間成形」の名の通り、低温で加工成形した部材のことです。鉄骨の弱点として熱に弱いという特徴があります。冷間加工(冷間成形)の対義語を熱間成形と言います。一般にH鋼などはこの工法によるもの。ただし、熱で変形しやすくした上で加工する為、耐力の低下やひび割れなど好ましくない症状が部材に生じることがあります。それを回避する為冷間成形という手法を用います。
角型鋼管には種類がある
一言で冷間成形角型鋼管と言っても、加工方法などによる違いがあります。実務でよく目にするのは
・STKR(一般構造用角型鋼管)
・BCR(建築構造用冷間ロール成形角型鋼管)
・BCP(建築構造用冷間プレス成形角型鋼管)
の三種類ではないでしょうか。
これらの違いについてみていきます。
STKR,BCR,BCP材の違い
1.STKR(一般構造用角型鋼管)
STKR(一般構造用角型鋼管(以下STKR))は 、間柱などの二次部材に使用することが多い部材。主柱に使用することもありますが、下屋の柱やスパン数が少なく小規模な倉庫程度の使用に留まることが多いです。
材質にはSTKR400・STKR490があります。
※STKR400→F値=235N/mm2、STKR490→F値=325N/mm2。
2.BCR(建築構造用冷間ロール成形角型鋼管)
BCR(建築構造用冷間ロール成形角型鋼管(以下BCR))の特徴として、加工時にロール加工を施します。また、STKRと比較して、塑性変形能力・溶接性能を向上させた材料なので、主柱に用いることが多い部材です。使用頻度も多いです。
材質はBCR295→F値=295N/mm2のみ。
3.BCP(建築構造用冷間プレス成形角型鋼管)
BCRと違い、プレス加工した部材です。ロール加工とプレス加工の違いについては後述しますが、特徴として、BCR同様、塑性変形能力・溶接性能にも優れていること。BCRよりも大口径の部材を作れることが挙げられます。
それぞれの製品規格を比較すると、
BCRは□-150x150x6.0~□550x550x25.0。
BCPは□-350x350x12.0~□1000x1000x40.0。
BCPは最大で1m角の巨大な部材まで製品化されています。JRのホームなどで見かける大きな鉄骨柱はBCPが多いかもしれませんね。
材質はBCP235及びBCP325の二種類があります。
BCP235→F値=235N/mm2、BCP325→F値=325N/mm2。
BCRとBCPの製品寸法の比較表を張っておくので参考にしてください。
BCRとBCPの製品寸法比較表
曲率半径の違い
上述の三種類の鋼材には曲率半径の違いがあります。曲率半径とは、部材のR部分の事。
STKR→板厚の2.0倍、BCR→板厚の2.5倍、BCP→板厚3.5倍。
例)板厚12mmの場合
・STKR→R=2.0x12mm=24mm
・BCR →R=2.5x12mm=30mm
・BCP →R=3.5x12mm=42mm
となります。
ロール加工とプレス加工
ロール加工とプレス加工の違いは下図を参照ください。
"seam:シーム"とは和訳すると"継ぎ目"の事。BCPについては溶接個所が2か所の"2シーム"と1か所の"1シーム"の2パターンの加工方法があります。
角型鋼管のメリット
角型鋼管は主に柱に使用しますが、H鋼を使用する場合もあります。あえて角型鋼管を使用することによるメリットは何があるでしょうか。
〇柱に角型鋼管を使用するメリット
①X,Y方向の断面性能が同じ(正方形の場合)
②弱軸という概念が存在しない(正方形の場合)
③許容曲げ応力度fb=F値取れる
④両方向ラーメン構造の柱に適している(収まりが良い)
①,②については同じような意味ですが、角型鋼管の強みとして弱軸という概念が存在しない(厳密に言えば存在するが、正方形断面の場合はX軸・Y軸による断面性能の違いがないことから、弱軸という概念が存在しないと言い換えることができる)ということが挙げられます。H形鋼や溝形鋼のような一般的な鉄骨部材には弱軸というものが存在します。弱軸とは、一方の軸に比べ断面性能が劣る軸のことを指しますが、角型鋼管は基本正方形(長方形の規格もありますが)なので、方向に関係なく同様の強度を期待することができます。
また、角形鋼管は曲げ許容応力度fb=降伏応力度F値となります。(③より)つまり曲げ降伏することはあっても、曲げ座屈はしない。これは正方形断面に限らず長方形断面も同様です。これは角形鋼管を用いる上での最大のメリットです。(H形鋼のように強軸方向に荷重を受けても、弱軸方向にねじれようとしない)
④は文章そのままの意味ですが、H形鋼は強軸方向はラーメン架構・弱軸方向はブレース架構のように、方向によって架構の使い分けをしますが、角型鋼管はその必要がありません。つまり、両方向ラーメン架構とすることができます。
デメリットももちろんありますが、今回は割愛します。
また別の機会に。
今回のまとめ
・角型鋼管には主にSTKR,BCR,BCPの三種類の鋼材がある。
・一般に主柱にはBCRやBCPを使用することが多い。特に大断面が必要な場合などはBCPを使用する機会が増える。
・曲率半径Rの長さ(倍率)がそれぞれ異なる。
・BCRはロール加工、BCPはプレス加工により成形する。プレス加工には2シームと1シーム形式がある。
・角型鋼管(正方形)には弱軸が存在しない。
・角型鋼管は曲げ座屈しない。fb=F取れる。
・両方向ラーメン構造の柱に適している。
今回はこの辺で。
ではまた。