杭の設計①-杭頭曲げと基礎梁への曲げ戻し応力-

どうもimotodaikonです。

今回は杭頭応力と基礎梁の関係について。

 

杭頭曲げとは

杭頭曲げとは、建物に地震荷重が作用した時、杭基礎の杭頭に作用する曲げモーメントの事を指します。要は杭頭に作用する応力のことですが、この杭頭曲げ応力、建物規模が大きい程(上家の重量が大きい程)、杭頭本数が少ない程(杭一本当たりの負担応力が増える程)、地盤が軟弱な程(水平地盤反力係数が小さい程)大きくなる傾向にあります。杭頭曲げは杭頭補強筋の鉄筋量に加え、曲げ戻し応力により、基礎梁鉄筋量へも影響を及ぼします。

 

基礎梁への曲げ戻し応力は、杭の下がりが大きい程増加する

基礎梁への曲げ戻し応力は、杭のレベルが下がるほど大きくなります。杭頭曲げは上でも述べたように基礎梁へ返すという考え方が基本です。ここでいう杭のレベルが下がる、とは基礎梁とのレベル差が大きくなる程と読み替えて構いません。基礎梁への曲げ戻し応力を使って基礎梁の検討を行う訳ですが、曲げ戻し応力は、杭頭曲げをそのまま使用するのではなく、基礎梁芯位置に置換した値を用いる点に注意が必要です。

計算式は以下によります。

 

M:基礎梁芯位置の曲げ応力

Mo:杭頭曲げ

Q:杭頭せん断力

H:杭頭~基礎梁芯

より、M=Mo+Q×Hで求めます。

 

 

f:id:imotodaikon:20210612134030p:plain

 

杭頭曲げと基礎梁への曲げ戻し

上図でも書いていますが、基礎梁への曲げ戻し応力は外端部程大きくなります。理由は基礎梁が1つしかないから。反対に中通りは基礎両端に基礎梁が配置されているので、応力を分散する事ができます。よって、曲げ戻し応力により必要となる必要鉄筋は少なくて済みます。 

 

杭頭に曲げが生じるのは何故?

そもそも杭頭に曲げモーメントが生じる理由は?それは杭のモデル化が関係しています。一般に杭の設計をする時の杭のモデルは、杭頭固定、杭先端ピンとします。固定端には当然曲げモーメント(反力)が作用しますね。これが杭頭曲げの正体です。他にも両端ピンにする方法などもあるようですが、実務では殆ど用いないと思います。

 

杭頭部には応力伝達の為、杭頭補強筋が必要

杭頭曲げをスムーズに基礎梁へ伝達させる為に、杭頭部には杭頭補強筋が必要です。杭頭補強筋とは、主に杭の外周部に配筋する補強筋の事で、一般にD32~D41の比較的呼び径の大きい鉄筋を配筋します。そして杭頭曲げによってその必要本数は異なります。杭頭補強筋には必要定着長のルールがあり、在来の場合、基本的に40dとします。

例えばD32を使用する場合、32*40=1,280mmの定着長が必要という事ですね。

 

f:id:imotodaikon:20210612145830p:plain

杭頭補強筋と定着長

 

基礎フーチング厚は杭頭補強筋の定着長で決まる

上で触れた杭頭補強筋ですが、ほとんどの場合、基礎フーチング厚の決定要因となります(定着長により)。フーチングが厚くなるのは、基礎梁への曲げ戻しい応力の観点からみると望ましくありません。杭頭と基礎梁芯への距離が離れる程、曲げ戻し応力が大きくなってしまうので。フーチング厚を抑えるには、杭頭補強筋径を小さくするか、杭頭補強筋定の定着長を短くすることのできる杭頭補強材(クラウンパイルアンカー等の評定を取ったもの)を用いるなどの手があります。

ただ、一概に杭頭補強筋径を小さくすると言っても径が小さくなる程必要本数は増えてしまうので限界はあります。基礎梁主筋との納まりもありますからね。

 

杭頭曲げによる必要となる基礎梁鉄筋は杭径が大きい程増える

杭頭曲げが大きい程、基礎梁への曲げ戻し応力は大きくなりますが、特に杭径が大きくなる程その傾向が強くなります。一口に杭と言っても、要は地盤に埋まった柱と考えられます。つまり上屋の柱や梁と同様、【剛性が大きい部材程、より大きな力を負担する】この考え方が通用します。(構造設計にはずっとついて回る考え方ですが)

 

大切なのは杭頭レベルと基礎梁下端を近づける事

マンションなどの建物にがEVが必須です。そしてEVがあるという事はEVピットがあるという事です。EVピットは1階のスラブ及び土間レベルから下げる必要があるので、必然的にその周辺の基礎のレベルも下げざるを得なくなります。

 

基礎梁への曲げ戻し応力を極力小さくする為には、杭頭と基礎梁芯との距離を近づける事です。上記のEVピット等の例外を除いて、できる限り杭頭レベルと基礎梁下端レベルを近づける事です。納まり状問題なければ杭頭=基礎梁下端とするのがベストです。

 

今回は杭頭曲げと基礎梁への曲げ戻し応力について考えました。今回が伝えたい全ての内容ではありません。足りない情報は追って記事にしていきます。

 

ではまた。