突出部の検討について①(EV周辺部材の検討)

どうもimotodaikonです。

今回は、突出部の検討について考えます。

 

突出部の検討②(EV壁の検討)は以下↓

 

imotodaikon.hatenablog.com

 

 

突出部の検討について

今回考えたいのは、RC造のマンションなどでよく見られる、EVや階段等の突出部の検討方法について。今回はEV部分の検討、特にEV周辺部材に対する検討について考える。

建物本体から突出している部分には、局部震度と言って、1Gの地震力(自重分全部)が加わるものとして設計する。突出部分(片持ち梁や片持ちスラブなんかもそうだが)には力が集中しやすい傾向にある。何故なら突出部というのは言葉の通り、一部分だけぴょーんと飛び出ているので、上下左右方向に力が加わる(煽られる)からだ。よって安全をみて、1Gとして設計するのが慣例となっている。

突出部と聞いて連想しやすいのは、屋上階のPH(ペントハウス)等だ。PHは鉛直方向に立ち上がっている突出部で、局部震度として鉛直震度1.0として設計する。EVや階段も同じで、PHとは違い水平方向の突出部分に該当するが、設計方法は同じである。

 

EV周辺部材の検討をやってみる

では実際に検討方法について考えたい。例えば下図のようなEVがあったとする。

 

 

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EV突出部と建物本体との関係図(図1)

 

 

この場合、局部震度が加わった時、どこにどのような力が加わるかを考えたい。まず、X方向に地震力が作用した時を考えよう。EVの芯は建物本体からL=2.3mの位置にある。そこに地震力が加わると、建物本体を起点として、X軸方向への曲げモーメント(回転)が生じる事になる。この曲げモーメントをどのように処理するかを考えると、一番現実的なのは、EVに取り付いている小梁B1間隔でこの曲げモーメントを偶力のモーメントとして置換し、小梁の主筋で引張力が取れるか検討すればよさそうだ。

 

 

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X方向地震力加力時(図2)

 

1.小梁に対する検討

EVに取り付く小梁B1には、上図のように片方には圧縮力が、もう片方には引張力が作用する。RC造は、圧縮力に強く引張力に弱いので、小梁主筋の耐力で決まると考えられるが、一応圧縮耐力と引張耐力を比較し、小さい方の耐力を採用して検討しよう。

 

 

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設計条件まとめ・断面算定まで

 

上は検討結果をまとめたものだ。一つずつ説明していくと、

 

①.小梁のスタンスはB=2.0mとした。また、EVの突出長は上でも書いた通りL=2.3m。EV壁の長さはB=ℓ=2.0mとした。

 

②.小梁の断面は220x500としている。EVには有効開口があり、有効開口に応じて梁幅を決定する事になるが、そこまで大きく梁幅を設定する事は難しい。大体200mm~250mm程度が限界ではないだろうか。220幅あれば、一段当たり2-D16までは配筋できる。よって上筋・下筋ともに2-D16、トータル4-D16が引張耐力に寄与する設計とした。

D16の鉄筋一本当たりの断面積atは199mm2/本。その4倍である4*199=796mm2が有効引張鉄筋としてカウントできる。また、D16の鉄筋材料はSD295であり、突出部の検討は短期荷重時の設計であるため、許容引張応力度はftmax。つまりfts=295N/mm2取る事ができる。よって、小梁主筋の引張耐力はTa=at*fts/1000=234.8kNとなる。

 

③.小梁のコンクリート強度はFc=24N/mm2とした。短期設計であるため、短期許容圧縮応力度はfcs=2/3Fcだ。よってfcs=16N/mm2となる。そこに小梁の断面積を乗じれば圧縮耐力が求められる。よってNa=fcs*A/1000=1760kNである。

 

④設計曲げモーメントはM=P*k*L=345kNmとなる。P=150kNというのは、EV外壁(W20)の荷重に長さを掛け、さらに高さを乗じた値である。今回は、EVが2.0mx2.0mの正方形、かつ壁厚200mmを想定している為、W=(24*0.2+1.0)*2.0*4=46.4kN。((24*0.2+1.0)の1.0は仕上げ荷重)これに階高を掛けた値がPとなる。階高を3.0mとするとP=W*3.0=139.2kN。余力を見てP=150kNと設定した。

 

⑤.④で求め値を小梁間隔Bで除せば、小梁一本あたりに作用する軸力が導き出せる。よって、小梁に作用する軸力は、T=N=M/B=345/2.0=172.5kNとなる。

 

⑥.断面算定を行う。⑤で求めた小梁一本あたりに生じる軸力に対し、小梁の引張耐力・圧縮耐力の小さい方で検討して持っておけば問題ない。②と③で引張耐力と圧縮耐力を算出したが、圧縮耐力が引張耐力のおよそ7.5倍。コンクリートがいかに圧縮力に強いかが分かる。よって、今回採用する値は、小梁主筋によって求まる引張耐力Ta=234.8kNだ。

設計軸力T=172.5kNに対し、引張耐力はTa=234.8kN。よって検定値0.74<1.0:OKとなる。

 

⑦.Y方向加力時は、水平力P=150kNを2本の小梁で本体側に伝達できるかどうかを考えればよいと思われる。純粋に小梁が2本あるので1本当たりに作用する軸力はT=P/2=75kNだ。これはX方向に地震力が作用した時に作用する軸力に比して小さい値なので、特段検討を行う必要はないと考えられる。

 

2.スラブのせん断力に対する検討

小梁B1に挟まれた四辺固定スラブS1にはせん断力Exが加わるので、スラブのせん断力に対する検討を行う。検討としては純粋にスラブ断面積*コンクリートの許容せん断応力度でせん断耐力を算出し、Exと比較すればOK。

 

 

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Q=Ex

 

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スラブのせん断力に対する検討

 

 

スラブ厚t=150mm、スラブの有効幅B=2,000mm、コンクリート強度Fc=24N/mm2より、スラブのせん断耐力は、τa=t*B*fss=328.5kN。せん断力Q=地震力Exより150kN。よって、Q<τa(検定値:0.46)よりOK。

 

という事で今回はEVの突出部の検討を行いました。

不足内容があればまた追記します。

ではまた。