柱の最小鉄筋比とは?

どうもimotodaikonです。

今回は、RC柱の最小鉄筋比について考えます。

 

小鉄筋比とは?

小鉄筋比とは、RC柱や梁、壁などに定められている、最低限必要とされる鉄筋比の事である。先日の記事で、梁の最小鉄筋比について触れたが、今回は柱の最小鉄筋比についての記事。

梁の最小鉄筋比については以下参照ください。

 

imotodaikon.hatenablog.com

 

 

柱の最小鉄筋比は?

柱主筋の最小鉄筋比は、柱全断面積の0.8%である。

例えば、柱断面がb:800xD:800で鉄筋比が0.8%ちょうどの場合の鉄筋量を求めてみる。計算は簡単。上の式を崩して(atイコールの式に変換して)やれば良い。具体的に書くと、at=bxDx0.008=800x800x0.008=5120mm2である。ちなみに、柱主筋の必要最小鉄筋比を求める際は、梁のように引張鉄筋比(引張に有効な鉄筋のみ考慮)と考える必要はなく柱全断面積に対する柱に配置されている全鉄筋断面積と考えてよい。

上で求めた必要鉄筋量(鉄筋断面積)から、仮に主筋径をD25とした場合、D25のat=507mm2/本より、5120mm2/507mm2=10.10本→11本以上配置すればOK。柱主筋本数は奇数になる事はないので、実際12本以上必要となる。

 

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柱断面・主筋配置・主筋量

 

 

 

柱主筋の規定値はRC基準のどこに書いてある?

柱の設計規定は、RC基準2010年版の場合、P.134"14条:柱の軸方向力と曲げに対する断面算定"に明示されている。この中で、柱主筋の最小鉄筋比は柱全断面積の0.8%以上とする事、及び"コンクリートの断面積を必要以上に増大した場合には、この値を減少させることができる"旨記載されている。私は普段、この太字で書いた文章を特段意識して設計したことはない。おそらく一般的な建築物の設計で意識する必要はない内容だと思う。(コンクリートの断面積を必要以上に増大させる場合って…コンクリートボリュームを増やして、圧縮に効かせる場合とか?)コンクリートの断面積を必要以上に増大した場合の定義づけが不明だが、まああまりに気にしなくて良い。基本的に、柱の全断面積に対する最小鉄筋比は0.8%だ。ちなみに、柱の最小鉄筋比の算定には、梁のように、①梁断面の0.4%以上とするか、②存在応力によって必要とされる鉄筋量の4/3倍以上とするか、のような選択肢はないので考えやすいよね。

 

 

 

実務では最小鉄筋比ではなく、応力により鉄筋量が決まる事が多い

柱の最小鉄筋比が0.8%という規定を覚えておくことは大事だが、実務ではそれ以上の配筋で設計する事は多い。結局は最小鉄筋比で決まるのではなく、存在応力に対して必要な鉄筋量を配筋すると、普通0.8%以上になるという事である。

また、主筋量の上限値は特段定められていない。柱断面に対して、施工できる範囲で主筋本数及び径を決めるのが一般的な構造設計の流れである。ただ、応力が大きいからと言って主筋量を増やしすぎるのもよくない。主筋量の上限値はなくとも、ルート3で設計する場合は特に、過剰な鉄筋量になる事は避けるべきである。それは、部材ランクに関わるからである。

 

 

 

部材ランクとは?

部材ランクとは何か?今回の記事では詳しく解説はしないが、簡単に言うとその部材の靭性が高いのか、低いのかを示す指標の事である。靭性というのは、"粘り強さ"と言い換えてもいい。対義語は"脆性"。つまり脆い事。

部材ランクはA~Dまでの4種類あり、Aが最も靭性が高く、Dに近づくにしたがって靭性が低い部材と評価される。部材ランクがDになると特に、設計上重いペナルティを課されることになる。部材ランクの評価には、柱の引張鉄筋比Ptが関わってくる。引張鉄筋比とは、引張力に有効な鉄筋の事で、最小鉄筋比とは別物。ただ、鉄筋本数を増やすことは、結果的に引張鉄筋比Ptを増加させることにつながる。この引張鉄筋比Ptには部材ランク付けの為の規定値が定められており、いたずらに鉄筋を増やすと、ペナルティにより設計しづらくなってしまう。規定値については、黄色本2020年版のP.392に明示されている。内容は以下。

 

・Ptの数値が0.8(%)以下の時→FAランク

・Ptの数値が1.0(%)以下の時→FBランク

・Ptの数値が1.0(%)を超える時→FCランク

 

上記を見て、FDランクの記述がない!と思うかもしれないが、FDランクになる場合もある。着割裂破壊を起こす部材がFDランクに該当する。(ちなみにFAランクの"F"は"フレーム"の"F"らしい。耐震壁の場合、Fではなく"W"A~"W"D("ウォール"の"W")となるよ)

 

 

 

 

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部材ランクと靭性

 

 

 

 

着割裂破壊とは?

RC柱(梁)は、コンクリート断面中に鉄筋を配筋している訳だが、コンクリートと鉄筋はとても相性が良く、鉄筋の節部の存在も相まって、お互いの一体性はとても高い。一体性が高いという事は、言い換えれば、コンクリートから鉄筋は抜け出しにくいが、大きな力が掛かった時(鉄筋に大きな引張力が作用する時)、鉄筋がコンクリートと一体になったまま抜け出そうとする。いうなれば道連れ。かわいそうなコンクリート。要はコンクリートが剥落するという事である。これが着割裂破壊。

 

 

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着割裂破壊
(RC基準による鉄筋コンクリートの構造設計【改訂版】より)

 

 

着割裂破壊は"脆性破壊"の一種で、この破壊形式を起こす部材はFDランクとなる。(別途、必要となる定着長を指定する場合は別) 脆性破壊とは文字通り、"脆い破壊"の事。構造的には避けたい破壊形式である。特に柱や基礎梁など、断面に対して主筋量が多くなる部材に付着割裂破壊は起こりやすい。付着割裂破壊を起さないためには、極力鉄筋量を減らす事。太径を避ける事。コンクリート断面を大きくする事。などが挙げられるかな。

 

話がだいぶ脱線した。

 

今回の話をまとめると、

①柱の小鉄筋比は0.8%とする。(RC基準2010年版P.134より)

②建築構造設計には部材ランクという評価概念が存在する。部材ランクはA~Dまでの4段階評価。Aは最も靭性が高く、Dが一番低い。

③柱のPtによる部材ランク付けはFA~FCまで。着割裂破壊が起きる場合はFDランクになる。

④付着割裂破壊は、脆性破壊の一種。鉄筋が引っ張られたとき、鉄筋がコンクリートごと抜け出そうとする現象の事を言う。

 

今回は柱の最小鉄筋比について考えました。

部材ランクや付着割裂破壊の詳細な内容は、また気が向いたときに記事にします。

ではまた。