集中荷重を受けるスラブの検討

どうも。

今回は、集中荷重を受けるスラブの設計について。

 

スラブ中心に集中荷重を受ける場合の計算法

RC基準より、スラブ中心に集中荷重を受ける場合の周辺固定スラブ(四辺固定版)の検討方法が示されています。

RC基準2010年版P.101より、

 

(2)スラブ中心に集中荷重Pを受ける周辺固定スラブに関して、H.Marcusによる略算式は次のとおりである。

各辺の(x方向を短辺、y方向を長辺とする)全反力を長辺上でvx、短辺上でvyとすると

 

Vx=P/2*ℓy^4/(ℓx^4+ℓy^4)

Vy=P/2*ℓx^4/(ℓx^4+ℓy^4)

 

長辺上で全モーメントをmx1、断面x=0でmx2、断面y=0でmyとすると、

 

mx1=-Vx*ℓx/4

mx2=μ(Vx+1/3Vy)*ℓx/4

 

my1=-Vy*ℓy/4

my2=μ(Vy+1/3*ℓx/ℓy*Vx)*ℓy4

 

ただし、μ=1-5/18*(ℓx^2*ℓy^2)/(ℓx^4+ℓy^4)

μについては等分布荷重と同様、周辺の固定度が不完全であることを考慮してμ=1として差し支えない。

これらの全モーメントを解説図10.5(b)のような三角形分布と仮定して配分すると、各部モーメントが求められる。ℓy>2ℓxの場合はmx1、mx2の分布範囲を2ℓxとする。【解説図10.5(c)】

Vx、Vyの分布は同様に三角形分布を仮定するが、ℓy>ℓxについてはVxの分布範囲をℓxとする【解説図10.5(a)】

 

反力と曲げモーメントの分布図

 

(a)は反力の分布範囲を示しています。

中央に集中荷重がかかるわけですから、スラブ中央部で反力が最大値を取り、そこから端部に向かって0に近づいていく。

 

(b)は曲げモーメントの状態を表した図。端部よりも中央部の方が曲げモーメントが大きくなります。

 

(c)は辺長比が2.0を超えた場合の曲げモーメントの分布図。短辺方向は中央から2ℓxの範囲しかが応力が生じないという事ですよね。

 

実際に検討してみる

 

集中荷重を考慮して配筋を決める

 

1.設計条件のまとめ

以下、設計条件。

・ℓx=3,000mm、ℓy=7,000mm

(長辺7,000mmは長いけど、面積が25m2未満なのでOKとする)

・辺長比λ=ℓy/ℓy=2.33

・Fc=24N/mm2なので、γ=24kN/m3

・D=150mm、dt=40mmより、d=110mm、j=0.875d=96.25mm

・固定荷重、積載荷重は適当、スラブ自重と加算してW=11,530N/m2

・Wx=11,154N/m2

・中央集中荷重P=15kN

 

2.等分布荷重を受けた時のスラブ応力の算出

等分布荷重のみ考慮した時の、スラブ端部・中央の設計応力を求める。

 

①短辺端部Mx1=-1/12*Wx*ℓx^2=-1/12*11.154*3.0^2≒-8.37kNm

②短辺中央Mx2=1/18*Wx*ℓx^2 =  1/18*11.154*3.0^2≒5.58kNm

③長辺端部My1=-1/24*W*ℓx^2 =-1/24*11.53*3.0^2  ≒-4.32kNm

④長辺中央My2=1/36*W*ℓx^2  =1/36*11.53*3.0^2    ≒2.88kNm

 

ここに、中央集中荷重を考慮した時の応力を加算すれば設計応力が求まります。

 

3.中央集中荷重を受けた時のスラブ応力の算出

まずはじめにX方向、Y方向の反力を求める。

 

Vx=P/2*ℓy^4/(ℓx^4+ℓy^4)=15.0/2*7.0^4/(3.0^4+7.0^4)≒7.26kN

Vy=P/2*ℓx^4/(ℓx^4+ℓy^4)=15.0/2*3.0^4/(3.0^4+7.0^4)≒0.24kN

 

次に応力算出。

 

①短辺端部mx1=-Vx*ℓx/4=-7.26*3.0/4≒-5.44kNm

②短辺中央mx2=μ(Vx+1/3Vy)*ℓx/4=1.0*(7.26+1/3*0.24)*3.0/4≒5.50kNm

③長辺端部my1=-Vy*ℓy/4=-0.24*7.0/4≒-0.42kNm

④長辺中央my2=μ(Vy+1/3*ℓx/ℓy*Vx)*ℓy/4=1.0*(0.24+1/3*3.0/7.0*7.26)*7.0/4≒2.24kNm

 

ちなみにμは1.0で良いとRC基準に書かれていますが、実際に計算すると0.95くらいになります。0.95で計算すれば多少応力は落ちますが、周辺の固定度が不明である事からμ=1.0として差し支えないとの事なので、1.0でむしろ計算すべきでしょうね。また、μが1.0を超える事はありません。

 

 

反力の計算結果より、短辺方向が荷重の約97%を負担している事が分かります。また、応力図より、短辺方向は端部、中央のMがほぼイコールとなっています。長辺方向は中央の曲げモーメントが端部より大きく、約5.2倍の応力差となっています。

 

4.等分布荷重時応力+中央集中荷重時応力

①短辺端部Mx=Mx1+mx1=-8.37-5.44=-13.81kNm

②短辺中央Mo=Mx2+mx2=5.58+5.50=11.08kNm

③長辺端部My=My1+my1=-4.32-0.42=-4.75kNm

④長辺中央Mo=My2+my2=2.88+2.24=5.12kNm

 

これら応力に対して断面算定すればOK。

 

5.断面算定

必要鉄筋量はMa=at*ft*jより、at=Ma/ft*jで求められるので、

 

①短辺端部必要at1=13.81*10^6/(195*96.25)≒735.8mm2

②短辺中央必要at2=11.08*10^6/(195*96.25)≒590.4mm2

③長辺端部必要at3=4.75*10^6/(195*96.25)≒253.1mm2

④長辺中央必要at4=5.12*10^6/(195*96.25)≒272.8mm2

 

となり、それぞれ配筋は

 

①D10D13@100 at=990mm2>at1=735.8mm2

②D10@100        at=710mm2>at2=590.4mm2

③D10@200        at=355mm2>at3=253.1mm2

④D10@200        at=355mm2>at4=272.8mm2

 

であればOKです。

 

総括

上で示したのはあくまで中央集中荷重の時の話。実際には、重量が極端に軽い場合は別として、スラブ中央に荷重がかかる場合は、中間に小梁を入れるなどして対応します。また、スラブのど真ん中に集中荷重がかかる場合というのは少ないと思います。つまり、上で示した通りの応力状態にはならないという事。例えば短辺方向の左端から1mの位置に荷重がかかった場合を想定すると、

 

両端固定梁とみなしたとき、

左端M=P*ab^2/ℓx^2=15*1.0*2.0^2/3.0^2=6.6kNm

右端M=P*a^2b/ℓx^2=15*1.0^2*2.0/3.0^2=3.3kNm

となり、荷重左端M=右端Mとはなりません。よって、このような場合に中央集中荷重とみなして検討することは、左端Mに関しては、応力を過小評価することとなり、危険側の検討になる、と言えます。なので、中央集中荷重を受ける場合の略算式が活躍する時というのは、ごく限られた場合のみなのかなーと思います。

 

じゃあどうすれば良いのか、というとその解答を持ち合わせていないわけですが、例えば前述の通り、両端固定で端部配筋を決め、中央配筋は端部ピンと仮定した時の応力を使うとか、端部の固定度を等分布と同程度と仮定するとかでしょうか。あとは、集中荷重をスラブ面積で割って、単位平米当たりの荷重として見込んでおく方法もありますが…。その辺は設計者判断に依るところが大きいですね。