二層地盤の検討

今回は二層地盤の検討をやってみます。

 

二層地盤の検討とは

直接基礎、杭基礎に関わらず、支持層はある程度堅い地盤(砂質土、砂礫層等)にします。これは堅い地盤程N値が大きく、支持力がとりやすい事に起因しているのですが、仮に支持層の下部に軟弱な粘土層、シルト層があった場合、想定していた支持力が確保できるのか(軟弱層で支持力が決まらないか)、という事を考える必要があります。この確認作業、及び検討を【二層地盤の検討】といいます。

 

実際に検討をしてみる

実際に検討をしてみます。まず、支持層を決めます。

①支持層の決定

 

ボーリング柱状図と基礎の姿図

 

 

深度1.9m付近に砂層がありますね。なのでこの層を支持層とします。設計支持力計算用のN値は5を採用します。

 

②設計軸力の計算、支持力の計算

 

次に設計軸力を仮定します。設計軸力は長期NL=250k N、短期Ns=450k Nと仮定し、必要となる支持力を計算します。

尚、長期・短期軸力には基礎自重を含みます。基礎自重はコンクリートと砂の比重の平均値から、γ=(24+16)=20kN/m3と仮定しています。

(軸力に占める基礎自重は、W=20*2.1*2.0^2=168kN程度です)

 

孔口標高とGL及びKBMの関係性の情報がないので、孔口標高をGLと仮定します。基礎の根入れ深さDf=2.1mとし、基礎幅B=基礎長さL=2.0mとします。

この時の長期許容支持力は約80kN/m2。短期は鉛直・水平荷重による角度成分は考慮せず単純に長期の2倍とし、160kN/m2とします。

 

 

許容支支持力計算

 

 

余談ですが、ボーリング柱状図より孔口標高-1.9mに地下水位の表示があります。今回、Df=2.1mとしており、基礎底が地下水位以下となるので、支持力計算時に土の単位体積重量を減じておく必要があります。地下水による浮力は9.8kN/m3。よって、基礎上部地盤単重γ2=18.0-9.8=8.2kN/m3とします。これだけでもかなりのペナルティです。

仮にγ2=18.0kN/m3だった場合、長期支持力は150kN/m2は取れる計算なので、支持力が1/2ほどに落ちたことになります。地下水位の存在は支持力計算において非常に厄介であり、見落としてはいけないという事が分かります。

 

③接地圧の計算

次は接地圧の計算を行います。

上記までの情報から、接地圧の検討は以下の通りです。

 

・長期の検討

σcL=NL/(BxL)=250/(2.0^2)=62.5kN/m2<qaL=80.0kN/m2 OK (検定値≒0.78<1.0)

・短期の検討

σcs=NL/(BxL)=450/(2.0^2)=112.5kN/m2<qas=160.0kN/m2 OK (検定値≒0.70<1.0)

 

長期・短期ともにOK。

 

二層地盤の検討

 

今回の本題である二層地盤の検討に移ります。

支持層の下の層の砂質シルト層に、基礎底からの分散角を考慮した接地圧がかかるものとして検討します。接地圧に対する基礎幅も分散角に応じて大きくなるため、基礎底から軟弱層までの距離(H-Df)が大きくなるほど検討は楽になるはずです。

 

二層地盤の検討は、下部粘性土が圧密沈下しない事を確認する作業です。例え支持層で長期80kN/m2、短期160kN/m2の地耐力が確保できる場合でも、支持層下部層の方が弱ければ、そっちで耐力が決まってしまいます。よって、支持層で確認、決定した地耐力が本当に確保できるのかを確認するための検討と言えます。

 

 

 

二層地盤の検討

 

①設計条件のまとめ

 

上に示したものが二層地盤の検討です。まずは設計条件をまとめます。必要な情報は、ざっくりまとめて

 

①基礎サイズ、Dfなどの基礎に関する条件

②設計接地圧p(地耐力の計算で求めたもの)

③GLから軟弱層までの深さ

④粘着力

⑤砂質土層(支持層)の極限支持力度qu1

⑥軟弱層表面に作用する接地圧(荷重度)p'(②に分散角を考慮したもの)

⑦下部粘性土の強度で決まる基礎底面における極限支持力度qu2

⑧二層地盤の極限支持力度

 

ぐらいでしょうか。

(※計算は建築基礎構造設計指針2019年版に沿って行う)

②それぞれの計算

 

①は持力計算で用いた値をそのまま使えばよいですね。B=L=2.0m、Df=2.1mです。また、基礎が正方形なのでα=1.2。これも地耐力の計算時に出てくる項目です。

 

②は「p」で表します。p(L)=σcL=62.5kN/m2、p(s)=σcs=112.5kN/m2。長期の検討の方が厳しかったので、今回はp(L)に対して検討します。尚、上の計算では長期許容支持力である80kN/m2を採用していますが、これは安全側の検討になるようにするためです。実際に生じている62.5kN/m2を採用しても問題ありません。

 

③これはHに該当する深さですね。柱状図よりシルト層表層レベルまでのGLからの深さは2.8mです。

 

④軟弱地盤=粘土やシルトに対する検討を想定しているので、粘着力を求める必要があります。詳細な地盤調査結果があればその値を用いて良く、N値換算方式でも構いません。今回はN値換算にて求めます。粘着力は1軸圧縮強度quが分かれば計算できます。

 

qu=12.5Nより、シルト層の最低値であるN値=1を当てはめると、qu=12.5kN/m2。

粘着力はquの1/2なので、C=1/2qu=6.25kN/m2となります。

 

⑤基礎の支持層はGL-2.1m砂質土であり、基礎底面での極限支持力を計算します。(後々の耐力計算に必要)

qu1=β*γ*B*η*Nr+γ*Df*Nq

      =0.3*8.2*2.0*0.79*6.8+8.2*2.1*10.7≒210.8kN/m2

これが砂質土層の基礎底面の極限支持力度。

 

⑥は「p'」で表します。これは式に数値を当てはめるだけの作業です。分散角は1:2勾配とし、検討結果より84.8kN/m2。

 

⑦下部粘性土の強度で決まる、基礎底面の極限支持力度を計算します。

qu2=(B+H-Df)(L+H-Df)/BL*(5.14αc)+γ1*Df

     =(2.0+2.8-2.1)^2/(2.0^2)*(5.14*1.2*6.25)+8.2*2.1≒87.5kN/m2

 

⑧二層地盤の極限支持力度は、建築基礎構造設計指針によるとqu1とqu2の小なる方を採用します。つまり、min(qu1,qu2)=qu2=87.5kN/m2。

qu1の式はβ*γ*B*η+Nr+γ*Df*Nqと、左辺、右辺の式にそれぞれγが組み込まれているため、地下水(浮力)の影響を考慮すると一概にqu2で決まるとは言えません。qu1で決まる可能性も想定して検討を行う事が必要です。

 

quは極限支持力より、長期許容支持力はその1/3。よってquL'=1/3qu=1/3*87.5≒29.2kN/m2

 

③二層地盤の検討

 

あとはシルト層の許容支持力と接地圧を比較して終わりです。シルト層に作用する接地圧p'=84.8kN/m2に対し、許容支持力quL'=29.2kN/m2と全く持っていないことが分かります。結果はNGです。

シルト層で決まる許容支持力は、基礎底面における支持力である事から、比較する接地圧は"p"で良いと考えられます。つまり、p=80kN/m2>quL'=29.2kN/m2。

検定値は2.74>1.0:NGです。

そもそもN値が小さすぎますね。N値1という事は、ハンマーを1回自由落下させただけで30cm地面に食い込むという事です。これでは耐力は見込めません。NGになるのも納得です。仮にpを許容支持力(80kN/m2)でなく実際の接地圧(62.5kN/m2)としても、検定値は約2.14と、OKになるレベルではありません。

 

NGをOKにするには、

①基礎サイズを見直す

②基礎底に改良をする

③杭基礎にする

でしょうか。①でNGをOKにするのは厳しそうなので、②か③を選択することになるでしょうね。

 

④N値をいじってOKにしてみる

これはただの検証です。N値がいくつならOKになるんでしょうか。結果、N値=4程あれば検定値0.89<1.0となりOKとなる事が分かりました。

(※p=実応力である62.5kN/m2に対し検討)

 

 

 

N値4あればOK

まとめ

今回は二層地盤の検討を行いました。直接基礎だけでなく、杭基礎の場合でも、申請時に確認や適判から指摘を受けることが多い内容です。あらかじめ地盤調査報告書、ボーリング柱状図に目を通し、基礎形式を含め検討しておくことが重要です。

 

23/11/18更新