令和4年度一級建築士試験 Ⅳ構造問題について

どうもimotodaikonです。

今回は、本年度一級建築士試験の"Ⅳ構造"問題について考えます。

 

気になった問題①問No.17

まず、問No.17について。

個人的にこの問題意地悪だなあと思った。私は選択肢1を選んで間違えたんですが皆さん解けましたか。

消去法で2と4は除外できるが、1と3で迷った人は多いはず。ちゃんと問題の意図を理解していないと解けない問題だと思う。

 

・問題の内容は以下(選択肢2,4は省略)

 

選択肢1.H形鋼を用いた梁の全長に均等間隔で横補剛を設ける場合、フランジ幅が大きくなれば必要な横補剛本数は多くなる。ただし梁せい、断面積、ウェブ厚は同一とする。

 

選択肢3.一般に、細長比の大きな筋交いは強度抵抗型であり、細長比の小さな筋交いはエネルギー吸収型と言えるが、これらの中間領域にある筋交いは不安定な挙動を示す事が多い。

 

選択肢1は横補剛本数が増える場合がどういう場合なのかを考える必要がある。過去問で多かったのは、SN400N級とSN490N級の鋼材の場合、どちらが横補剛本数が増えるか、とかそんなやつ。今回は違う視点からの問題だった。

 

選択肢3はよくわからん初めて見る問題。

まず選択肢1について考える。

 

梁全長にわたって均等間隔で横補剛を設ける方法

この場合の計算方法は以下の通り。

 

①λy≦170+20n(400N級炭素鋼の梁の場合)

②λy≦130+20n(490N級炭素鋼の梁の場合)

 

上式より、弱軸方向の細長比が大きい程必要となる横補剛本数が増えることが分かる。

ただし、今回の問題は次のような条件付きである。

 

"梁せい、断面積、ウェブ厚は同一とする。"

 

なんともややこしい。この文章がある事で迷った人は多いんじゃなかろうか。試験時間は限られているし、緊張感もあるので考えれば考える程意味が分からなくなる。ただ、少し時間を置いて考えるとなる程間違っているなと理解できる。

 

まず、この問題の肝は、梁幅が大きくなるが、

 

①断面積は増えない事

②ウェブ厚は一定である事

 

である。これが意味するところは、断面積は一定だから"梁幅が大きくなる程フランジ厚が薄くなる"という事である。それを踏まえて、梁断面をH-500x200x10x16を基準に、幅を10mmごとに大きくした場合、細長比がどのように変化するのかを考えてみた。

 

 

                             

梁幅と細長比の関係

 

上の表では、梁幅を200mm~300mmまで10mmずつ変化させた。ただし、断面積が変わらないよう、フランジ厚を調整。フランジ厚の算出式は、断面積がウェブ断面積+フランジ断面積である事から以下のように算出できる。

 

A=Aw+Af

=(H-tf*2)*tw+B*tf*2

= H*tw-2tw*tf+2B*tf

=H*tw+tf(2B-2tw)

tf(2B-2tw)=A-H*tw

tf=(A-H*tw)/(2B-tw)

 

ちなみに

・座屈長さはℓk=7,000mmとした。(特に理由ないです)

・フィレット(R)の断面積は無視。

 

結果、弱軸方向の断面二次モーメントは、10mm増すごとに約1.07~約1.1倍になる事が分かった。断面二次モーメントが大きくなるということは、断面二次半径が大きくなるという事でもある。つまり、幅が大きくなればなるほど、細長比は小さくなり、必要補剛本数も少なくなるといえる。つまり選択肢1は誤り。

 

※倍率1は、梁幅10mm加算前と加算後の倍率の事。220幅なら210幅と比較した時の倍率ってことね。

※倍率2は、梁幅200mmと比較した時の倍率。梁幅が300mmになると、200mmの時より弱軸方向の硬さが2倍以上になる。たった100mm大きくなるだけで2倍。しかもフランジ厚は薄くなってるのに。断面二次モーメントがいかに高さ方向の影響を受けているかが分かる。

 

選択肢3ってなんの事いってんの

選択肢1が誤っているということは分かった。しかし、選択肢3では何を言っているのか理解が難しいので、こっちが間違っているのでは、という疑念が拭えない。実は、これは「2020年版建築物の構造関係技術基準解説書P.374,375」にそのまま記載されている内容である。

 

『細長比が大きい筋かい材では、圧縮側の筋かいは極めて小さい荷重で座屈してしまうので、引張筋かいの強度と変形能力により地震に抵抗することになる。(中略)つまり、細長比の大きい筋かいは強度抵抗型であり、細長比の小さい筋かいはエネルギー吸収型であるといえる。

(2020年版建築物の構造関係技術基準解説書P.374より引用)

 

『以上のことから、筋かいの種別は、柱・はりの塑性変形能力等と同様、架構のDFsに大きな影響を与えていることがわかる。特にエネルギー吸収型とも強度型ともいえない中間領域にある図6.3-8の筋かいは、不安定な挙動を示すことからDsの考え方からは最も不利になると考えられる。』

(2020年版建築物の構造関係技術基準解説書P.375より引用)

 

黄色本には、上記のように書かれている。問題文そのままやね、これは。でもなんか納得できないんだよなあ。実験結果では上で書いたとおりになるみたいだけど(実際に、細長比λ=88の時、細長比λ=56の時で実験した結果を黄色本では書いてる)

 

まず、細長比が大きい筋かいが強度抵抗型になるってのがよくわからん。細長比が大きい=座屈しやすいというのは分かる。ただ、座屈するから引張筋かいの強度と変形能力により地震に抵抗する、っていうのは、ブレース架構である事を前提にしてない?なら問題分にもそう記述すべきでは?と思う。

単に細長比が大きい筋かい=強度型でしょって言われても、引張筋かいの存在を想定していないこっちからしてみたらなんのこっちゃわからん。

 

また、細長比の小さい筋かいはエネルギー吸収型~ってそうなんか。なんか制震ブレースみたく、あえて降伏させてエネルギー吸収能力に期待する想像をしていたので、細長比が大きい→座屈降伏しやすい→エネルギー吸収型。細長比が小さい→座屈耐力が大きい→強度抵抗型と考えてしまった。(中間領域云々は…知りませんこんなの…笑)

 

上でも書いたけど、黄色本に書いてある事をそのまま問題分にしてるので、この選択肢は正になる模様。難しすぎでしょ。

 

今回は構造の問題で一番気になった内容を掘り下げました。(掘り下げになっているのか…)

他に気になる問題があれば取り上げます。

 

ではまた。