杭の設計②-水平地盤反力係数-

どうもimotodaikonです。

今回は杭の断面算定と水平地盤反力係数との関係について。

 

杭の断面算定とモデル化

まず、杭の断面算定を行う時、電算機を用いて計算するか、杭屋に頼んで計算してもらうかのいずれかの方法を取る事になる。いずれの場合にせよ杭をモデル化する必要があるが、杭のモデル化というのは、一般には「杭頭固定、杭先端ピン」の状態に図示化する事である。場合によっては、「杭頭ピン、杭先端ピン」とする場合もあるが、イレギュラーな場合と考えてよい。実際、杭頭には杭頭補強筋を必ず配筋し、基礎梁に応力が伝達できるよう設計する為、完全な杭頭ピンという状況は恐らくあり得ない。(必ず固定度は存在する)

この手法を用いるのは、該当の杭の杭頭に曲げ応力を発生させたくない場合。杭頭曲げが生じると、その曲げを基礎梁に返す必要がある。という事は基礎梁に付加応力が生じ、主筋が必ず増える事になる。

 

水平地盤反力係数kho

ここからは今回の本題である、水平地盤反力係数khoについて考えたい。水平地盤反力係数khoとは、簡単に言うと地盤の水平方向に対する抵抗力の事である。地盤ばねと呼んだりもする。

khoの算出式は、「建築基礎構造設計指針2001年版(以降基礎指針)」のP.277に記載されている。

 

kho=α・ξ・Eo・B^-3/4

ここで

α:粘性土地盤→α=60、砂質地盤→α=80

ξ:単杭→1.0、群杭→別途計算による

Eo:変形係数(kN/m2)

B:無次元化杭径

 

まず、上式のkhoを求める式は、基礎指針P.277より、「(中略)上述した研究結果などを総合し、かつ実用性を考慮してうえで本指針では基準水平地盤反力係数khoとして、以下に示す旧指針の評価法を推奨する」と書かれている。以下に示す~は上で書いたkhoの算出式の事。この計算式はあくまで"推奨"である事は知っておくと良いかも。まあ実務では基本この式に則って計算するけど。

 

①αというのは、地盤に対応した係数と考えてよい。

例えば、砂質シルトならα=60、シルト質細砂ならα=80。分かりづらいが、粘性土、砂質土のどちらに該当するかは、地盤性状を示す言葉の後半部分を見ればよい。私も構造設計を始めたころはよく迷った記憶がある。

また、αについては計算方針によって採用値が異なる点に注意が必要。

基礎指針P.278には、αについて3つの条件が与えられている。

 

i)ボーリング孔内で測定した地盤変形係数→粘性土α=80、砂質土α=80

ii)一軸または三軸圧縮試験から求めた地盤の変形係数→粘性土α=80

iii)対象土層の平均N値より=Eo=700Nで推定した地盤の変形係数→粘性土α=60、砂質土α=80

 

つい先日、私が杭屋に杭の検討を依頼した時、一部の層でLLTの値を採用した結果が返ってきた。該当の層は粘性土だったのでα=60で計算していると思いきやα=80で計算してあったので、この計算書間違ってる?と思った記憶がある。でも間違っていたのは自分の方でした(´・ω・`)

これはまさしくi)によるもの。実測値を採用していたからα=80で計算していたという事になる。杭屋さんが正しい!

 

②ξ(クサイ)は、単杭の場合は1.0なのでそこまで気にする必要はない。群杭の場合は杭の中心間隔Rと杭径Bの比率によって計算式が変わるので気を付けた方が良い。群杭の設計はしたことないので経験を積んで記事が書けるようになるといいな。

 

③変形係数Eoは、実測値による場合やN値による場合がある。実測値というのは孔内水平載荷試験のL.L.Tなんかで求められる値をそのまま使う。実測値なので信頼性が高い。ただ、実務ではN値による計算を用いる事の方が多いと思う。その場合の計算式は、

 

Eo=700N

 

である。

非常にシンプル。該当の地盤のN値を700倍するだけでよい。該当の地盤と言っても、ボーリング試験では約1m間隔でN値を測定している。対して地層は何mにもまたがって存在しており、10m近く同じ地層が積み重なっている場合もザラにある。そのような場合、Eoに採用するN値は平均値で取る事になる。例えば一つの地層でN値を5か所測定している場合を考えると、

 

N1=5、N2=8、N3=25、N4=16、N5=20

より、N=(5+8+25+16+20)/5=14.8。Eo=700N=700*14.8=10360kN/m2となる。

 

④無次元化係数Bは、杭径をcmに置き換えた時のcmを抜いた値の事。基礎指針には杭径をcmで表した"無次元数値"と書いてある。例えば杭径φ1000の場合、杭径B=1000mm→100cmとなるので、B=100となる。

 

以上が地盤反力係数khoを計算する条件である。

では実際にボーリング柱状図を用いてkhoを計算してみる。

 

水平地盤反力係数khoの計算

国土地盤情報検索サイト(http://www.kunijiban.pwri.go.jp)より、柱状図を引用。下の柱状図のシルト質砂層についてkhoを求めてみたい。

 

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柱状図とN値

〇設計条件

・変形係数Eoは対象土層の平均N値よりEo=700Nで推定した値を用いる。

・杭は単杭とし、杭径は100cmとする。

 

対象となる地層が砂層なのでα=80。単杭なのでξは1.0とする。杭径は100cmなのでcmを消してB=100。

Eoは該当の地層で12か所N値を測定している為、それらの平均値を用いる。

Eo=700*(7+11+21+14+8+6+2+4+6+6+4+4)/12=5425kN/m2。

 

以上より、kho=α・ξ・Eo・B^-3/4≒13724kN/m3となる。

 

このように各地層について水平地盤反力係数を計算し、杭のモデル化に落とし込んで杭の水平変形及び杭頭に発生する応力を算出する。

地盤反力係数が大きいほど、地盤の抵抗力が大きいと言い換える事ができるので、杭の変形量が抑えられる。杭の変形が抑えられると杭頭応力も小さくて済む。杭頭応力が小さくなると杭頭補強筋が少なくて済むし、基礎梁への悪影響が小さくなる。良いことずくめ!

 

今回触れた地盤反力係数khoは杭の設計につきもの。杭を設計しようと思ったら必ず出てくる概念なので気を付けましょう。

 

ではまた。