パラペットの剛性は考慮するべきか

どうも。今回はパラペットの剛性をすべきか否かについて考えます。

 

パラぺットには硬さがある

ここでいうパラペットはあくまでRCのパラペットですが、剛性計算においてパラペットを考慮するか、しないかによって計算結果が大きく変わってくる場合があります。例えば、パラペットの剛性を考慮すると

 

・偏心率・剛性率の計算に影響する。

・梁の剛度増大率が上昇する。

 

等の影響が考えられます。パラペットは梁上に立ち上げた壁のようなもので、一般に厚み150~180程度、高さは500~700mm程度でしょうか。コンクリートは梁と一体で打つちます。そして当然硬さも存在します。ですが、設計者によっては(時に物件によっては)重量のみ考慮し、剛性を無視する場合があります。かくいう私も剛性を無視して計算を行う場合がありますが、どういった時に剛性を無視するのかというと、パラペットの硬さが設計に余計な影響を及ぼす場合です。

 

具体的にどんな影響があるのか

では、どんな"余計な影響"があるのか、というと

パラペットの剛性を考慮すると、

①梁の剛性が上がる

②剛性上昇に伴い負担せん断力が大きくなる

③梁端部曲げモーメントが大きくなる

④設計配筋を増やす必要性が高まる

⑤せん断補強筋は長期0.6%、短期1.2%までしか考慮できないため、仮にせん断補強筋比が規定値以上でせん断余裕度がない場合、コンクリートボリュームを大きくする必要がある

⑥端部曲げモーメントが大きくなることにより、主筋量を増やす必要性が増す。主筋を増やしすぎると柱梁接合部でNGになる可能性が高まる

⑦梁が硬くなりすぎて、せん断破壊しやすくなる

 

等々、いろんな影響が複雑に絡み合う事態になります。なので、パラペットの剛性を無視して計算するのは簡単なんです。剛性を考慮すると計算が煩雑になる可能性が高くなる。

 

柱にパラペットが取り付く場合

柱とパラペットが取り付く場合は、間違いなく鉛直スリットで縁を切りましょう。でないと本当に設計が難しくなります。まず、鉛直スリットを入れなかった場合、柱が短柱となります。パラペットの高さ分柱の内法高さが短くなるわけです。これによる弊害は、

①柱の剛性が増し、負担せん断力が大きくなること

②柱の端部(柱頭・柱脚)曲げモーメントが大きくなること

です。①と②により、必要主筋及び帯筋が増えることは想像に難くありません。そして柱主筋を増やしすぎると、部材種別がFAからFB、FCと、二次設計においてペナルティを食らう確率が高まります。ペナルティというのは、Ds値が大きくなる、という事です。また、せん断破壊する確率も当然高くなります。いいことなしです。ただし時たま、意匠設計事務所からスリットを入れると防水工事が難しいと言われる場合があります。その点は注意です。

 

ちなみに必要保有水平耐力は以下の計算式により求めます。

 

Qun=Qud*Fes*Ds

 

Qud=Wi*Z*Rt*Ai*Co

※補足

Wi=建物総重量(i層より上の重量)

Z=地震地域係数

Rt=振動特性係数

Ai=地震層せん断力係数の分布係数

Co=標準せん断力係数(一次は0.2、二次は1.0)

 

Dsが大きくなるという事は必要保有水平耐力が大きくなる、という事です。

 

結論:パラペットの剛性は見るべき

話がそれましたが、今回の本題の結論としては、原則パラペットの剛性は考慮すべきで、構造的に難しい場合は意匠と相談し、パラペット高さを低くする、フレームの断面を大きくさせてもらう、柱と接する部位はスリットを入れる、等の工夫をすべきと考えます。そもそも、かつての大地震の経験から、せん断破壊がいかに危険であるか、そしてせん断破壊を避けるための知恵を蓄えてきたわけです。パラペットもせん断破壊を高める部材といってもよく、ほかには腰壁などがあげられます。これらの危険因子といかに上手く付き合っていくかが重要です。パラペットや腰壁の剛性を考慮すると計算が難しくなるので、安易に重量だけ考慮しておく、という考え方は非常に危険だと思います。