どうも。今回は柱脚の検討を最初から最後までやってみようと思います。
計算内容は黄色本の例題1に倣います。(2015年版P.638~)
設計条件をまとめる
まず、設計条件をまとめる。
柱脚設計条件
①設計応力について
まず、柱脚部に生じる長期応力と短期応力をまとめる。
(1)長期
NL=765.0kN
ML=0kNm
QL=0kN
(2)短期
Ns=47.0kN
Ms=233.0kNm
Qs=144.0kN
(3)長期+短期
N1=NL+Ns=812.0kN(圧縮側)
N2=NL-Ns=718.0kN(引張側)
M=ML+Ms=233.0kNm
Q=QL+Qs=144.0kN
長期の設計応力は、軸力のみ考慮し、せん断と曲げは0とした。実際そんなのありえないんだけど、今回は短期の設計という事で、短期応力に長期も含まれるものとして設定している。
軸力については、地震時の加力方向によって①圧縮側と②引張側の2パターンが生じるので、それらを考慮し、①NL+Ns=812.0kN、②NL-Ns=718.0kNを用意した。
加力方向と引張側柱(上矢印)・圧縮側柱(下矢印)
②柱サイズ、ベースプレートサイズ
柱は角形鋼管を想定する。(設計しやすいので)サイズは□-350x350x16とし、材質はBCR295とする。(柱板厚と材質は柱脚の設計には関係ない)
ベースプレートは、柱+300mmの650角とする。そうすれば、柱側面からベースプレートの縁まで150mmは確保できるので、アンカーボルト芯は柱側面~ベースプレート縁の中心の75mmの位置に配置できる。(dt=75mm)
ベースプレートの材質はSN490Cとする。間柱等の二次部材のベースプレートなら400N級(SS400とか)でも良いと思うけど、今回は主柱の引張及び圧縮がもろにかかるベースプレートなので、490N級は必要と判断した。
SN490Cの許容曲げ応力度は、
長期:Lfb=325/1.5/1.3*1.5=250N/mm2
短期:sfb=325/1.3*1.5=375N/mm2
である。今回は長期の検討はしないので、sfb=375N/mm2を採用。
ベースプレートの検討はこの後行うけど、一応板厚は36mm厚と仮定。前回の柱脚の検討で扱ったアンカーボルトの引張降伏耐力で決めるのであれば、そのくらいは必要になりそう。
柱脚伏・軸図と各種寸法
③アンカーボルト
アンカーボルトは、全本数n=8本、引張有効本数nt=3本の8-M30。アンカーボルトには"切削ねじ"と"転造ねじ"の2種類があり、大まかな特徴としては、
"切削ねじ"は元ある部材を削り取ってねじ部を作ったもの。
"転造ねじ"は元ある部材をねじってねじ部を加工したもの。なので断面欠損がない。転造ねじは塑性変形能力(伸び能力)に優れている。
Q&A:転造ねじと切削ねじの形状や性能の違いは?
転造ねじは、ファイバー(金属組織の流れ)が切断されず、特にねじ底部はファイバーが圧縮されているので、ねじ部の強度は軸部とほとんど同じです。一方切削ねじは、ファイバーが切断されてねじ形状を作るのでねじ谷は強化されず、ねじ部は軸部より断面積が小さいため強度は弱くなっています。同じサイズのABRとABMでは降伏耐力や破断までの塑性伸びが違いますが、いずれもJIS規格で要求する性能を満足しています。
※アンカーボルト協会Q&Aより
URL↓
アンカーボルトQ&A | [JFMA] 建築用アンカーボルトメーカー協議会
今回は黄色本の例題則則り切削ねじを使う。
アンカーボルトの材質はABR400とする。これは400N級なのでSS400と同等耐力と考えて良い。よって許容引張応力度は、
長期:ftl=156.7N/mm2、短期:fts=235N/mm2。
ℓbは、ベースプレート天端から定着版上端までの寸法より726mmと超半端な数値。
ベースプレート板厚とモルタル厚から数値を逆算すると、726mm-36mm(ベースプレート板厚)-50(無収縮モルタル厚)=640mm=コンクリ天端から定着版上端まで。てかこれって何dなの。726/30=24.2d?アンカーボルトの定着長は20d以上なので、そこは満足しているけどめちゃくちゃ半端じゃない?
続いて鉄筋比は、p=nt*軸部Ab/(D*d)より、
p=3*706.9/(650*575)≒0.0057。
なお、d=D-dt=575mm。
鉄筋比計算時のアンカーボルト断面積はねじ部ではなく、軸部を使用することに注意。回転剛性も同様に軸部で計算する。
④柱型
柱型は、1200角のFc=21N/mm2とした。
⑤中立軸の計算
ではここから中立軸の計算を行う。
中立軸の計算に必要なのは、"e"と"x"。まずはeから計算する。
e=M*1000/N2=233.0*1000/718.0≒324.5mm
eは曲げモーメントと軸力によって計算する。軸力がどの位置にかかれば曲げモーメントが233.0kNm生じるのか?と考えると分かりやすい。ベースプレート芯から324.5mmの位置に軸力718.0kNが加われば、ベースプレート芯にはN*e=M=233.0kNmの曲げモーメントが生じる。
次にxの計算。計算には上で求めたeを使う。
x=e-D/2=324.5-650/2≒-0.5mm
ほぼ0。これはベースプレートの範囲内に軸力が作用していることを示している。
x・e・Xnと軸力の位置関係
(軸力作用位置がベースプレートから離れるほど、曲げモーメントは大きくなる。逆もまた然り)
"中立軸Xn"の計算は、下記図表によってもよいし、「鋼構造設計基準」に則ってA・Bから計算(清算計算)してもよい。
底版中立軸位置の計算図表
A・Bの計算方法↓
今回の計算はA・Bからを求めたうえで計算した。結果は、約341.0mm。黄色本の計算結果は345.0mmなので、4mm差。誤差ですね。
中立軸の値が小さくなるほど、ベースプレートの内側に中立軸芯が寄ることになる。つまり、圧縮面が小さくなり、引張面が大きくなるので、アンカーボルトに引張力が生じる。
ベースプレートの圧縮及び引張応力度の発生条件は下記の3パターンあり、それぞれのパターンによってアンカーボルトに引張力が生じるか否かが決まる。
①全面圧縮→アンカーボルトに引張は生じない。
②部分圧縮→アンカーボルトに引張は生じない。
③局部圧縮→アンカーボルトに引張は生じる。
③に該当する場合はアンカーボルトの引張力に対する検討が必要となる。今回は③に該当するので、アンカーボルトの引張検討を行う。
検討は次の記事で行います。