連層耐震壁架構と支点の破壊

どうもimotodaikonです。

今回は、連層耐震壁架構と支点の破壊について考えます。

 

耐震壁架構とは?

耐震壁架構とは、地震力を耐震壁のせん断耐力で処理する事を目的とした架構の事である。特に日本は地震大国なので、RC構造の場合耐震壁を組み込んで設計する事が多い。何故なら、耐震壁の地震力に抵抗する力は非常に大きいからである。

 

連層耐震壁とは?

耐震壁の中でも、"連層耐震壁"というものを耳にしたことがある人も多いと思う。"連なる""層"と書いて"連層"。つまり、耐震壁を高さ方向に何層も配置したものの事を"連層耐震壁"と言う。構造設計においては、連層耐震壁で設計してある物件をよく見かける。

 

 

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連層耐震壁

 

上の図が連層耐震壁。耐震壁が2層にわたって配置してある。高い建物になると、もっと連続して設ける事もあるよ。

 

耐震壁架構にするメリット

耐震壁を用いるメリットは何か。それは上でも書いた通り、耐震壁のせん断耐力が大きく、地震力を負担してくれるという事にある。耐震壁は鉄骨造でいうブレースと同じ役割を持っており、建物をより剛強にするだけの剛性を持っている。言い換えれば、建物をガチガチに固めて地震力に抵抗させるという事。

 

耐震壁架構を設計する点での注意点

耐震壁架構とする上で注意すべき点は何だろうか。それが今回の本題である、"支点の浮き上がりと圧壊を無視する"という事である。黄色本2020年版にこの事についての記述がある。

 

「連層耐力壁は脚部の浮き上がりや沈み込みによる回転系の破壊形式となることがある。このような耐力壁では部材種別を定めることができないことから、脚部の浮き上がりや沈み込みを拘束し、Dsの算出を行う。このとき、保有水平耐力も浮き上がりを拘束した状態で計算することができる。」(2020年版建築物の構造関係技術解説書P.402より)

 

重要なのは"部材種別を定める事ができない"という一文。耐震壁の部材種別を定める前に脚部が破壊してしまうと耐震壁の適切な種別判定ができない。耐震壁は、地震力、すなわち大きなせん断力を負担する部材なので、せん断破壊する可能性が高い部材である。部材種別はDs時で決まるので、Ds時は浮き上がりと圧壊を無視して計算し、建物の崩壊系を確認したうえで部材ランクを決定する。そして、保有時は浮き上がりのみ拘束して計算してもよいという緩和措置が講じられている。

 

Ds時については、指定層間変形角(1/50)まで押し切ったときに、耐震壁がせん断破壊していなければOK。(せん断破壊しても、保有耐力を満足していれば問題ないとする考え方もあるが、普通せん断破壊は許容しない)

部材種別については別記事で紹介するが、もし支点の破壊を考慮せず耐震壁がせん断破壊する場合は、部材ランクをWD(最低ランク)として保有水平耐力の計算をする事になるので、場合によっては保有耐力が不足する場合がある。

 

耐震壁架構の特性を考慮して以上の結果をまとめると、

 

①耐震壁は高い剛性を持っている。よって、耐震壁を有する建物は変形しづらい性質を持っている。

②上記より、Ds時に指定層間変形に達するまでより大きな力を必要とする。(より大きな力まで耐えられる)

③指定層間変形角に達するまでに耐えられる力が大きいという事は、耐震壁の崩壊系を確認する前に脚部が破壊する可能性がある事を意味している。

④よって、耐震壁の崩壊系を確認するために、支点は破壊しないものとし、Dsの計算を行う必要がある。

 

せん断破壊というのは、脆性破壊の一種で、特に構造設計では忌み嫌われる破壊形式である。過去の地震被害から見ても、建物の倒壊に至る原因は、部材のせん断破壊によるものが非常に多かった。だから構造設計では、せん断破壊しない事に注意して計算を行う事を徹底するべきである。

 

今回は連層耐震壁架構と脚部の破壊について考えました。

ではまた。