梁の最小引張鉄筋比と必要鉄筋量について

どうもimotodaikonです。

今回、梁の最小引張鉄筋比と必要鉄筋量について考えます。

柱の最小鉄筋比については以下参照ください。

 

 

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梁の最小引張鉄筋比とは?

梁の最小引張鉄筋比は、梁の断面bxdの0.4%以上とする。このことは、RC基準2010年版P.121及びP.130に記載してある。断面の0.4%なので計算は簡単である。

例えば、300x600の梁の最小引張鉄筋比を考えよう。

 

〇梁断面

b=300mm

D=600mm

dt=70mm

d=530mm

 

〇最小引張鉄筋量

at=bxdx0.004

  =300x600x0.004

  =720mm2→3-D19(at=861mm2):検定値0.84<1.0 OK

 

以上より、3-D19以上あれば0.4%は満足する事になる。

 

梁の最小引張鉄筋量の算出方法は2パターンある

実は、梁の最小引張鉄筋量の算出方法は2つある。そのうちの一つが上で書いた断面の0.4%以上を満足する事。もう一つは存在応力により必要とされる鉄筋量の4/3倍とする事である。これは、現実に0.4%の引張鉄筋量を配筋できない事を想定した緩和策で、どちらかを満足すれば問題ないのである。では存在応力の4/3倍の計算方法について考えよう。

 

存在応力とは?

まず存在応力の説明をしなければならない。存在応力というのは、ある部材に生じている応力の事を指す。普段、柱や梁、二次部材等の検討で行っているのは、存在応力に対しての検討である。これは鉄骨造でもRC造でも同じ。荷重と部材長を仮定して、その部材に生じる応力を算出して断面を決める。この何気ない作業は存在応力に対して行っているものである。

 

存在応力の4/3倍の規定は長期応力に対して検討する

では梁の必要鉄筋量を算出する際の規定、"存在応力による必要鉄筋量の4/3倍"の計算方法についてだが、難しく考える必要はなく、単純に部材に生じる曲げモーメントから求められる必要最小鉄筋量に4/3倍した鉄筋量を配筋すれば良い。ここで気を付けるのが、ここでいう存在応力は長期応力であるという点。この点に気を付けて実際に検討を行ってみよう。

例えば下記の条件を持つ梁の必要鉄筋量を求めるとする。

 

〇梁断面

b=300mm

D=600mm

ℓ=5,000mm

dt=70mm

d=530mm

j=436.75mm

 

〇使用鉄筋

D19(SD345)

ft=215N/mm2

 

〇荷重事項

等分布荷重w=10kN/m(梁自重含む)

 

〇断面算定

※梁は単純梁とする

M=wℓ^2/8

   =10*(5000/1000)^2/8

   =31.25kNm

at=M*10^6/(ft*j)*4/3

   =31.25*10^6/(215*436.75)*4/3

   ≒443.8mm2→3-D19(at=861mm2):検定値0.52<1.0 OK

 

実務では、検定値から逆算して必要鉄筋量を決める事が多い

上では長期存在応力に対する必要最小鉄筋量に対して、4/3倍した数値を梁の最小鉄筋量として計算した。計算は間違っていないし考え方は問題ない。ただ、実務ではもっと簡単に検定値の逆算から必要配筋を求める。どういう事かというと、検定値の許容値を1.0*3/4=0.75とすれば良い訳だ。これならいちいち必要鉄筋断面積を求める必要がないし、二次部材の検討は何かしらのソフトを使って計算するので、ソフトで求められた検定値に着目して鉄筋量の調整を行うだけで済む。

 

まとめ

梁主筋の最小鉄筋量の求め方は

①梁断面bxdの0.4%以上

②長期存在応力により求められる必要鉄筋量の4/3倍以上

の2つの検討方法がある。どちらかを満足すればよく、必要鉄筋量は②の方が少なくて済む。

 

今回は梁の必要最小鉄筋量について考えました。

ではまた。