RC小梁の設計_固定度考慮

どうもimotodaikonです。

今回は、RC小梁の設計において、端部固定度を考慮した計算を行います。

 

RC小梁の設計方法

RC小梁の設計方法は一般に2通りある。

①単純梁として設計する

②端部の固定度を考慮して設計する

構造設計の実務経験者は、基本的に①で設計した結果を計算書に添付すると思う。ただ、②の設計方法が間違っているというわけではない。それぞれの解法にはそれぞれのメリットがある。場合によっての使い分けが重要である。

 

①RC小梁を単純梁として設計するメリット

①の単純梁で設計する方針によるメリットは、計算が単純になるという事である。単純梁なので、中央曲げモーメントに対して必要な鉄筋量を計算すれば終わりなので非常にシンプルである。中央曲げモーメントはMo=wℓ^2/8(等分布)、集中荷重の場合Mo=Pℓ/4(中央荷重)この計算式さえ覚えておけば大体の梁は設計できる。

 

②RC小梁の端部固定度を考慮して設計するメリット

②の端部固定度を考慮して計算するメリットは、中央の曲げモーメントが小さくなる事、変位量が小さくなる事である。RC梁は、S小梁と違い端部に固定度があるため、考慮して検討する事に問題はない。固定度を考慮した場合の各部の曲げモーメントは、

<単スパン>端部:0.6C、中央:Mo-0.35C

<2スパン> 外端部:0.6C、中央:Mo-0.65C、内端部:1.3C

 

による。これはRC基準にも載っているし、どんな参考書にも記載されている。ちなみに2スパンを超える多スパンの場合、内端部M=1.2C、中央M=Mo-0.65C(1スパン目)、Mo-0.75C(2スパン目)となるが、計算が煩雑になるため今回の記事では扱わない。

 

1.端部固定度を考慮した場合の計算例(単スパン)

まず、1本部材の場合を想定して、端部固定度を考慮した計算を行ってみたい。

設計条件は以下とする。

〇設計条件

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設計条件

小梁断面は300*600を仮定した。固定荷重は6.4kN/m2+梁自重。

 

〇設計応力の算出

次に設計応力の算出を行う。単スパン梁の設計曲げモーメントは、上述の通り、端部M=0.6C、中央M=Mo-0.35Cにて計算する。その為には、まず単純梁の時の中央曲げモーメントMoと、固定端の時の端部曲げモーメントCを算出する必要がある。

 

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単純梁の中央Moと固定端の端部C

その段階を経てから設計応力を計算する。

 

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M図と設計曲げモーメントの算出

設計曲げモーメントは、端部が41.4kNm、中央が79.35kNmと求められた。主筋径をD16とし、必要鉄筋量の算出を行う。

〇断面算定(必要鉄筋本数の算出)

 

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必要鉄筋量の算出

必要鉄筋量は、お馴染みのat=M/ftjにて求める。結果、端部が3-D16、中央が5-D16と求められた。検定値が0.85以下になっているので、問題なさそう。(dtを50mmと仮定しているが、2段筋の場合それ以上になる事が考えられるので、かつかつの設計は避けた方が良い。あくまで手計算の場合)

 

2.端部固定度を考慮した場合の計算例(2スパン)

次に2スパン梁の設計を行ってみたい。計算の要領は1スパンと同じ。ただし、スパンはℓ1=ℓ2=5.0mとする。設計荷重や梁断面は単スパンと同じとする。

〇設計条件

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設計条件(違うのは2スパン目の長さを指定したことだけ)

〇設計応力の算出

次に設計応力の算出を行う。2スパン梁の設計曲げモーメントは、上述の通り、端部M=0.6C、中央M=Mo-0.65C、内端部M=1.3Cにて計算する。CとMは荷重条件と部材長が同じ為、単スパン梁の値をそのまま用いる。

 

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M図と設計曲げモーメントの算出

M図を見てもらえば分かる通り、連梁は中間の支点位置で応力が大きく跳ね上がる。事実、内端部Mは1.3Cなので、固定端Mの1.3倍のMが生じている事が分かる。それにつられて中央部のMも単スパンの時はMo-0.35Cだったのが、Mo-0.65Cと、マイナスする値が大きくなっている為、中央曲げは小さくなり、変形量も抑えられることが想像できる。

〇断面算定(必要鉄筋本数の算出)

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必要鉄筋量の算出

単スパンと結果を比較してみる。外端部は0.6Cで応力の変動なしの為、配筋も同じ。中央部の応力は連梁の方が小さくなるため、5本→4本に落とす事が出来た。実質応力が4/5=0.8倍になったと考えられる。これは大きい。ただ、内端部の応力がきつい。5本で検定値0.96はほぼアウト。安全に6本とするのが無難かな。1本増やせば検定値が0.8程度になるので。

 

最後に

梁端部の固定度を見る見ないは設計者の自由。理屈が通っていれば問題ない。だが、そもそもRC梁で単純梁なんてあるはずがない。固定度がないなんてどう考えてもおかしい。これは鉄骨梁についてもそう。鉄骨造小梁の端部はボルト接合とする為、RCに比べて固定度が小さい事はイメージできるが、固定度が0とは思えない。普通ボルトならまだしも、高力ボルトを使うのが一般的な現代建築において、端部の固定度はないと考えるのはあまりに安易だと思う。ただ、鉄骨小梁は単純梁で設計しておけば確実である。全スパン通して同じ断面なわけなので。(どこを切っても断面性能は同じ)RC梁は単純梁で設計するとしても、端部の配筋は余裕をもって設計するべきである。

 

今回はRC小梁の固定度考慮Verの設計について考えました。

ではまた。