杭頭補強筋とは

どうもimotodaikonです。

今回は、杭頭補強筋について考えます。

 

杭頭補強筋とは?

杭頭補強筋とは、杭頭に設ける補強筋の事で、役割は応力の伝達である。地震時、上部架構が負担した地震力は最終的に基礎に流れ込む。杭基礎の場合、杭が水平力の抵抗要素となるが、杭が応力を負担する以上杭頭に曲げモーメントが生じる事になる。構造設計では、応力の負担先を考える事が非常に重要になる。杭の場合は、杭頭曲げモーメントを基礎梁に返す。これが杭の曲げ戻し応力である。基礎梁に曲げ戻し応力を伝達するために必要なのが杭頭補強筋である。

 

杭頭補強筋の種類は?

杭頭補強筋には大きく分けて2つの種類がある。1つが在来工法によるもの。2つ目が認定を取得した工法を用いるものである。

 

在来工法とは?

杭頭補強筋の在来工法とは、主に場所打ちコンクリート杭を施工する際に採用する。場所打ち杭はコンクリート打設前に孔を掘り、そこに鉄筋かごを落とし込む。鉄筋かごは、杭長が長ければ途中で継ぐことになる。杭頭部は、あらかじめ杭頭補強筋を溶接した鉄筋かごを現場に搬入し、掘削孔に落とし込んでコンクリート打設して終了。ちなみに構造設計では"在来"という言葉を頻繁に使用する。在来工法は"一般的な方法による工法"と読み替えて構わない。

 

認定を取得した工法(認定工法)とは?

認定取得した杭長補強筋の工法で私が設計経験があるのが、"クラウンパイルアンカー""パイルスタッド工法"。

 

クラウンパイルアンカーとは?

"クラウンパイルアンカー"は、SC杭(鋼管杭)専用の杭頭補強工法で、名前の通り"クラウン"="王冠"形状の杭頭補強材を用いた工法である。

 

f:id:imotodaikon:20210923192145p:plain

 

クラウンパイルアンカー(カタログより)

 

クラウンパイルアンカーの利点は、"杭頭補強筋筋の定着長を短くできる事"、"杭頭補強筋本数を少なくすることができる事"にある。クラウンパイルアンカーのカタログを見ると、杭頭補強筋の定着長を短くすることができる理由として、"杭頭アンカーの端部に定着版を設けている為"と書かれている。確かに、アンカーの先端に定着版がついていれば、コンクリートとの定着力も上がるし、必要補強筋長さが短くなるのも納得。杭頭補強筋定着長は、40dとするのが一般的だが、この工法を採用すると最低でも15dは短くできる。つまり25dで済む。

基礎成は杭頭補強筋の定着長で決まる事が多い。杭頭補強筋の定着長が短くなる事は、基礎成を小さくすることを意味するので、コスト的にもメリットがある。

 

f:id:imotodaikon:20210923193556j:plain

定着版による補強筋長さの低減

 

また、杭頭補強筋の本数を減らす事ができる理由は、アンカーの位置が杭の面より外側に配置してある事にある。考え方はRC梁や柱と同じで、曲げに有効な引張鉄筋とコンクリートの圧縮縁との距離が長ければ、許容曲げ耐力も上がるよねって話。"クラウンパイルアンカー"では、アンカー芯が杭径+200mmの位置に配置してある為、曲げ耐力が上がる。結果、アンカー本数を減らす事ができる。(クラウンパイルアンカーの詳細は下記URL参照)

 

www.okabe.co.jp

 

パイルスタッド工法とは?

パイルスタッド工法は、PHC杭やPRC杭などの既成杭の杭頭補強筋として用いる。ただ、日本スタッドウェルディング株式会社のHPを見ると、SC杭にも対応できるらしい。既成杭に同工法を採用する場合、既成杭の杭頭に鋼板をかぶせ、鋼板に鉄筋をスタッド溶接をする。(既成杭はコンクリート杭なので、鋼板をかませないと溶接ができない)

                        f:id:imotodaikon:20210923195426p:plain

 

パイルスタッド工法(日本スタッドウェルディング㈱HPより)

詳細は上図参照。杭頭補強筋の定着長は一般的な定着長と同じく40d基礎への飲込み長は100mmである。補強筋の径としては、大体D25を採用する事が多い印象。それ以上の径でも施工はできるらしいが、私はD25での採用経験しかない。つい最近の物件でちょうどパイルスタッド工法を採用したが、φ800の杭に対して20-D25だったな。鉄筋比で言うと2%くらい?径が小さい分、本数が増える為、基礎梁主筋や柱主筋との納まりに注意は必要。

パイルスタッド工法については下記URL参照。

 

www.nsw-j.com

 

 

ちなみに杭の基礎への飲込み長は100mm〜300mm。パイルスタッド工法の場合100mmだが、300mmとする場合もある。New-J-BARを採用した場合がそれにあたる。

 

New-J-BARとは?

New-J-BARというのは、杭頭補強筋の一つで、開先付き異形棒鋼の事である。
(下記、株式会社ブレイブのHP)

 

www.j-bar.jp

 

この異形棒鋼は、"炭素当量を極めて低く成分調整して鋼材との溶接性を考慮した建築材料であり、構造の世界において、唯一の溶接可能な異形棒鋼としての地位を確立しつつあります。"と上記HPで紹介されている。


鋼材は、炭素量が増えると強度が上がる半面、非常に脆くなる。また、溶接性能も悪くなる。特に溶接性能を上げた製品がNew-J-BARと考えてよさそうだ。New-J-BARは、杭頭補強筋として用いる場合定着長は40d以上になる事も。また、基礎への杭の飲込み長は最低でも220mm、最大で300mmとする。(大体300mmとする事が多い)

 

 

   f:id:imotodaikon:20210923202651p:plain

杭頭部の収まり図(標準図より)

 

 f:id:imotodaikon:20210923203557p:plain

 
基礎へ飲込み長


New-J-BARの径はWD32J、WD35J、WD38J、WD41Jの4種類。また、材種は、WSD390及びWSD490の2つ。径については普段RC造で使用する一般的な異形鉄筋のD32~D41と考えれば良い。W~JというのはNew-J-BARの鉄筋径の呼び名の事。また、材種についてもWSD390はSD390、WSD490はSD490と同じ強度を保有している。違うのは化学成分の含有量。

 

f:id:imotodaikon:20210923204312p:plain

 

化学成分の違い(炭素量の規定が厳しい)

New-J-BARは結構な頻度で杭用補強筋に採用するので、溶接のルールや施工方法について知っておくと良いかも。(設計マニュアルのURL張っておきます)

 

設計マニュアル↓

http://www.j-bar.jp/data/j-bar_manual.pdf

 

今回は杭頭補強筋について考えました。

ではまた。