トラス梁とは

どうもimotodaikonです。

今回はトラス梁について考えます。

 

トラス梁とは?

トラス梁は"弦材""ラチス"により構成される組み立て材の事である。弦材には"上弦材""下弦材"があり、梁の上フランジ側を"上弦材"、下フランジ側を"下弦材"と呼ぶ。"ラチス"は上下弦材に挟まれた斜め方向に配置する部材である。役割は軸力の伝達。ちなみにラチス(Lattice)の和訳は"格子"。トラスはこれら弦材とラチスにより構成された組み立て材の総称の事である。

 

 

 

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トラス梁は弦材とラチスの組み立て材

 

 

トラス梁を採用する事が多い建物用途は?

トラス梁を採用する事の多い建物用途として大スパンの"倉庫""工場"が挙げられる。その理由について考えたい。

大スパンの梁を"H形鋼"で設計すると、梁の自重によりたわみ及び曲げモーメントが加算され、必要断面が極端に大きくなる可能性がある。

 

例えば、両端固定(等分布荷重)の梁のたわみの計算式は下記によるが

 

δmax=wℓ^4/384EI

 

上式にあるようにℓの4乗が掛かってくるので、スパンのたわみへの影響が大きい事が分かる。まあ、たわみ量を決定づけるのはスパンだけではないのだが、鉄骨はヤング係数がE=2.05x10^5N/mm2で固定なので、たわみ量を減らすには"荷重を減らす"か"断面二次モーメントを大きくするか"の二択しかない。(梁中間に柱を設けられる場合は別)

 

H形鋼には"RH(ロールエイチ)"と"BH(ビルドエイチ)"の2種類がある。"RH"には"細幅"、"中幅"、"広幅"の3種類があり、一般に広幅ほど断面性能が高く、細幅ほど断面性能が低い傾向にある。また、"RH"は市場に流通している(製造されている)最大サイズでRH-918x303x19x37まで。それ以上の断面性能が必要になる場合は 基本的に"BH"を検討する事になる。

 

BHはPL(プレート)を溶接して組み立てるH形鋼の事で、応力やたわみに応じて必要な梁成や梁幅、ウェブ厚、フランジ厚を指定する事ができる強みがある。そのかわり溶接の手間が増える。形状としてはRHと同じだ。どちらもウェブPLとフランジPLにより構成されている。

 

前置きが長くなったが、なぜ大スパン梁にトラス梁を採用する事が多いのかについて、上述したH形鋼を梁として用いると、梁の断面を大きくするのに比例して梁の自重が増えてしまうというデメリットがある。そして大スパン梁の断面の決定要因は大体がたわみである。なので大スパンにRHやBH等のH形鋼は不向きと言える。

反対にトラス梁は、"上弦材"と"下弦材"の間に"ラチス"を配置した組み立て材で、断面(ウェブ部分)に隙間が多い。これにより梁の自重を落とす事ができるのだ。

 

 

 

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斜線部分は断面がない(わかりづらい)

 

 

トラス梁の設計応力

ここではトラス梁に生じる応力について考えたい。トラス梁は弦材とラチスにより構成された特殊な梁である。ではトラス梁の設計応力はどのように考えたらよいか。

結論から言うとトラス梁には軸力しか生じない。これは弦材もラチスも同様である。

この結論を証明するために、一本の単純梁に等分布荷重がかかっている状況を想定してみよう。

 

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単純梁に等分布荷重を加えた時のM図

 

 

上図が単純梁に等分布荷重を加えた時のM図である。曲げモーメント図では"引張側に応力線を描く"と言う慣例がある。上図をH形鋼に見立てて考えてみよう。すると応力曲線が部材の下側に出ているので、"下フランジが引っ張られている"という事が分かる。反対に応力線が出ていない側は"圧縮側"となる。つまり上図をH形鋼と見立てた時、"上フランジに圧縮力が加わっている"という事である。

 

この考え方をトラス梁に転用してみよう。トラス梁の上弦材が上フランジである。下弦材は下フランジ。すなわち上図の応力状態をトラス梁に置き換えても、上弦材に圧縮力が、下弦材に引張力が加わっていると考える事ができる。

 

 

 

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トラス梁の上弦材には圧縮力、下弦材には引張力が加わる(単純梁の時)

 

 

もちろん、上では単純梁とした時のみを想定しているので、上弦材が圧縮側で下弦材が引張側、と簡単に考えられるのだが、実際は梁の両端は柱に剛接合されているので端部の固定度(端部応力)を考慮する必要があるし、主フレームの梁として使用する場合は地震力を受けるので、単純に上下弦材の負担する応力が圧縮力か引張力かは定義づける事は出来ないのだが。ただ、負担する応力は"軸力のみ"である。この点は変わらない。

 

また、ラチスが負担する応力も"軸力のみ"である。ラチスの負担する軸力は、梁に生じるせん断力を角度成分分割増して求める。ブレースの設計と一緒。

 

 

トラス梁にどんな部材を使うか

最後にトラス梁に採用する事が多い部材について。弦材として使用する事が多いのは"アングル"の単材or2枚背合わせや、"CT(カットティー)"だろう。特に大規模な鉄骨造建物の耐震診断ではトラス梁を目にする機会が多く、大体アングルで組んである。また、ラチスは"PL"か"アングル"の単材か2枚背合わせが多い。

 

本当は実例を通して記事を書きたかったのだが、今回は説明パートという事でこの辺で終わり。

ではまた。