鉄筋コンクリート造_RCスラブとは・設計方法について

どうもimotodaikonです。

今回はRCスラブの設計について考えます。

 

スラブとは

まず、スラブの意味から。

スラブ(slab)を和訳すると、"石などの四角く幅の広い厚板"となります。

つまりRCスラブとは、RCでできた厚板→RCでできた床のことです。

 

スラブ面積の基準

RCスラブ面積は25m2以内を目安に設計することが多いです。RC基準には、「床スラブの内法面積が25m2程度を超える場合には、たわみ、ひび割れ、振動について慎重な検討が望まれる(RC基準2010 P.262より)」と明記されているので、極力この値を守るのが望ましいのでしょう。といっても設計上25m2を超えることなどザラなので、あくまで目安として考えてよいと思います。

 

スラブってどのくらいの厚さにするの

一概に言えませんが、一般的な住宅の設計では各階のスラブ厚を150mm~180mm程度で設計することが多いです。ピットスラブの場合は200mm以上になることもあります。

 

スラブには板厚の制限値がある

RCスラブの設計で無視することのできないルールの一つに、板厚の制限値があります。スラブが大きくなる程、必要板厚も厚くなります。板厚を厚くしすぎないよう、適宜梁で区切る配慮が必要です。また、板厚の必要最低厚は後述の計算式による値かつ80mm以上とする必要があります。この点にも注意が必要です。

 

スラブの設計

ここからは実際にスラブの設計をやってみましょう。スラブはスラブでも、支持方法によって設計方法は異なります。一般にスラブと言えば、四辺を梁で囲まれたスラブを指します。このスラブ形式を四辺固定版といいます。ここでは四辺固定版の設計を行います。

 

スラブの設計規定一覧

スラブの設計を行う上での各種規定について以下にまとめました。

これらの規定を満たしつつ、スラブ厚、配筋を決定していきます。なお、今回想定するのは普通コンクリートです。配筋規定は普通コンクリート欄を参照ください。

 

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1.仮定荷重の算出

では、荷重を設定します。仕上げは簡便のため1000N/m2+天井200N/m2、用途は居室とし積載荷重を設定します。荷重は長期荷重とします。

 

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2.スラブ厚・スラブスパン長の仮定

スラブ厚は一般的なt=180mmとしました。スパンは短辺方向ℓx=3000mm、長辺方向ℓy=5000mmとします。

 

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3.スラブ配筋の仮定

配筋は主筋方向(短辺方向)をD10D13@200、その他をD10@200とします。ちなみにD10D13とは、D10とD13を交互に配筋することです。交互配筋とすることは多々あります。他のパターンにはD13D16やD16D19などがあります。

鉄筋比は、単位m当たりの鉄筋比として計算しています。計算方法は、Pt=at/1000mm/dによります。

また、短辺方向の配筋を主筋 、長辺方向の配筋を配力筋と言います。

 

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4.コンクリート強度の仮定

コンクリート強度Fc=21N/mm2とします。ヤング係数Eはコンクリート強度Fcによって決定します。鋼材のように一定値ではない点に注意が必要です。

 

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5.その他諸条件の確認

その他の条件をまとめます。かぶり厚は40mmとしました。設計かぶり厚は規定があるのですが、床スラブ(地面に接しない)のかぶりは40mm取っておけばOKです。dtはかぶり+20mmとしています。本来鉄筋径によって変動しますが、ここも簡便のため+20mmとしました。

 

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6.許容曲げモーメントの算出

配筋とdtが決まったので許容曲げモーメントを算出します。Ma=at・ft・jで求めます。

 

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7.設計応力の算出

設計応力の算出を行います。設計応力は、下記の通り、短辺の端部、短辺の中央部、長辺の端部、長辺の中央部の順に大きくなります。頭についている係数を見ればわかりますね。それぞれ6の倍数分の1倍となります。

 

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負曲げモーメントとは、部材の上側に生じるモーメント、正曲げモーメントは部材の下側に生じるモーメントです。応力図を描くとわかりやすいですね。四辺固定版の応力図は以下のようになります。

 

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8.断面算定

条件が出そろったので断面算定を行います。単純にMとMaの比較で検定値を求めます。

検討結果は短辺、長辺ともにOKです。

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9.スラブ厚の確認

初めに板厚の制限値があると書きましたが、ここでは板厚の制限値を満たしているかの確認を行います。計算式も含めて確認してください。

 

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Wpは設計荷重からスラブ自重を差し引いた値の事です。上記の計算により、必要板厚は87mm、それに対し設計板厚が180mmなので条件を満たしています。よって板厚の設定に問題ありません。

 

10.たわみの計算

最後にたわみ計算を行います。たわみ角の制限値は1/250とし、変形量は20mm未満とします。

補足ですが、「各国の床スラブに対するたわみ制限値は、構法上あるいは数値決定に対する根拠などには多少の際はあるとしても、総体的には短辺有効スパン長さℓxに対し、1/200~1/500となっている」とRC基準に記載されています。また、変形量については20mmを超えない範囲で設計することが望ましいです。これは梁についても言えることで、基本的にたわみ量δ=20mm以内に抑えるのが一般的です。

 

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たわみ計算により、変位量約2.5mm、たわみ角1/1205 と求められました。どちらも規定値を満たしている為OKです。なお、以前扱ったRC梁の変形増大係数は8でしたが、スラブの変形増大係数は16である点に注意してください。

 

今回はRCスラブについて触れました。

我々の生活に欠かせない床には様々な規定があり、安全に設計することが望まれます。

 

それでは今回はこの辺で。

ではまた。