どうもimotodaikonです。
今回は鉄骨造における間柱について触れたいと思います。
間柱とは
間柱とは、外壁を受けるために主柱間に配置する柱のことです。
下図を見てください。
このように主柱(C)間に配置します。建物の外部に面し、外壁が取り付くので外壁の重量を受け、風荷重も同時に受けることになります。
負担荷重は外壁重量と風荷重
上でも書きましたが、一般的な間柱の設計をする上で考慮すべき荷重は外壁重量と風荷重です。外壁重量は、仕上げ材に何を用いるか、間柱の部材長、間柱の負担幅といった要素で決まります。
風荷重は建設地の基準風速と風力係数、間柱の負担幅によって決まります。
補足1:基準風速Voとは
ここでは簡単に触れますが、基準風速とは、地域ごとに定められている風速の事で、Vo=30m/s~46m/sまでの数値を取ります。一般に台風が頻繁に訪れる沖縄や九州では基準風速が大きくなります。最大値はVo=46m/sで、沖縄県では一律この値とします。
補足2:風力係数Cfとは
風力係数とは、風の方向や建物形状、建物のどこに風が作用するか、吹上か吹き下げか、閉鎖型か開放型か等の条件によって異なる係数の事です。閉鎖型建物(工場や倉庫のようなシャッターがなく、外部から大量の風が内部に入ることがない建物の事)の場合、風力係数はCf=1.0で計算することが多いです。
間柱の検討
ここでは実際に間柱の検討を行ってみたいと思います。
1.使用部材
まずは使用部材の選定から。比較的間柱でもよく使うH鋼_中幅のH-194x150と仮定します。向きは強軸とします。
2.鉄骨材質及び断面性能
鉄骨材質はSS400、断面性能は以下に示す通りです。
3.仮定荷重の設定
続いて仮定荷重の設定を行います。仕上げ材は鋼板の縦張として、仕上げ材と間柱との間に胴縁を使用します。この胴縁は横方向に架けます。また、胴縁の断面はCチャン(正式名称はリップ溝形鋼。実務ではCチャンCチャン言います。)のC-100x50x20x2.3とか3.2の@450~900程度が多いでしょうか。
4.風荷重の設定
次は風荷重の設定です。風力係数は先にも述べましたが、Cf=1.0としています。Cfには計算式があり、Cf=Cpe-Cpiで求めます。Cpeは"外圧係数"、Cpiは"内圧係数"と言い、簡単に言うと外圧係数は外から壁を押す力、反対に内圧係数は内側から壁を押す力の事です。厳密に言えば壁に限らず、屋根だったり、庇だったりするのですが、細かな説明は今後記事にしたいと思います。今回は閉鎖型物件を想定しており、風上側(風が直接間柱にぶつかってくる方向の事)の間柱の設計のため、Cf=1.0としておけば問題ないでしょう。
また、速度圧は1200N/m2としました。ここも実際には途中に計算式があります。が、今回は端折っています。(面倒くさいので。おっと)これも風力係数同様今後記事にしたいと思っています。
5.部材の設計条件
部材の設計条件ですが、以下のようにまとめました。
部材長は5000mm、座屈止めがないものとしてℓb、ℓkx、ℓky=5000mmとしています。ちなみに座屈止めとは、部材(ここでは間柱のこと)のどこかしらに設ける拘束材の事で、役割は部材の耐力の向上です。後の計算式を見てもらえばわかりますが、ℓbが小さくなれば、曲げ座屈耐力が、ℓkが小さくなれば圧縮耐力がそれぞれ向上することになります。鉄骨というのは厄介なもので、本来であれば"基準強度F"の値を圧縮耐力にしろ、曲げ耐力にしろ発揮できるはずなのです。ですが、座屈という特異な現象により、本来の耐力を発揮できない場合が多いのです。なので、部材長が長くなる場合には、適宜座屈止めを設けて、極力座屈による耐力の低減を抑えるよう設計します。
6.モデル図・荷重図(反力図)
モデル図と荷重図は以下の通り。
荷重形式は、外壁の重量は集中荷重として、"N"で表現します。これは長期荷重に当たります。また、風荷重は等分布荷重として、部材一様にかかるものとしています。風荷重は常時吹き付けるものではないため、短期荷重として扱います。
7.荷重の算出
壁荷重、風荷重が出そろったので、荷重の算出を行います。
Wwは風力係数*速度圧*負担幅で求まりますね。軸力Nについては、外壁重量x部材長x負担幅+鉄骨自重です。
8.反力の計算
反力の計算も行っておきましょう。支点反力は接合部の設計に必要です。
それぞれ、鉛直荷重Nと等分布荷重Wwを1/2した値が、上下の支点に作用する力となります。
9.許容応力度の算出
では、許容応力度の算出です。
①許容曲げ応力度
以前も鉄骨小梁の設計で上式を用いましたね。今回も同様です。ただ、今回短期荷重に対する設計になるので、fbA、fbBの値を1.5倍してどちらか最大値を取ります。なお、基準強度F以下であることが条件です。その点に注意です。
②許容圧縮応力度
続いて許容圧縮応力度の算出です。許容圧縮応力度には、λc=細長比というものを用います。ℓkを断面二次半径iyで除した値を用いて計算します。細長比が大きいほど座屈しやすい部材と考えてよいです。弱軸方向の断面二次半径iyを用いるのは、単純に細長比が大きくなるからです。(つまり不利側→安全な側の設計になる)ただ、座屈止めの有無によっては細長比がixで決まることもあるので注意が必要です。
また、細長比には規定値があり、"柱材として用いる部材はλ<200"、"その他の部材はλ<250"とするよう鋼構造設計指針に明記されています。
今回は間柱なので、柱材に該当します。λc<200なので規定値を満たしていますね。OKです。
③許容せん断耐力
母材(間柱)の許容せん断耐力の算出は簡単です。F/√3するだけ。長期の場合は*1/1.5を追加するだけです
④接合部耐力
接合部(ボルト)耐力の算出を行います。接合部のボルトは高力ボルトF10Tの2-M16、そして1面せん断なので、下表の耐力にボルト本数を乗じて長期・短期のボルト耐力を算出します。
RsL=n*30.2=2*30.2=60.4kN→長期
Rss=n*30.2*1.5=2*30.2*1.5=90.6kN→短期
10.断面算定
では断面算定を行います。まずは圧縮に対する検討から。
①圧縮に対する検討
検討内容はシンプルです。軸力Nを部材の断面積Aで除した値が圧縮応力度。その値を許容圧縮応力度fcで割れば検定値が求められます。結果0.04。余裕ですね。
②曲げモーメントに対する検討
次は曲げモーメントに対する検討。中央の曲げモーメントMo=wℓ^2/8で求められます。Moを断面係数Zで除せば曲げ応力度の算出が可能。あとはfbとの比較で検定値を求めます。結果0.34。意外と余力があります。
③せん断力に対する検討
せん断力は、上で計算した支点反力の値を用いています。せん断力をウェブの断面積Awで除した値が設計せん断力τ。τ/fs=0.10。これも余裕があります。
④組み合わせ応力に対する検討
ここでは組み合わせ応力に対する検討を行います。これは結構重要ですね。曲げ応力と圧縮応力を同時に受ける部材は、応力を組み合わせて検討する必要があります。検討内容は以下。
計算式は単純です。σc/fc+σb/fb<1.0であることを確かめる。単純に検定値の足し合わせです。結果0.37。余力としては十分すぎる程です。
⑤接合部の検討
接合部に対する検討を行います。注意点は、長期荷重と短期荷重(風)の加力方向が違うこと。長期荷重は鉛直方向の力ですが、短期荷重(風)は水平方向の力。それぞれの方向に対する検討を行った後、上の断面算定と同様に組み合わせに対してボルトがもっているか確認します。 計算は各応力を2乗し、√で囲んで行います。
組み合わせに対する検討結果は0.19となりました。ボルトもOKですね。
⑥たわみの検討
最後にたわみの検討です。たわみ角の制限値は1/300と考えてください。
計算は単純梁の時と一緒です。たわみ量約9mm、たわみ角約1/550と求められました。これに関しても問題ありません。
以上で設計終了です。
H-194x150でも持つことが確認できました。
今回はシンプルな間柱の設計について考えました。
いかがでしたか。座屈は鉄骨の設計には常について回ります。計算式含め覚えておくとよいと思います。
それでは今回はこの辺で。
ではまた。