突出部の検討について(屋外階段の検討)

どうもimotodaikonです。

今回は、屋外階段の突出部に対する検討について考えます。

 

屋外階段も突出部に該当する

以前記事にしたEVと同様、建物本体から外部に出ている部分(かつ本体と接続している部分)は突出部に該当する。今回扱う屋外階段も突出部である。よくマンションやアパートを外から見た時に階段が見える事がある。あれがまさに屋外階段で、地震時には、階段の重心位置(階段壁芯)に、階段の重量に水平震度k=1.0を乗じた力が生じる事になる。

 

 

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屋外階段の例

 

屋外階段の設計方法は「大阪府構造計算適合性判定指摘事例集」に記載されている

最近よく記事でも引用する事がある、「大阪府構造計算適合性判定指摘事例集-よくある指摘事例とその解説-」に屋外階段の突出部に対する検討方針が記載されている。

 

詳しくは下記参照↓

www.pref.osaka.lg.jp

 

 

基本的に、同指摘事例集に記載されている方法で設計すれば良い。今回は、指摘事例集に記載されている形状の屋外階段ではなく、少し形状の異なる場合を想定して設計を行ってみたい。

 

ちなみに「大阪府構造計算適合性判定指摘事例集」に紹介されているのは、以下の内容である。

 

 

 

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大阪府構造計算適合性判定指摘事例集-1.5より」

 

 

上図の階段重心位置に地震力が作用した場合、

 

 

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曲げモーメントMは、階段重心位置~支点となるスラブ先端位置までの距離により求め、階段幅を仮想梁の梁成とみなし、補強筋量を算出、配筋する。

せん断力Qは、屋外廊下CS1と屋外階段との接合部に生じるので、スラブのせん断耐力で処理できることを確認する。

 

 

 

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仮想梁内に補強筋を配筋する

 

 

 

・スラブ内(仮想梁)に配筋する補強筋は、本体側の大梁にL1以上定着する事が重要である。

・補強筋はスラブ内に配筋するので、スラブの主筋及び配力筋との干渉、またスラブ厚によって二段配筋できない場合があるので注意が必要である。

 

 

実際に設計してみる

では、今回扱う屋外階段の形状を下記に示す。

 

 

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屋外階段

 

 

上図が今回設計する屋外階段と周辺部材を表した伏図だ。屋外階段の隣にはEVがあり、それらはそれぞれ建物側のスラブ(屋外廊下)に接続している。この架構にX方向の地震力が作用した時、どのような応力が生じるか考えたい。

 

 

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地震

 

 

地震時には、階段の踊り場と接続する屋外廊下スラブにせん断力Qが作用する。加えて、屋外廊下スラブ先端を起点にし、階段壁芯(正確には階段の重心位置)までの距離分の曲げモーメントが生じるので、踊り場の幅を梁成と見立てた仮想梁が曲げを処理するものとして設計する。仮想梁は、上図の緑枠内に示した範囲の事。そして梁の上下(図面では左右だが)には補強筋を配筋し、曲げモーメントを偶力のモーメントに置換して片側の補強筋には引張力Tが作用するものとして考える。

 

 

 

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補強筋の算定とスラブの設計

 

では補強筋の算定及びスラブの設計をやってみる。

 

①設計条件

・階段の幅B=3,000mm、踊り場の幅B2=800mm、屋外廊下スラブ先端から階段壁芯までの距離L=1,100mmとした。(この辺は適当に仮定)

 

・スラブ符号はS1とし、板厚を150mm厚とした。一般に、屋外に跳ねだすバルコニーや廊下は片持ちスラブとする事が多いが、今回はその架構形状からスラブ四周を梁で囲んでいるので四辺固定スラブとした。

 

・スラブ及び周辺の梁等のコンクリート強度Fc=27N/mm2とした。

 

・仮想梁の断面は、上記より幅150mm(スラブ厚)x成800mm(踊り場幅)とした。スラブを梁に見立てているので、スラブ配筋+補強筋という形になる。よって、納まり(鉄筋間隔等)を考えて現実的な補強筋量・鉄筋径を計算する必要がある。当然梁成が大きく取れれば、設計は楽(補強筋量が少なくて済む)になるが、踊り場の幅を変更するとなると意匠にも絡んでくるので、EV側の梁(B11)の耐力を期待しても良いかも。

 

②荷重条件

・階段の重量は、P=130kNとした。階段重量には、"階段壁"、"階段段部・踊り場"、"手摺"、"階段壁 WB1,WCB1の重量"、"RF屋根重量"等が含まれる。

 

1.階段壁KW22→P1=(24kN/m3*0.22m+1.0kN/m2)*1.5m*3.2m=30.1kN

2.階段段部・踊り場→P2=10.5kN/m2*2.0m*3.0m=63.0kN

3.手摺→P3=24kN/m3*0.12m*1.1m*(2.0m+3.0m)=15.8kN

4.WB1,WCB1→P4=24kN/m3*0.22m*0.5m*1.5m=4.0kN

 

ΣP=113kN。余力を見て∑P=130kNとする。

 

③補強筋量の算定

補強筋はD10~D16を想定して設計する。材質はSD295、短期許容引張応力度ft=295N/mm2。スラブ厚が150mmなので納まり上D16までが限界と思われる。D16で設計かぶり厚30mm、スラブ配筋を主筋方向:D10D13@200(上下)、配力筋をD10@200(上下)とした場合、

小鉄筋間隔=150mm-30mm*2-18mm*2-11mm*2=32mm>25mm*1.25=31.25mm:OK

で補強筋を上下2段にしてもギリ納まるか?といった感じ。

 

・設計応力は以下の通り。

M=P*k*L=130kN*1.0*1.1m=143.0kNm。Q=P*k=130kN*1.0=130kN。

 

・必要鉄筋断面積は、at=M*10^6/(ft*j)で求められる。jは簡単に梁成800mmの0.875倍として計算する。

at=143.0kNm*10^6/(295*800*0.875)=692.5mm2→4-D16(at=796mm2)

 

④スラブの設計

・スラブの設計は、せん断力に対する検討。③よりせん断力Q=130kN。これに対してスラブの短期せん断耐力はコンクリートボリュームから、

τa=t*B*fss=150mm*800mm*1.14N/mm2/1000=136.4kN>T=130kN:OK

尚、fss=min(1/30*Fc,0.49+1/100*Fc)*1.5=1.14N/mm2。

 

以上で計算は終わり。

 

今回は突出部の検討(屋外階段の場合)を行いました。

今回はこの辺で。

ではまた。