RC柱、梁のせん断補強筋比とは

どうもimotodaikonです。

今回は、RC柱とRC梁の最小せん断補強筋比について考えます。

 

RC柱と梁の最小せん断補強筋比は?

RC柱とRC梁の最小せん断補強筋比は、Pw=0.2%である。主筋の最小鉄筋比は柱が0.8%、梁が0.4%だったが、せん断補強筋比は0.2%で共通なので覚えやすい。ちなみに同じせん断補強筋でも、使用部材によって呼び方が異なる。

柱は"HOOP(フープ)"、梁は"STP(スターラップ)"と呼ぶ。日本語だとHOOP="帯筋"、STP="あばら筋"

 

最小せん断補強筋比はRC基準のどこに書いてある?

最小せん断補強筋比についての記述は、RC基準2010年版のP.153に書いてある。

"梁、柱のせん断補強筋比は、0.2%以上とする。"(RC基準2010年版P.153より)

 

せん断補強筋比の計算方法について

ここでは、せん断補強筋比の計算方法について説明する。例えば、柱b:800xD:700の断面で、2x3(XxY)-D13@100の場合を考えてみる。この場合、柱幅がX,Y方向で異なるの事、HOOP本数がX,Y方向で異なる事で、せん断補強筋比も加力方向で変わる点に注意する。

 

〇柱のせん断補強筋比(帯筋比)の算出(下図参照)

Pwx=2*127/700/100≒0.003628→0.3628%>0.2%:OK

Pwy=3*127/800/100≒0.004762→0.4762%>0.2%:OK

 

 

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柱断面と帯筋(HOOP)

 

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水平力の加力方向と有効な帯筋本数(X方向=2本、Y方向3本)

 

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断面図

 

 

水平力に対して有効な帯筋は、上図の塗りつぶしの鉄筋本数。つまりX方向は"2本"、Y方向は"3本"となる。また、断面図を見ると分かり易い。A-A断面図は長手方向(X方向)を切って手前から見た図。帯筋が外周に1本ずつと中央主筋に1本配筋してあるのが分かる。この中央主筋に巻き付いている帯筋を中子筋と呼ぶ。また、この断面図で表現されている帯筋は、Y方向水平加力時に効く帯筋である。反対に、B-B断面図で表現されている帯筋はX方向加力時に効く帯筋である。ちなみに、帯筋のピッチは100mm以下とする。

 

梁に対してもせん断補強筋比の計算方法は同じ。例えばb:300xD:600でSTP2-D10@200の梁のせん断補強筋比は、

Pw=2*71/300/200≒0.002366→0.2366%>0.2%:OK

となる。梁は柱のように加力方向を考えなくて良いので計算は簡単。

 

せん断補強筋比の上限値は?

せん断補強筋は、主筋に巻き付ける為、極端な話主筋本数分配筋する事ができる。でも実務では多くても6本程度とする事が多いかな。そんなせん断補強筋だが、鉄筋比の下限値0.2%は分かったが、上限値はあるのだろうか?答えは、ある。RC基準2010年版のP.151,P.152に記述がある。

 

①梁の長期許容せん断耐力について(RC基準2010年版P.151より)

"(中略)梁の長期せん断力は、長期荷重によるせん断ひび割れを許容する場合には、(15.2)式により算定して良い。"

 

QAL=bj{αfs+0.5wft(Pw-0.002)}…(15.2)

Pwの値が0.6%を超える場合は、0.6%として許容せん断力を計算する。

※Pw=梁のあばら筋比

 

②柱梁の短期許容せん断耐力について(RC基準2010年版P.151より)

"i)損傷制御のための梁、柱の短期許容せん断力は、(15.3)式による。"

 

QAs=bj{2/3αfs+0.5wft(Pw-0.002)}…(15.3)

Pwの値が1.2%を超える場合は、1.2%として許容せん断力を計算する。

※Pw=柱、梁のせん断補強筋比

 

③柱梁の終局許容せん断耐力について(RC基準2010年版P.152より)

"i)安全性確保のための許容せん断力は、梁が(15.5)式、柱が(15.6)式による。"

 

QA=bj{αfs+0.5wft(Pw-0.002)}…(15.5)

QA=bj{fs+0.5wft(Pw-0.002)}…(15.6)

 

Pwの値が1.2%を超える場合は、1.2%として許容せん断力を計算する。

※Pw=柱、梁のせん断補強筋比

 

上に書いたことをまとめると、

①梁の長期許容せん断耐力算出時のあばら筋比の上限値は0.6%とする。

②柱梁の短期許容せん断耐力算出時の帯筋、あばら筋比の上限値は1.2%とする。

③柱梁の終局許容せん断耐力算出時の帯筋、あばら筋比の上限値は1.2%とする。(短期と同じ)

要は、"上限値以上にせん断補強筋を配筋しても、せん断耐力に寄与しない"という事である。極端に設計応力が大きくてせん断補強筋が増える場合は、高強度せん断補強筋の採用を考えるなどが必要となる。

 

今回は、せん断補強筋比の下限値と上限値について考えました。

ではまた。