Df効果とは

どうもimotodaikonです。

 

最近基礎に関する記事を集中して書いているので、今回も基礎関連の記事。支持力を算定する際に用いるDf効果について考えます。

 

Dfとは

まず、Dfとは英語の "Depth of Foundation"の頭文字をとったもので、和訳すると「基礎の深さ」という意味。構造設計業界では、そのままDfと言ったり、根入れ深さと言ったりします。Dfは、地盤面(GL)~基礎底までの深さの事。Dfが深くなる程、支持力・地耐力は大きくなります。

 

Df効果について

Df効果とは、基礎上層に積み重なる土の重量が、基礎を抑え込もうとする力の事です。Dfが深くなる程、当然基礎上部に積層する土の重量が大きくなるのでDf効果も大きくなります。Dfは支持力計算に大きく関わりがあります。

 

地盤レベルによるDfの変動

基礎の支持力算出の際にDfをどこからとるかによって許容支持力に大きく影響します。建設地の地盤レベルによっては、地盤レベルが一定でなく、レベル差(地盤の高低差)が大きい場合も考えられます。そういった場合、Dfをどこから取るか考えます。今回は3種類のパターンを想定しました。(下図は基礎構造設計指針に載っています。今回は簡単に解説つするので詳しくは指針を参照)

Df(根切深さ)は、前述の通り地盤表面から基礎底までの深さを言いますが、例えば下のような場合を考えたとき、Dfはどこから取るのか。

 

①地盤レベルが一定の場合

 

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 基礎周囲の地盤レベルに高低差がない場合は、地盤表面~基礎底までをDfとします。

 

②地盤レベルに段差がある場合

 

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地盤レベルに明らかな高低差(段差)がある場合は、安全側としてDfが小さくなる方、つまりレベルが低い方の地盤表面~基礎底までをDfとします。

 

③基礎が地盤に埋め込まれていない場合

 

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基礎が地盤に埋め込まれていない場合は、Df=0とします。
 

上の例でも分かったと思いますが、③のように基礎がむき出しの状態は当然Df=0となります。基礎が地盤に埋め込まれていないわけですからね。②については、Dfが小さくなるよう、地盤レベルが低い方を採用します。安全側の配慮と考えてよいと思います。

 

Df効果の影響力を考える

Dfが支持力計算に関係するのは分かったけど、どの程度影響するものなのか?私自身もよくわかっていないので、ある表を作成しました。N値=1~30に対し、Df=1,000mm~3,000mmにした場合どの程度支持力計算にDf効果が寄与するのか?この時、支持地盤が【砂質地盤】の時、【粘性土地盤】の時の両パターンを考えます。支持力計算は【長期】のみとします。

 

まずは直接基礎の支持力算出式のおさらいから

まずは直接基礎の支持力算出のおさらい。直接基礎の支持力算定式は以下によります。

 

Lqa=1/3・(ic・α・c・Nc+ir・β・γ1・B・η・Nr+iq・γ2・Df・Nq)

       ①        ①        

sqa=2Lqa

 

アンダーバーを引いた2つの式は支持層が粘性土の場合前半の赤字の式、砂質土の場合後半の緑色の式を採用します。ここでは比較検討する上での前提となる定義付けとして、赤文字及び緑文字による式を①式、支持地盤に関係なくDfが関係する最後の式を②式とします。

 

①砂質地盤-長期の支持力算定

設計条件をまとめます。

1.N値は1~30までを想定する。

2.Dfは1,000mm~3,000mmを想定する。

3.N値に応じた内部摩擦角φを算出する。

4.地盤の単位体積重量はγ1,γ2=18kN/m3とする。

5.傾斜荷重がないものとみなしic~iq=1.0とする。

6.基礎は2.0mx2.0mの正方形とする。よってα=1.2,β=0.3とする。 

上記の設計条件により支持力がどのように変化するのか確認してみます。

 

①式・②式の計算結果

まず、①式及び②式の計算結果表を以下に示します。

 

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上の表から読み取れることは、

・①の式について

①式は緑色で示した部分です。この式はDfは関係なく土の比重γ、基礎幅B、係数Nrによって計算結果が変動します。ただ、γ及びBは不変の値なので、この式において支配的なものは内部摩擦角により決定するNrです。

例えばN値=1の時、計算結果は28.4kN、N値が2になると結果は41.9kN。増加比率は約1.47倍となります。N値1と30の時を比較すると増加比率は約31.4倍となります。N値が大きくなる程、密実な砂となり、それに伴って内部摩擦角も大きくなります。

 

・②の式について

②式はDfが関係する式ですね。この式は土の比重γ、Df、係数Nqによって計算結果が変わります。この内、γは不変、NqはN値によって変動する値です。

 

まずはDf=1,000の時の結果を見てみます。N値=1で108.5kN、N値=2で134.6kN。増加比率約1.24倍。また、N値=1と30を比較した時、増加比率は約9.7倍。①式と増加比率が大きく違うのは、NrとNqの数値の増加比率が違う事が要因です。

 

次にN値一定でDfを変えた場合どうなるか見てみます。

N値=1でDf=1,000の時、108.5kN、Df=1,100の時、119.3kN。増加比率約1.1倍。Dfが100mm深くなるごとに結果は大きくなりますが、Dfが深くなる程増加比率が小さくなっている事が分かります。例えばDf=2,900と3,000の場合、増加比率は約1.03倍。先述のDf=1,000、1,100の時と比べてDfの影響力が小さくなっています。Dfが深くなるにつれて支持力の上昇が鈍っていく事が分かります。

 

支持力の算出(①式+②式)

ここで支持力算出を行います。上表では①式と②式を分けていましたが、下表ではそれぞれを合算し、1/3倍した値を表記(Lqa項)しています。また、支持力に対して①、②式の結果の占める割合を比率で表しました。

 

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ここで分かる事は、

・N値が大きくなる程①式の占める割合は大きくなる。反対に②式の影響力は小さくなっていく事。

・Dfが深くなる程、Dfの支配力が大きくなる事。

 

例えばDf=1,000でN値=1の時とN値=30の時を比較すると

・N値=1  →①式の支持力に占める比率0.21、②式の占める比率0.79

・N値=30→①式の支持力に占める比率0.46、②式の占める比率0.54

 N値が30になるとほぼ五分五分の比率になりますが、それでもDf効果の影響は大きい。

 

また、Df=3,000でN値=1の時とN値=30の時を比較すると

・N値=1  →①式の支持力に占める比率0.08、②式の占める比率0.92

・N値=30→①式の支持力に占める比率0.22、②式の占める比率0.78

 よりDf効果の影響力が鮮明になりました。

 

②粘性土地盤-長期の支持力算定

設計条件は砂質地盤と同じ。

一点違うのは粘性土地盤の場合、内部摩擦角φ=0になるので、N値関係なくNc=5.1、Nq=1.0で一律となる点。

 

①式・②式の計算結果

粘性土地盤の場合も同様に①式と②式に分けた時の計算結果を以下にまとめます。

 

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上表を見て砂質地盤の時と違うのは、②式の支持力に占める割合が非常に小さいという事。言い換えればDf効果の恩恵をほとんど受けない。粘性土地盤の支持力を左右するのは粘着力cによって決まる①式である事が分かる。

 

支持力の算出(①式+②式)

 

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上で書いたように、粘性土地盤の支持力計算において支配的なのは粘着力によって決定する①式である事が上表の比率表を見ると明らかです。N値が小さい場合はある程度②式によるDf効果の影響力はありますが、N値が5の時点で②式の占める比率は最大でも20%台にとどまっています。さらにN値が13を超えると1割にも満たない状況になっています。

N値30の時、Df=1,000でLqa=388.5kN、Df=3,000でLqa=400.5kN。その差は12kNです。ほとんどDf効果の恩恵を預かっていませんね。

 

まとめ

今回の記事のまとめです。

・支持層が砂質土地盤の場合、N値が小さい程Df効果の影響を受けやすい。N値が大きくなってもDf効果は大きい。

・支持層が粘性土地盤の場合、Df効果の影響力は微小である。支持力を決定づけるのは、粘着力である。

 

今回はDf効果について考えました。

今回使用した表は細かく作成したので、分かりづらかったらすみません。

 

今回はここまで。

ではまた。