どうも。今回は壁付き柱と建物および柱の崩壊について。
壁付き柱とは
まず、壁付き柱というのは、壁がついた柱の事である。例えば下図のようなもの。
柱梁に囲まれた外壁
基本、外壁は柱と梁に囲まれている。壁は剛性が高いので、柱への悪影響を抑制するために、構造スリット(鉛直スリット)を入れる。構造スリットというのは、壁との縁を切るために入れる隙間の事を言う。スリットには
①鉛直スリット
②水平スリット
の2種類があり、柱際に入れるスリットは①の鉛直スリット。②の水平スリットは、梁際に入れるスリットの事。
構造スリットを入れなかったらどうなるのか
上述の通り、構造スリットを入れるのは、主に柱への悪影響を抑制するためである。では具体的に柱への影響を考える。
1995年の阪神・淡路大震災においてRCラーメン構造の建物で、壁付き柱や腰壁付き柱、開口部際の柱などが多く崩壊した。地震時に壁付きの柱に地震力が集中したために、壁付きの柱が耐え切れずにひび割れし崩壊に至った。もし腰壁がなかったら他の柱と同程度の地震力を負担していた。腰壁と一体になった柱は短柱になり、大きな剛性によって地震力が集中し耐え切れずに崩壊した。
「図解:建築と構造の接点P.186より引用」
腰壁、垂れ壁による短柱化
柱に壁が取り付くと、壁の拘束効果によって柱の変形が抑え込まれる。例えば、腰壁と垂れ壁で挟まれた柱は、壁のフェイス~フェイス間を柱とみなした短柱と化す。短柱になると剛性が極端に高くなるため、(部材の剛性は断面二次モーメントと部材長に依存する)より多くの力を負担しようと頑張る。結果、頑張りすぎて破壊する。という流れである。
壁も柱幅に比べて板厚が薄いとはいえ、コンクリートだし内部には鉄筋も入っているし、柱への拘束効果があると言われれば納得できる。(実際に阪神・淡路大震災のような大地震時に大規模な事故が起きているので)
短柱になるメカニズムは、壁によって剛域が伸びることに起因している。
腰壁と剛域の関係
上図に示すように、腰壁と柱際に鉛直スリットを切らなかった場合、腰壁の高さ分剛域が伸びる。剛域というのはRC造(もしくはSRC造)に存在する概念で、柱梁接合部などを線形に見立てた時に生じる、どれだけ力を加えても全く変形しない、超硬い領域の事を指す。剛域で挟まれた部分が設計すべき柱に該当するので、剛域が長くなると設計上不利になることがある。短柱化がその一例である。
腰壁際にスリットを入れれば剛域への影響はない
ただし、鉛直スリットを切る壁は雑壁(地震時に耐力を期待しない壁の事)の場合のみで、耐震壁は切らない。
壁が設計の邪魔になる場合は、構造スリットでフレームとの縁を切る。もし構造スリットを入れなくても設計できるのであれば、スリットは入れなくてもよい。という認識で構わない。
住宅等のバルコニーの手摺壁にスリット入れる?
バルコニー手摺と柱
こっからは個人的な疑問。住宅系(マンションやアパートなど)の建物を設計するとき、バルコニーの手摺壁と柱との縁は切るのかどうかという話。これって基本縁切るんですかね。自分の行動範囲内のRC建物を見る限り、手摺壁と柱際にスリットを入れていない建物の方が若干多い、気がする。仮にそうだとしたら、手摺壁影響を考慮して柱の設計をしてるってことでOK…?(実際半々くらいだと思う)
スリット切らないと剛域伸びるよね
短柱化による影響は、一次設計だけじゃなく、二次設計(一次設計でNGならそれまでだけど)にも及ぶので、なかなか設計が難しいんよね。短柱になりそうな柱は要注意ですね。
マンションの画像を拾ってきた🏢
https://www.photo-ac.com/main/detail/2178215?title=%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3
(フリー画像:PhotoACより)
今回書きたかったことがすべて詰まった画像を見つけてきたので貼る。画像の青丸内は、バルコニー手摺と柱際にスリットが切られてない。短柱で設計してるんか?これは…。
なんか適当に書いたんでそのうち更新するかも。