鉄骨部材の断面性能計算/2アングル

どうもimotodaikonです。

今回は、2アングルの断面性能計算を行います。

 

2アングルとは?

2アングルはアングル同士をPLを介して接続した部材の事である。アングルの背中と背中を合わせるので"背合わせ"と呼ぶことも多い。部材リストで2アングルである事を表現する時は"2L-65x65x6" のように断面の前に"2L"をつけて表現する。

 

 

f:id:imotodaikon:20211030180828j:plain

 
2アングル(背合わせ形式)

 

2アングルとするメリットは、単純に断面積が倍になるという事と断面性能が上がる事(要は硬くなる)、ブレースとして使用する場合は、前述の断面積の増加に伴い引張耐力が向上する事、1枚もののように有効断面積の低減をしなくて良い事などが挙げられる。(アングルや溝形鋼の1枚ものは端部が有効に引張耐力に寄与しないと考え、有効断面積を低減する)

 

 

 

f:id:imotodaikon:20210523165041p:plain

アングルの突出部は断面積として考慮しない(hn)

 

 

2アングルの断面性能の計算方法は?

2アングルの断面性能の計算方法は、アングル単材の断面性能の計算方法と基本的に同じ。ただ、部材が2つになるのでまずは1枚当たりの断面性能を計算する。そこから部材2枚にした場合(PLも考慮する)の断面性能計算を行う。断面が2倍になるからと言って、必ずしもすべての断面性能が倍になるわけではない事に注意。(断面積は2倍になるが)

 

2アングルの断面性能の算出

1.L-75x75x9(単材)の断面性能計算を行う

使用部材を"2L-75x75x9"とした時の断面性能を計算してみよう。まずは単材の断面性能を計算する。計算方法は前回の記事通りなので詳しくは書かない。計算結果をまとめると、

<手計算の場合の断面性能一覧>

A=1,269mm2

Ix=Iy=664,493.4mm4

Zx=Zy=12,250.2mm3

ix=iy=22.9mm

となった。

 

 

f:id:imotodaikon:20211031022506j:plain

 

 

L-75x75x9の断面性能計算

 

上記は手計算の場合の断面性能なので、"R部"を考慮した本来の断面性能と比較して大きく外れていない事を確認しておこう。

JFEスチール_鋼構造設計便覧より>

A=1,270mm2

Ix=Iy=644,000mm4

Zx=Zy=12,100mm3

ix=iy=22.5mm

 

まあ大体あっているので誤差の範囲と判断する。

 

〇アングルの断面性能計算↓

imotodaikon.hatenablog.com

 

 

2.2アングルのX軸周りの断面二次モーメントを求める

アングル2枚当たりのX軸周りの断面二次モーメントを求めよう。X軸周りの断面二次モーメントはアングル1枚当たりのIxの2倍になる。つまりIx=664,493.4mm4x2=1328986.8mm4。この理由を説明する。

 

 

f:id:imotodaikon:20211031174950j:plain

長方形4つに分割

 

 

上図のように4つの長方形断面から成り立っていると考えると、断面積、X方向の図芯位置はそれぞれ

 

断面①:A1=t*H=9*75=675.0mm2、x1=PL/2+t/2=0+9/2=4.5mm

断面②:A2=(B-t)*t=(75-9)*9=594.0mm2、x2=PL/2+t+(B-t)/2=0+9+(75-9)/2=42.0mm

断面③:A3=t*H=9*75=675.0mm2、x3=PL/2+t/2=0+9/2=4.5mm

断面④:A4=(B-t)*t=(75-9)*9=594.0mm2、x4=PL/2+t+(B-t)/2=0+9+(75-9)/2=42.0mm

 

となる。(PL厚はここではとりあえず無視する)

次に断面の図芯位置を計算すると

 

Cx=(A1*x1+A2*x2+A3*x3+A4*x4)/(A1+A2+A3+A4)=(675.0*4.5+594.0*42.0+675.0*4.5+594.0*42.0)/(675.0+594.0+675.0+594.0)=22.05mm

 

となる。これが上述したアングル1枚あたりの図芯位置と同じになる事の証明である。

 

次に各長方形断面の断面二次モーメントを計算する。

 

断面①:Ix'1=t*H^3/12=9*75^3/12=316406.25mm4

断面②:Ix'2=(B-t)*t^3/12=(75-9)*9^3/12=4009.5mm4

断面③:Ix'3=t*H^3/12=9*75^3/12=316406.25mm4

断面④:Ix'4=(B-t)*t^3/12=(75-9)*9^3/12=4009.5mm4

 

よってアングル2枚当たりのX軸周りの断面二次モーメントは、

 

Ix=Ix'1+A1*(Cx-y1)^2+Ix'2+A2*(Cx-y2)^2+Ix'3+A3*(Cx-y3)^2+Ix'4+A4*(Cx-y4)^2=316406.25+675.0*(22.05-37.5)^2+4009.5+594.0*(22.05-4.5)^2+316406.25+675.0*(22.05-37.5)^2+4009.5+594.0*(22.05-4.5)^2=1328986.8mm4となる。

 

3.2アングルのY軸周りの断面二次モーメントを求める

次はY軸周りの断面二次モーメントを求める。Y軸周りの中立軸はアングルとアングルの中間を通るので、中立軸から離れた軸についての断面二次モーメントの公式を使って計算しよう。ここでもとりあえずPLの厚みは考慮せずに計算する。アングル1枚の図芯位置は原点からCy=22.05mmの位置にある。よってアングル2枚当たりの断面二次モーメントは、

 

Iy={Iy'+ΣA*(PL/2+Cy)^2}*2={664493.4+1269.0*(0+22.05)^2}*2=2563326.0mm4

 

 

f:id:imotodaikon:20211031175240j:plain

 

軸を90度回転させると考えやすい

 

4.2アングルの断面係数を求める

断面二次モーメントは求められたので、次に断面係数の計算を行う。断面係数は"Z=I/e"の式によるので、

 

Zx=Ix/ex=1328986.8/52.95=25100.4mm3

Zy=Iy/(PL+H)=2563326.0/(0+75)=34177.7mm3となる。

 

5.2アングルの断面二次半径を求める

断面二次半径はi=√I/Aより、

 

ix=√Ix/(ΣA*2)=√1328986.8/(1269.0*2)=22.9mm

iy=√Iy/(ΣA*2)=√2563326.0/(1269.0*2)=31.8mmとなる。

 

6.計算結果のまとめ

以上の計算結果及び計算方法についてまとめる。

 

 

f:id:imotodaikon:20211031181347j:plain

計算結果まとめ・断面性能の妥当性の確認

 

 

手計算ベースでの検討結果と鋼構造設計便覧より断面性能の比較を行った。手計算の方が断面性能としては多少大きな数値が出ているが、Ix、Iy、Zx、Zyいずれも3%前後の増加なので誤差の範囲ととらえてもよいだろう。ちなみに上記の結果はPLの厚みを考慮していないので、PL厚6mm、9mm、12mmとしたときの結果も以下に示す。

 

 

f:id:imotodaikon:20211031191013j:plain

PL-6の時

 

f:id:imotodaikon:20211031191058j:plain

 

PL-9の時

 

f:id:imotodaikon:20211031191238j:plain

 

PL-12の時

 

PLを考慮すると、Y軸方向の断面性能が上がる。反対にX軸方向には影響しない。

 

 

f:id:imotodaikon:20211031191553j:plain

PLを考慮するとY軸方向の断面性能が向上

 

 

今回は2アングルの断面性能の計算を行いました。

ではまた。