壁部材の構造規定について②

どうもimotodaikonです。

今回も壁部材の構造規定について。

壁部材の構造規定について①は以下参照ください。

 

imotodaikon.hatenablog.com

 

 

 

壁部材の構造規定11条

〇壁部材の構造規定

(1)壁板の厚さは、原則として120mm以上かつ壁板の内法高さの1/30以上とする。

(2)壁板のせん断補強筋比は、直行する各方向に関してそれぞれ0.0025以上とする。

(3)壁板の厚さが200mm以上の場合は、壁筋を複筋配置とする。

(4)壁筋は、D10以上の異形鉄筋を用いる。見付面に対する壁筋の間隔は300mm以下とする。ただし、千鳥状に複配筋とする場合は、片面の壁筋の間隔は450mm以下とする。

(5)開口周囲および壁端部の補強筋は、D13以上(複配筋の場合は2-D13以上)の異形鉄筋を用いる。

(6)壁筋は開口周囲および壁端部での定着が有効な配筋詳細とする。

(7)柱型拘束域および梁型拘束域の主筋は、13条5項(2)~(5)および14条4項(2)~(4)の規定に従う。特に検討をしない場合、梁型拘束域の主筋全断面積は、本条6項の検討により必要とされる梁型拘束域の断面積の0.008倍以上とする。

(8)柱型拘束域および梁型拘束域のせん断補強筋は、15条2項(4)に従う。

(9)開口に近接する柱(開口端から柱端までの距離が300mm未満)のせん断補強筋比は原則として0.004以上とする。

(10)柱付き壁(そで壁付き柱)では、柱のせん断補強筋比は原則として0.003以上とする。

(11)軸力を負担させる(c)柱なし壁(壁板)では、上記(1)~(6)のほか、原則として壁筋を副配筋とする。

 

(2010年版鉄筋コンクリート構造計算基準・同解説(以後RC基準)」P.279より)

 

今回は(5)~(7)までを考えたい。

 

(5)開口周囲および壁端部の補強筋は、D13以上(複配筋の場合は2-D13以上)の異形鉄筋を用いる。

開口隅角部には応力が集中すること。また、開口周囲はひび割れの発生や中性化の進行の可能性も高いことなどを考慮して、開口縁の縦横および斜め補強筋はD13以上の異形鉄筋を配筋することにしている。(中略) 開口隅角部の斜め補強筋は、斜め引き裂きひび割れの進展を最も有効に抑制できる補強筋ではあるが、開口隅角部には補強筋が錯綜し、コンクリートの充填性に問題が生じる場合も多い。斜め補強筋の配置にあたっては、かぶりや鉄筋間隔など壁厚内での配筋納まりを検討した上で補強筋の配置方法や補強筋径を決定する。(RC基準2010年版P.323より)」

 

RC基準には上記の文章が記載されている。重要なのは、以下の3点である。

①開口補強筋の役割は、開口部への応力集中によるひび割れ防止である。

②開口補強筋は縦・横・斜めに関わらず、D13以上かつ壁筋と同径以上の異形鉄筋を用いる事。

③開口補強筋は、壁筋(縦横筋)の中に配筋する為、施工時にかぶりが確保できるよう配慮する事。

 

②より、開口補強筋径は最低D13の異形鉄筋と規定されているので、壁厚、縦横筋の鉄筋径と相談して必要に応じて壁厚の調整等を行う必要がある。また、覚えておきたいのが、開口周囲は応力が集中しやすいこと開口があるという事は、壁に欠損があるという事なので本来構造上好ましいものではない。しかし、開口がない建物は建てられないので、開口周囲には有効な開口補強筋を配筋して、開口周囲に生じる応力に抵抗する必要がある。

ちなみに、開口周囲に生じる「付加斜張力Tdは、必ずしも斜め補強筋のみによって負担される必要はない。」とRC基準(P.312)に明記されている。よって、斜め補強筋でなく、縦・横筋で斜引力に抵抗させる設計としてもよい。

 

(6)壁筋は開口周囲および壁端部での定着が有効な配筋詳細とする。

壁筋は有効に定着し、規定の定着長を確保する事。これは壁に限定する事ではなく、梁筋も柱筋についても同様。鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説書を参考に定着長等の確認を行うと良い。(標準図にも大抵書いてある)

 

(7)柱型拘束域および梁型拘束域の主筋は、13条5項(2)~(5)および14条4項(2)~(4)の規定に従う。特に検討をしない場合、梁型拘束域の主筋全断面積は、本条6項の検討により必要とされる梁型拘束域の断面積の0.008倍以上とする。

13条5項(2)~(5)、14条4項(2)~(4)の条文を以下に示す。

 

・13条5項(RC基準P.121より)

(2)主要な梁は、全スパンにわたり複筋梁とする。ただし、軽量コンクリートを用いた梁の圧縮鉄筋断面積は、所要引張鉄筋断面積の0.4倍以上とする。

(3)(梁の)主筋はD13以上の異形鉄筋とする。

(4)(梁の)主筋のあきは、25mm以上、かつ異形鉄筋の径(呼び名の数値mm)の1.5倍以上とする。

(5)(梁の)主筋の配置は、特別の場合を除き、2段以下とする。

 

・14条4項(RC基準P.134より)

(2)(柱の)コンクリート全断面積に対する主筋全断面積の割合は、0.8%以上とする。ただし、コンクリートの断面積を必要以上に増大した場合には、この値を減少させることができる。

(3)(柱の)主筋は、D13以上の異形鉄筋を4本以上配置する。

(4)(柱の)主筋のあきは、25mm以上mかつ、異形鉄筋の径(呼び名の数値mm)の1.5倍以上とする。

 

上記の条文を一つずつ見ていく。

まず、13条は梁に関する規定である事が分かる。

 

まず(2)について

(2)の内容だが、【梁は全長にわたり複筋配筋とする事】と明記されている。梁には単筋梁複筋梁という2パターンがある。ただ、おそらく実務で単筋梁とする事はまずない。何故ならメリットがないから。ちなみにそれぞれの定義を説明しておくと、

単筋梁というのは、上端筋もしくは下端筋のみに主筋を配筋した梁の事である。

複筋梁というのは、上端筋、下端筋両方に主筋を配筋した梁の事である。

鉄筋を通しているという事は、ひび割れ防止上も有効だし、梁の耐力に寄与する事はイメージできると思う。私は単筋梁として設計した事は今までないので、単筋梁とする意味が正直分からない。我々が普段設計する梁は、構造上主要な部材に該当するはずなので、複筋梁として設計しておけばまず問題はないと考えてよい。

 

そして、【軽量コンクリートとした場合は、梁の圧縮鉄筋断面積は、所要引張鉄筋断面積の0.4倍以上とする】とされている。

例えば、引張鉄筋として5-D25必要な梁があったとしたら、圧縮側の必要鉄筋断面積は、at=5*507mm2*0.4=1014mm2→2-D25(1014mm2)以上必要という事になる。

 

・(3)について

ここでは主筋径の制限についての規定値が示されている。主筋径はD13以上の異形鉄筋を用いる事。文言通り。 

 

・(4)について

 主筋のあきは、次の3つの規定を満足する事。

①25mm以上

②粗骨材最大寸法の1.25倍以上

③主筋の呼び径の1.5倍以上

 

粗骨材最大寸法を25mmとすれば、①はすでに満たしてしまっているので、決定要因は①か②のどちらかになる。鉄筋径がD19までは②で、D22以上は③により決定する。

例)

・使用鉄筋がD19の時の必要鉄筋間の空き寸法

②より25x1.25=31.25mm>③より19x1.5=28.5mm

よって②により決定

・使用鉄筋がD22の時の必要鉄筋間の空き寸法

②より25x1.25=31.25mm<③より22x1.5=33mm

よって③により決定

  

           

        f:id:imotodaikon:20220219002539j:plain

 
鉄筋間のあき

・(5)について

梁主筋は基本的に2段筋までとする。しかし、基礎梁は3段筋にする事もある。RC基準にはただし書きで以下のように記述されている。

 

「主筋の配置は、基本的に2段以下とした。しかし、基礎梁などのように多量の主筋量が必要であるにもかかわらず断面幅が小さい場合には、主筋は3段筋以上の配筋となることがある。こうした場合でも、多段配筋の影響が必ずしも明らかでないため、できるだけ段数を減らして主筋配置を行うことが好ましい。(RC基準P.131より)」

という事は、基礎梁も基本的に2段筋までにした方が良いという事か。確かに3段筋になると梁端部での納まりも気になるし(定着長の確保や直行梁との主筋の干渉等)、多段配筋の影響が不明確と言われると2段筋までに抑える方が無難かな。

 

次に14条について見ていく。こちらは柱についての内容となっている。

 

・(2)について

柱主筋は、コンクリート全断面積に対して0.8%以上配筋する事。最小鉄筋比に関する内容である。

例えば下図のような柱断面があったとする。

 

           f:id:imotodaikon:20210821211905j:plain

主筋が12-D25の時

この柱には主筋が12本配筋されている。主筋径をD25とすると、

Pt=12x507mm2/(750mmx750mm)≒0.011→1.1%>0.8% :OK

となる。

 

・(3)について

梁と同じく、主筋は呼び径D13以上の異形鉄筋を用いる事とし、主筋本数は4本以上配筋する事。

 

・(4)について

鉄筋の空きについての条文。考え方は梁と同じ。

 

以上が梁・柱に関する規定である。これらを満たし、かつ、特に検討をしない場合、梁型拘束域の主筋全断面積は、本条6項の検討により必要とされる梁型拘束域の断面積の0.008倍以上とする必要がある。

 

壁部材の算定_6項の規定とは?

6項の規定内内容を以下に示す。

「耐震壁あるいは柱付き壁の一部となる柱または柱型拘束域で軸力負担を計画する場合は、設計用応力に対して必要な断面を確保するとともに柱に対する配筋規定を満足させる。連層耐震壁の最上階および最下階となる梁または梁型拘束域は十分な剛性と強度を確保する。また、境界部材との応力伝達と境界部材からの鉄筋の定着詳細について必要な検討をする。」

 

この6項には、梁型の必要最低断面が定められている。詳しい内容は別記事にするが、今回覚えておきたいことは、柱型拘束域と梁型拘束域の意味と、梁主筋の規定値を満足させる必要がある事である。

 

柱型拘束域と梁型拘束域

柱型拘束域、梁型拘束域とは何かを下図に示す。

 

  f:id:imotodaikon:20210821221540j:plain

柱と梁の拘束域

 

柱型、梁型拘束域とは、耐震壁周りの耐震壁を拘束している部材(領域)の事を言う。上図で言うならば、耐震壁左右の柱及び、耐震壁上下の梁がそれにあたる。これらの部材がしっかりしていなければ、耐震壁はその効果を発揮できない。

例えば1階レベルの梁、つまり基礎梁断面が過度に小さく貧弱だと、地震時に耐震壁が負担したせん断力を基礎に伝達する前に破壊してしまう。耐震壁が力を発揮するためには、耐震壁周囲が十分に固定されている事が重要である。よって、耐震壁周囲に配置される柱梁は十分剛強な断面とする必要がある。

 

また、梁主筋の規定値も定められている。それが、梁型拘束域の主筋全断面積は、本条6項の検討により必要とされる梁型拘束域の断面積の0.008倍以上とする必要がある。というもの。

考え方は柱の鉄筋比を求めるのと同じで、梁主筋比が断面の0.8%以上になるように配筋すればよい。電算では、耐震壁周囲の梁の計算は行わないので、鉄筋比を満足している事を確認する癖をつける事が重要である。

 

今回は壁部材の構造規定について考えました。

ではまた。