杭基礎のねじり応力について考える

どうもimotodaikonです。

今回は、杭基礎のねじり応力について考えます。

 

杭基礎に生じるねじり応力

杭基礎、特に2本杭の場合はねじり応力の検討が必要になる。例えば下図のような2本杭の場合を考えてみる。

尚、下図は

大阪府構造計算適合性判定詩的事例集-よくある指摘事例とその解説-2021年版」より

引用したものである。

 

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2本杭とねじり応力
 

 

www.pref.osaka.lg.jp

 

大阪府構造計算適合性判定指摘事例集-HP(無料公開されてます)

 

 

上図では、X,Y両方向に基礎梁が取り付いているが、手前側の杭は基礎梁に干渉していない(基礎梁から離れている)ので、X方向基礎梁に杭頭応力を伝達するには、基礎フーチングのねじり耐力に期待する必要がある。杭頭曲げにより生じるねじりモーメントは、決して小さなものではないので、フーチングの成が取れない場合は配筋を増やして対応する必要がある。基礎のねじりモーメントに対する検討には、直行方向の主筋(軸筋)と、腹筋(軸筋)、ねじり応力方向の主筋(あばら筋)それぞれの耐力を考慮する。

特にあばら筋に該当する主筋は、閉鎖型(スターラップ形状)とする必要がある点に注意が必要である。

 

尚、上図のY方向基礎梁への応力伝達には、フーチングのねじり耐力に期待する必要はないと考えられる。基礎梁芯の軸上に杭が並んでいるので、杭頭曲げは問題なく基礎梁に伝達できる。

 

1本杭でもねじり応力を考慮する場合がある

今回考えたいのは、1本打ちの杭基礎でもねじり応力を考慮すべきパターンがあるという事である。柱芯=杭芯となっていれば特段ねじり応力など気にする必要はない。ただ、敷地境界との離隔確保や、既存棟との基礎の接触を避ける為、やむを得ず杭偏心させる場合がある。このような場合、直行する基礎梁芯と杭芯との間に偏心距離eが生じる為、偏心距離に応じてねじり応力を算出し、フーチング断面及び配筋の検討を行う必要がある。では実際に検討を行ってみよう。

 

 

杭基礎(1本杭)のねじり応力検討

では、下図のような杭基礎を仮定してねじり応力の検討を行ってみよう。

 

 

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1.伏図

 

 

 

 

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2.基礎リスト

 

上図では、Y方向は柱芯=杭芯となっているものの、X方向は柱芯と杭芯がズレている。敷地境界線までの距離を確保する為、X方向は全偏心させた杭基礎だ。この場合、Y方向に地震力が作用した際、杭頭曲げを"FG11"に伝達させたいが、杭芯と柱芯(正確には基礎梁)との間に距離があるため、距離比に応じたねじり応力をフーチングで負担する必要がある。ねじり応力に対する検討方法については、RC基準に記載されている(2010年版、2018年版どちらも)ので、同基準に準じて設計を行ってみよう。

 

尚、フーチングに生じるねじり応力はY方向に作用するので、Y方向主筋をあばら筋(スターラップ形状)にする必要がある。あばら筋は、40d以上の重ね継ぎ手形状とする事が多い。断面によって主筋形状が異なるので、下記にX,Y方向の主筋の断面形状を示す。

 

 

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A-A断面

 

 

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B-B断面

 

 

 

1.ねじり補強筋の算定方法概要

 

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大阪府構造計算適合性判定指摘事例集より引用

 

 

上記の内容はRC基準より抜粋したものである。内容は大梁となっているが、フーチングと読み替えてねじり応力に対して必要となる軸筋(主筋、腹筋)及び、あばら筋の算定を行う。

 

 

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杭と柱の干渉500mm、杭の柱からの突出長900mm

 

 

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軸筋10-D22@200、腹筋3-D19、あばら筋10-D22@200(スターラップ形状)

 

 

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フーチングのねじり検討

 

 

上の伏図と基礎リストが今回の設計する基礎の断面、配筋を表したもの。また、上の一覧表はねじり応力の算出から必要鉄筋の計算まで行ったものである。上から順に説明していく。

 

1.基礎の条件まとめ

まず、基礎の条件をまとめる。

・基礎幅及び長さはBxL=2,000mmx2,000mmとした。今回杭径φ1400と仮定し、ヘリあき(杭面~フーチング面までの距離)を上下左右+300mmとして、1,400+300+300=2,000mmとした形だ。要するに杭径でフーチングサイズを決定したことになる。

 

・フーチングの成Dは1,500mm。これは杭の飲込み長100mm、杭頭~フーチング下端筋までのかぶり厚=100mm、フーチングの上面~フーチング上端筋までのかぶり厚=100mm、あとは杭頭補強筋D29と仮定して40d=29x40=1,160mm。合計100+100+100+1160=1,460mm。切り上げて1,500mmとした。

 

・フーチングを梁と仮定して、有効成を求めると、d=1,500-100*3=1,200mm。100mmは上で書いたフーチングの上面及び杭頭からの上端筋、下端筋(芯)までの寸法だ。

 

・jはd*0.875より1,050mm。

 

・dtはフーチング面からフーチング主筋芯までの距離。(図2.基礎リスト参照)余力を見て100mmとした。RC基準には、基礎のような土に接する部分の鉄筋の設計かぶり厚は70mmと記載されている。70mmだと半端なので、計算を簡単にするため100mmにした。

 

・コンクリート強度はFc=30N/mm2。今回は地震時(短期荷重時)を想定しているので、許容せん断応力度fs=min(1/30*Fc,0.49+1/100Fc)*1.5=1.185N/mm2となる。

 

 

2.杭頭応力のまとめ

順序が逆になるが、先に杭頭応力のまとめを行う。

・杭頭曲げモーメントMo=2,000kNmとし、杭頭に作用するせん断力Q=600kNとしている。ここに杭頭~基礎梁芯までの距離が分かればねじりモーメントが算出できる。今回は基礎梁天端=フーチング天端、基礎成=1,200mmとし、杭頭~基礎梁芯までの寸法h=D-基礎梁成/2-杭の飲込み長=1,500-1,200/2-100=800mm。

 

・杭頭曲げによりフーチングに生じるねじりモーメントは、最終的に直行する基礎梁へ伝達するので、杭頭~フーチング芯までではなく基礎梁芯までの距離を採用するべきかと思う。

 

・以上より、フーチングに作用するねじりモーメントを算出すると、T=Mo+Q*h=2 ,000+600*0.8=2,480kNm。ただ、この値は上の表よりT=1,594.6kNmと異なっている。この点については、今回X方向の全偏心基礎と言えど、多少、杭と柱は干渉している。杭と柱が完全に離れている(一切干渉していない)なら、2480kNmのねじりモーメントを考慮すべきかもしれないが、柱との干渉は500mm、柱から外れている分は900mmなので、低減率としてα=900/1400≒0.643を考慮した。よって設計T=2,480kNm*0.643≒1594.6kNmとした。

 

3.ねじり応力に対する検討

・次にねじり応力に対する検討(フーチング断面の変更の要不要の確認)を行う。この検討に設計配筋は関係ないので、配筋を決定する前に計算できる。計算内容としては、フーチング主筋で囲まれた部分の"有効断面積"、"主筋の周長"、そして"フーチングの幅と梁成の短辺方向bTと長辺方向DT"を用いて許容ねじりモーメントTaを算出する。

 

・Taは、よほどフーチング断面が小さくない限り設計ねじりモーメント以下になる事はないと考えられる。現に設計ねじりモーメントT=1594.6kNmに対し、許容ねじりモーメントTa=7,110kNm なので、4倍以上の余力がある。

 

・bo及びdoは、幅方向の主筋芯間隔と、成方向の主筋芯間隔を意味している。

 

・φoはあばら筋の周長。2*(bo+do)=2*(1,800+1,200)=6,000mm。

 

4-1.基礎配筋を決める(必要なあばら筋の断面積算出)

次に、基礎配筋を決めていく。

 

・主筋(軸筋)はD22の@200より10-D22、かつ上下筋を考慮してトータル20-D22とした。また腹筋(軸筋)もねじり耐力に考慮する。鉄筋径はD19とし、片側3本とした。これらは、基礎リストより、手前側に断面が見えている鉄筋の事だ。

 

・X方向の主筋(あばら筋)もD22@200とし、10-D22とした。

 

・Aoを求める。Aoは、"閉鎖型あばら筋の中心で囲まれているコンクリート核の断面積(bo*do)"である。よって、bo=1,800*do=1,200=2,160,000mm2。

 

・必要な閉鎖型あばら筋1本の断面積を計算する。各符号の内容は以下。

a1=T*x/(2*wft*Ao)

a1=ねじりモーメントに対して必要な閉鎖型あばら筋1本の断面積

x=閉鎖型あばら筋の間隔

Ao=閉鎖型あばら筋の中心で囲まれているコンクリート核の断面積(bo*do)

 

・上の内容を今回の設計内容に当てはめる。

T=1594.6kNm。x=200mm。Ao=2,160,000mm2。wft=345N/mm2(D22より)

よって、a1=T*x/(2*wft*Ao)=1594.6*10^6*200/(2*345*2,160,000)≒214mm2。これがあばら筋1本当たりに必要な断面積である。今回D22を使うので、at=387mm2>a1=214mm2よりOK。

 

4-2.基礎配筋を決める(必要な軸方向筋の断面積算出)

次は軸方向筋の計算。計算方法は以下。

 

・必要な軸方向筋の断面積の計算

as=T*φo/(2*sft*Ao)

as=ねじりモーメントに対して必要な軸方向筋全断面積

φo=閉鎖型あばら筋の中心で囲まれるコンクリート核の周長(2*(bo+do))

 

as=T*φo/(2*sft*Ao)=1594.6*10^6*6,000/(2*345*2,160,000mm)≒6418mm2。設計配筋は20-D22(at=20*387=7,740mm2)+6-D19(at=6*287=1,722mm2)=7,740+1,722=9,462mm2となる。必要配筋に対して設計配筋は約1.47倍。余力としては十分だろう。

 

という感じで杭基礎のねじり応力に対する検討を行いました。

 

不足分は随時更新します。

ではまた。