鉄骨造部材の断面性能計算/H形鋼

どうもimotodaikonです。

今回は鉄骨部材の断面性能の算出方法について考えます。

 

規格品は断面性能が明確である

まず、一般に市場に流通している鉄骨部材(規格品)の断面性能は、JFEスチールや日本製鉄(旧住金)の青本及び赤本(建築資材ハンドブック)に記載されているのでそれを参照すれば良い。規格品を用いる場合は断面性能を手計算する必要は無いため、特に気にする必要はない。ただ、特に断面二次モーメントの求め方を知っておくと、規格品以外の組み立て材などの断面性能を求める役に立つので理解しておくことが望ましい。

 

断面二次モーメントが分かれば殆どの断面性能を求められる

ここからは実際に断面を仮定して断面性能を求めていくが、断面性能を求めるに当たって必要になるのは断面積、断面二次モーメント、図芯位置の3つである。断面積と図芯位置の計算は簡単だ。問題は断面二次モーメント。断面二次モーメントの計算方法を知っておく必要がある。逆に言えば、断面二次モーメントの計算方法さえ知っておけば、どんな断面でも断面性能を求めることは可能だ。

 

断面二次モーメントの基本計算式は、I=bH^3/12による。離れた軸についての断面二次モーメントを求める際は、I=In+Ay^2の式を使って求める。(In=断面の中立軸についての断面二次モーメント、A=断面積)

 

 

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離れた軸についての断面二次モーメントの計算方法

 

 

実際に断面二次モーメントから導き出せる断面性能は以下。

・Zx,Zy=I/e(断面係数)

・ ix,iy=√I/A(断面二次半径)

・ib=√Iy'/A'(断面二次半径_曲げ)

この3つが分かるだけで断面算定できる。

(A=断面積、e=図芯までの距離。これらが分からないと計算できないけどね)

 

トラス材などの組み立て材の計算がめんどくさい

トラス材は一般に組み立て材と呼ばれ、アングルや溝形鋼を組み合わせて断面を形成した部材のことである。これの断面性能の計算がめんどくさい。特に古い建物で大規模な建物のほどトラス材を使用していることが多く、トラス材に使用している部材も上述の青本や赤本に記載のないもの(規格品でないもの)であることが多い。つまり、断面性能を自分で求める他ない。

 

実際に断面性能の計算を行ってみる

では、実際に断面性能の計算を行ってみよう。まずはH形鋼の計算を行う。断面は"BH"とする。BHは"ビルドエイチ"と呼ばれ、規格品にない断面をプレートを溶接する事で製作する。BHのメリットは規格品にないサイズ、断面の部材を自由に作れること。

 

断面は規格品の断面性能と比較する為にBH-600x200x11x17としよう。求める断面性能は以下とする。

・断面積(A)

・図芯位置(ex,ey)

・断面二次モーメント(Ix,Iy)

・断面二次半径(ix,iy,ib)

・断面係数(Zx,Zy)

 

断面性能の計算

 

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BHの断面性能の計算

 

上記がBH-600x200x11x17の断面性能計算結果。BHは"R部"がないので計算が楽。実務でRH(ロールエイチ)の断面性能を手計算で求めるときも、計算が面倒くさいので普通R部は無視する。実際、R部分を無視すると断面積が過小評価になる。よって断面積により求められる"断面二次半径ix,iy,ib"等の値が変わるのだが、誤差の範囲と考えられる為問題ないと判断する事が多い。(断面二次モーメントにも微小な影響あり)

 

 

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BH-600x200とRH-600x200の断面性能の比較

 

上記の表はBH-600x200x11x17(ビルドエイチ)とRH-600x200x11x17(ロールエイチ)の断面性能の比較表だ。RH-600x200の断面性能は、JFEスチールや日本製鉄の鉄骨表から持ってきた値。BHと違うのは、R部分を考慮しているか否かだけだ。計算結果を見てもR部分を考慮してもしなくても大して断面性能に影響ない事が分かる。

 

 

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R部なんてシラネ

 

R部分について一点補足だが、鉄骨部材は一般に"ロール成形"と言って、ローラーで鋼板を挟んで断面を成形する。ローラーは円形状の為、R部分が形成される。

 

今回はとりあえずH形鋼の断面性能の計算を行ったが、上述のトラス材やアングル等の計算方法についても追記していきます。

 

今回はここまで。

ではまた。