柱脚とは

どうもimotodaikonです。

今回は鉄骨造の柱脚について考えます。

 

柱脚とは?

一般に"柱脚""1階柱の脚部"を指す言葉である。(各階の柱脚部を意味する場合もある)RC造の柱脚は、1階柱主筋を延長して基礎に定着する形式となるので、S造のように"柱脚形式"という概念はない。今回考えるのは鉄骨造の柱脚。鉄骨造の柱脚は大きく分けて3つに分類される。それが"露出柱脚"、"根巻柱脚"、"埋込み柱脚"の3つである。この中でも特に採用実績が多いのが"露出柱脚"だろう。"露出柱脚"は中小規模の建物に多く採用されており、工法には"在来工法"によるものと"既製品"によるものの2パターンが考えられる。これらは物件規模や使用箇所によって使い分けることになる。

 

露出柱脚とは?

"露出柱脚"は文字通り外部に露出させた柱脚である。"根巻柱脚"や"埋込み柱脚"と比較して最も簡易的な柱脚形式である。他の2つと違い、施工が簡単で施工期間も短くて済むメリットがある。ただ、回転剛性(柱脚の固定度)は3つの形式の中で最も小さいので、上屋の変形を抑えたい場合、上屋の負担応力を減らしたい場合等はより固定度が高く"剛"に近い根巻及び埋込み柱脚を検討した方が良いかも。

 

上述したように、露出柱脚には"在来工法"と"既製品"を用いる2パターンがある。まず、在来工法について考える。在来工法というのは簡単に言ってしまえば"評定を取っていない施工形式"の事。露出柱脚の在来工法は、ベースプレートに孔をあけ、アンカーボルトを挿入。アンカーボルトの定着長を20d以上確保する。

 

"定着金物による場合はコーン状破壊を防ぐためにアンカーボルトの埋込み長さとして20d(d:アンカーボルトの径)以上を目安とすればよい。"(鋼構造設計基準2005年版P.119より)

 

上の文章はS基準より引用した。"コーン状破壊"というのは、アンカーボルトに引張力が作用した時、コンクリートごと引き抜かれる破壊形式の事を指す。コーン状破壊はアンカーボルトの定着金物~コンクリート上面までの距離から、円形状の投影面積を算出→コンクリートの引張耐力<引張力であれば生じる事になる。コーン状破壊の破壊斜線は、定着版上面から約45度の傾斜を持った線なので、定着長を伸ばす程Ac(有効断面積)が増加し、引張耐力も向上する。(ただし柱型断面が上限)

 

 

 

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露出柱脚の各部名称とコーン状破壊面の図

 

 

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コーン状破壊のAc(有効断面積)

 

"定着版"と言うのは、コンクリートと柱脚の一体性を向上させる為にアンカーボルトに取り付ける金物の事。詳細は<建築用アンカーボルトメーカー協議会>のHPを参照。推奨寸法等細かい内容が記載されているので確認しておくのがおススメ。

 

 

www.jfma.com

 

 

 

次に"既製品"による場合を考える。市場で出回っている露出柱脚の既製品は、ほとんどが"ベースパック""ハイベース"だろう。"ベースパック"は"旭化成建材株式会社と岡部株式会社"の共同開発による製品である。同製品は"一般財団法人日本建築センター"の評定を取得しているみたい。

 

〇ベースパックHP↓

www.b-pack.net

 

 

"ハイベース"は"センクシア株式会社"が開発した製品。こちらも"ベースパック"と同様に一般財団法人日本建築センターの評定を取得した製品。

 

〇ハイベースHP↓

www.senqcia.co.jp

 

他には"ISベース(アイエスケー株式会社)"や"NCベース(日本鋳造株式会社)"等々あるよう。使い分けはコストや柱脚の回転剛性を見てになるかと思う。

ちなみに既製品柱脚は、それぞれのメーカーが検討用の簡易検討ソフトをウェブで公開しており、電算から簡易検討ソフトへ応力を読み込めば自動でOKorNG判定を出してくれる。計算書としてはその結果を添付すればOK。

 

根巻柱脚とは?

"根巻柱脚"は、柱脚部をコンクリートで覆った形状の柱脚を指す。根巻柱脚は露出柱脚に比べて回転剛性が高く、上屋の変形を抑えたい場合などに採用する事が多い。脚部周りのコンクリートには主筋を配筋し、ひび割れ及び曲げモーメントに対抗できるように設計する。また、柱にはスタッドボルトを打ち、コンクリートとの一体性を高める。スタッドと鉄筋が当たらないような配慮も必要な柱脚である。根巻コンクリートの高さは柱成の3倍程度を目安として設計する事が望ましい。

 

"根巻鉄筋コンクリート部の設計が適切である場合には剛接とみなせる。"(鋼構造設計基準2005年版P.120より)

 

また、S基準には上記のように配筋が適切であれば剛接とみなしてよい旨の記載がある。

 

 

 

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根巻柱脚各部名称

 

 

埋込み柱脚とは?

"埋込み柱脚"は、名称通り基礎(梁)内に柱ごと埋め込む形式の柱脚である。基礎内に柱ごと突っ込むので、基礎周りの配筋との納まりに気を付ける必要がある。この柱脚形式では、

 

"鉄骨柱の埋込み長さ、埋め込まれた鉄骨に対する基礎コンクリートのかぶり厚さ、埋込み鉄骨周辺の補強筋の配置が適切である場合には剛接とみなせる"(鋼構造設計基準2005年版P.122より)

 

とS基準に記述がある。根巻柱脚と同じく適切な設計及び施工が施されていれば"剛"としてよい。また、S基準の同頁に埋め込み長さの規定について書かれている。(下図参照)

 

 

 

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埋込み柱脚(埋込長≧柱成の2倍)

 

 

最後に


以上、露出柱脚に関する内容が多くなってしまったが、中小規模建物の鉄骨造ではほとんどが露出柱脚である。柱脚形式については、建物用途や条件、施主の要望等を勘案して露出柱脚・根巻柱脚・埋込み柱脚の中から最適なものを選べるようにしたい。

 

今回はここまで。

ではまた。