突出部の検討について②(EV壁の検討)

どうもimotodaikonです。

今回は、EV突出部の検討_(EV壁の検討)について。

 

EV突出部の検討にはEV壁に対する検討が必要

前回、EV突出部の検討で取り扱ったのは、ある階の負担するEV壁重量に対して、突出部に対する地震力(水平震度K=1.0)を加えて、EV壁を支持する周辺の梁、スラブに対する検討だった。今回は、EV壁自身に対する検討である。

 

前回記事↓(①突出部の検討について_EV壁周辺部材の検討)

 

imotodaikon.hatenablog.com

 

 

 

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前回の検討(EV周辺部材の検討)

 

 

EVシャフトは、当然EVが上下に移動する事からスラブがなく、吹き抜けとなっている。仮にEV壁の先端に地震力が作用した時、EV壁にどのような応力が生じるかを考えてみよう。

 

 

 

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今回の検討(EV壁の検討)

 

 

EV壁だけを抜き出し、柱脚ピンの1フレーム架構として設計する

まず、EV壁だけ抜き出して考える。EV壁は、下部の小梁に接続している。仮に小梁とEV壁の境界部分(支点)を"ピン"とみなした時、下図のような応力が生じる事になる。

 

 

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支点ピンのモデル(小梁B1とW20の取り付き部)

 

 

実際、小梁の主筋はEV壁内に定着するし、梁幅もEV壁と同等程度なので接続部が完全なピンとなる事はない。ただ、構造設計では安全側(最悪の状況を想定して)に設計しておけば問題となる事はない。よって、境界条件はピンとする。

 

上図を見ると、柱が2本、梁が1本の単純な1フレームの門型ラーメンと見立てる事ができる。地震力はこのフレームの柱頭に作用するものとして設計すれば良い。よって応力の最大値は、柱頭及び梁端部である。

 

実際に設計してみる

では実際に設計してみよう。設計条件は、前回のEV突出部の検討①と同じものとする。

 

 

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W20の断面算定

 

 

上では断面算定まで一通り行った。一つずつ解説していく。

 

EV壁W20の検討は、本体から突出している先端壁(X方向の壁)に対して行った。壁の長さはb=2,000mm、EV壁のY方向の長さはℓ=2,000mm。

 

②使用部材W20の重量を算出する。

W20の板厚はt=200mm。よって壁自重W=24*0.2+1.0=5.8kN/m2とする。ちなみに1.0(kN/m2)は仕上げ荷重の事。仕上げ荷重は大きめに1.0kN/m2程度取っておけば問題ないだろう。

 

③設計かぶり厚は40mmとする。壁筋はD10~D13を想定しているので、壁縁から鉄筋重心位置までの距離dt=40mm+10mm=50mmとする。今回の検討では、横筋が曲げモーメントを負担することになる。壁筋は、横筋を外側、縦筋を内側と想定している。仮に検討より横筋がD13となった場合、D13の外径は14mm。鉄筋の重心は14mm/2=7mm。よって壁縁から鉄筋重心位置までは40mm+7mm=47mm。半端なので50mmとする。

 

dtが決まれば、有効成d=t-dt=200mm-50mm=150mmとなる。よってj=d*0.875=131.25mm。

 

 

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曲げモーメントに対する検討は"壁横筋に対する検討"

 

 

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dt=壁横筋重心位置までの距離

 

 

④設計応力を算出する。

壁の単位面積当たりの重量は、②よりW=5.8kN/m2。壁長ℓ=2,000mm、負担幅B=1.0mとしたとき、壁自重P=W*b*B/1000=5.8kN/m2*2,000mm/1000*1.0m=11.6kNとなる。この重量Pが地震力として壁に作用する事になる。水平震度kはk=1.0。よって壁に生じる曲げモーメントはM=P*ℓ/1000=11.6kN*2,000mm/1000=23.2kNmとなる。

 

 

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応力図(1フレームの門型ラーメンと見立てると分かり易い)

 

 

⑤断面算定を行う。

①~④までの段階で、設計条件は揃ったので、曲げモーメントから逆算して必要となる鉄筋断面積を求める。鉄筋は、上でも書いた通りD10かD13を想定している為、材料強度SD295、短期許容引張応力度ft=295N/mm2。

よって必要at=M*10^6/(ft*j)=23.2kNm*10^6/(295N/mm2*131.25mm)=599.2mm2となる。

 

これらの結果から、1.0mの範囲内に上記at=599.2mm2の横筋が必要という事である。D10を用いる場合は、鉄筋本数n=599.2mm2/71.3mm2=8.4本→9.0本必要。1.0mに9本という事は、@111となるが、半端な数値なのでいっそ10本にして@100にした方が良いだろう。

 

D13を用いる場合は、鉄筋本数n=599.2mm2/127mm2=4.7本→5.0本必要。1.0mに5本なので@200とできる。この時の検定値は4.7/5.0=0.94。結構ギリギリな数値だ。まあ安全側に支点をピンとしているので、実際は23.2kNmも曲げモーメントは生じないと考えてよいだろう。よってD13@200とする。

 

設計は以上で終わり。ちなみに上の検討(EVシャフト壁の検討)は、

大阪府構造計算適合性判定 指摘事例集-よくある指摘事例とその解説」に記載されている。

 

以下にリンク張っておくので確認してみてください。

 

www.pref.osaka.lg.jp

 

 

今回は突出部の検討_EV壁の検討について考えました。

今回はこの辺で。ではまた。