柱脚の検討をやってみる②ベースプレート・アンカーボルトの検討

どうも。今回は前回に引き続き、柱脚の検討を行います。

 

           

 

ベース・アンカー検討(前回の続き)

 

ベースプレートの検討①-引張-

(1)アンカーボルトの引張降伏耐力全塑性耐力の計算

まずはベースプレートの引張力に対する検討から。以前の記事で扱ったんですが、アンカーボルトの引張降伏耐力全塑性耐力で検討する。

 

・アンカーボルトの全塑性耐力

Tp=Ab*F/1000=706.9mm2*235N/mm2/1000≒166.1kN/本

 

引張降伏耐力全塑性耐力は、アンカーボルトの軸部の断面積に対して算出する。ねじ部じゃなくて軸部なのはなんでなんすか。ねじ部の方が断面積が小さいんだから、ねじ部が先行降伏するのでは?

と思って調べたら、

 

短期許容耐力はねじ部、全塑性耐力は軸部で計算するみたいです。(転造ねじ、切削ねじに限らず)

 

例)

①転造ねじ(ABR400→F=235N/mm2)

M24:軸部断面積Ab=375.0mm2     →Tp=Ab*F/1000≒88.1kN…全塑性耐力

  :ねじ部断面積Abe=353.0mm2→Ta=Abe*F/1000≒83.0kN…短期許容耐力

 

②切削ねじ(ABM400→F=235N/mm2)

M24:軸部断面積Ab=452.0mm2     →Tp=Ab*F/1000≒106.2kN…全塑性耐力

  :ねじ部断面積Abe=384.0mm2→Ta=Abe*F/1000≒90.2kN…短期許容耐力

 

断面積が大きいから切削ねじの方が耐力は大きいんですね。

 

(2)曲げモーメントの計算

曲げモーメントは、アンカーボルトの芯から柱のフェイスまでの距離から求める。

M=T*dt/1000=166.1kN*75mm/1000≒12.5kNm

 

(3)ベースプレートの断面係数Zの計算

有効幅B=ボルト径+dt*2=30mm+75mm*2=180mm。

Z=B*t^2/6=180mm*36mm^2/6=38880mm3。

 

 

         

Zの計算

 

(4)ベースプレートの検討

σb=M*10^6/Z=12.5kNm*10^6/38,800mm3≒321.5N/mm2

σb/sfb=321.5N/mm2/375N/mm2≒0.85<1.0 OK

 

よってOKです。

 

ベースプレートの検討②-圧縮-

続いて圧縮に対する検討。ベースプレートの圧縮の検討は大きく

①片持ち版

②2辺固定版(リブあり)

③3辺固定版(リブあり)

の3パターンの検討方法がある。

 

今回は①の片持ち形式で検討する。

圧縮力に対する検討なので、まず、柱脚部(ベースプレート)に生じる圧縮応力度を求める必要がある。

 

圧縮パターンは以下の3通りある。

①全面圧縮(アンカーボルトに引張は生じない)

②部分圧縮(部分的に引張が生じる場合。アンカーボルトに引張は生じない)

③局部圧縮(部分圧縮よりも大きな引張が生じる場合。アンカーボルトに引張が生じる)

 

いずれのパターンに該当するかは、偏心距離eを用いて確認する。

 

①の全面圧縮→e≦D/6=650mm/6=108.3mmの時

②の部分圧縮→D/6+dt/3≧e>D/6=650mm/6+75mm/3=133.3mm≧e>108.3mmの時

③の局部圧縮→e>D/6+dt/3=e>650mm/6+75mm/3=133.3mmの時

※D=ベースプレートの成

 

上の計算結果を見てもわかる通り、偏心距離、つまり軸力の作用位置がベースプレート芯から離れるほど、曲げモーメントが大きくなるので引張面が大きくなる。→局部圧縮に近づくことになる。(e=M/Nなので、Nに対してMが大きいほどeは大きくなる)

 

今回がどのパターンに当てはまるか検討してみると…

 

N2=718.0kN、M=233.0kNmより、e=M/N2*1000=324.5mm。

e=324.5mm>D/6+dt/3=133.3mm。よって局部圧縮に該当。

 

そして、①~③の圧縮の状況によって、ベースプレートに作用する最大圧縮応力度の計算式は異なる。それぞれの計算式は以下。

 

①の全面圧縮→σc=N/(b*D)*(1+6e/D)

②の部分圧縮→σc=2N/{3*b*(D/2-e)}

③の局部圧縮→σc={2N*(e+D/2-dt)}/{b*Xn*(D-dt-Xn/3)}

 

ひゃーめんどくせえええ。

 

くどいようだが今回は局部圧縮に該当するので、③の計算式に当てはめると、

 

(1)ベースプレートに生じる圧縮応力度の計算

σc={2N2*1000*(e+D/2-dt)}/{b*Xn*(D-dt-Xn/3)}

   ={2*718.0*1000*(324.5+650/2-75)}/{650*341.0*(650-75-341.0/3)}

   =8.07N/mm2→ベースプレートに生じる最大圧縮応力度である。

※式が長く煩雑になるので計算途中の単位は省略

 

ここまででようやくベースプレートの圧縮の検討のための前準備は整ったので、ベースプレートの検討を行う。

 

片持ち形式のベースプレートの検討式(必要板厚の計算式)は、

 

(2)ベースプレートの必要板厚の計算

必要t=u*√3σc/fb1*(1-u/3Xn)

 =150mm*√(3*8.07N/mm2/325N/mm2*(1-150mm/3*341.0mm)

 =37.8mm>設計t=36.0mm:NG 検定値1.05

 

ここで、ベースプレートの許容応力度fb1にsfbを使わないこと。sfbは面外方向に曲げを受ける場合の許容値であって、圧縮の検討時に採用することはできない。

ということで、検討結果はNG。リブプレートを入れるか、板厚を38mmにするか、どっちかの措置が必要になる。今回はNGこれ以上の検討はしない。(もはや面倒くさい)

 

アンカーボルトの検討①-引張-

ベースプレートの次はアンカーボルトの検討を行う。アンカーボルトの検討では、アンカーボルトに対する引張の検討と、コンクリートのコーン状破壊の検討の2つを行う。

 

まず、ベースプレートの検討でふれたように、今回は③の局部圧縮に該当するので、アンカーボルトに引張力が生じる。(①全面圧縮と②部分圧縮の場合は引張の検討は必要ない)

よって、引張力の算定から。

 

(1)引張力の計算

Z=N2*(e-D/2+Xn/3)/(D-dt-Xn/3)

 =718.0kN*(324.5mm-650mm/2+341.0mm/3) /(650mm-75mm-341.0mm/3)

 =176.1kN

これを引張有効アンカーボルト本数で除して、1本あたりの引張力を求める。

 

T=Z/nt=176.1/3=58.7kN/本

 

(2)断面算定

σt=T*1000/Abe=58.7kN*1000/621.0mm2=94.5N/mm2

σt/ft=94.5N/mm2/235N/mm2=0.40<1.0:OK

断面算定結果はOK。

 

アンカーボルトの検討②-コーン状破壊-

続いてコーン状破壊の検討。コーン状破壊とは、アンカーボルトが引き抜かれる際、定着版から円錐形状にコンクリートが破壊する現象の事。破壊に対して有効に効くのはコンクリートなので、コーン状破壊の検討はコンクリートに対する検討と考えて良い。

 

 

               

定着版上端から45度勾配の範囲が有効

                 

 

コーン状破壊有効断面積=1000x1200

 

コーン状破壊に有効なコンクリート断面は、引張アンカー定着版上端から、45度角の範囲。(上図のハッチの範囲)

 

(1)有効面積の計算

有効幅b=(Dc-Db)/2+dt+ℓb=(1200mm-650mm)/2+75mm+650mm=1,000mm

Ac=b*B=1,000mm*1,200mm=1,200,000mm2

 

(2)アンカーボルトの全塑性耐力計算

Tb=nt*Ab*ft/1000=3*706.9mm2*235N/mm2/1000=498.3kN

 

(3)耐力計算(Tpの計算)

低減係数φ=0.6

Tp=0.31φ1*√Fc*Ac=0.31*0.6*√21N/mm2*1,200,000mm2/1000=1022.8kN

 

(4)断面算定

Tb/Tp=498.3kN/1022.8kN=0.49<1.0:OK

 

コンクリートの検討-圧縮-

最後にコンクリートの圧縮に対する検討。ベースプレートの圧縮力の検討に使った圧縮応力度を使う。

 

σc=8.07N/mm2

σc/fc=8.07N/mm2/14.0N/mm2=0.58<1.0:OK

よってOK。

 

以上で柱脚の検討終了です。

 

今回はここまでで終わります。ではまた。