柱梁接合部の必要帯筋比は0.2%か0.3%か?

どうもimotodaikonです。

今回は、柱梁接合部の帯筋比について考えます。

 

柱の帯筋比の規定値は0.2%以上

RC基準に細かい事は書いてあるが、帯筋比は0.2%以上となるよう配筋しなければならない。同じくせん断補強筋であるあばら筋についても同様。0.2%以上が規定値である。帯筋のピッチについては、@100を基準に、せん断力に対して必要となる本数を付加する。柱梁接合部内も@100のまま配筋を行う事が一般に行われている

 

ただ、実際、柱梁接合部は@150までは許容されている帯筋比0.2%の規定値を満足できる範囲であればピッチの調整は、150ピッチを超えない範囲で行える。

 

柱梁接合部の検討を靭性設計指針によって行う場合は話が違ってくる

上で書いた通り、柱梁接合部も、柱の一般部も帯筋比0.2%は満足する事が必要だ。ただ、「柱梁接合部の検討」を「靭性設計指針に基づいて行った場合、柱梁接合部の帯筋比は0.3%以上配筋しなければならないルールがある。私も最近適判の指摘で初めて知った。

 

 

 

 

靭性設計指針

 

 

まず、「2020年版建築物の構造関係技術基準解説書P.401」より、柱梁接合部のせん断補強筋比に関する記述がある。以下の内容である。

 

『④(前略) 補強筋の間隔は150mm以下、かつ、隣接する柱のせん断補強筋間隔の1.5倍以下とする。せん断補強筋比としては、柱の最小せん断補強筋量に準じて0.2%以上のせん断補強筋量を配筋する。

 

うん。上で私が書いた通りの事が書いてある。柱梁接合部のせん断補強筋は、

 

①ピッチが150mm以下である事

②最小せん断補強筋比は0.2%とする事

 

を満足しておけば問題ないという事ですよね?

 

しかし、同基準解説書P.689より、靭性指針式を用いた設計(終局時の検討)を行う場合は、靭性指針式の基準に則る事』と書かれている。

 

実は柱梁接合部には2種類の検討方法がある。電算を使ったことがある方なら見たことがあるかと思うが、接合部の設計方針について、選択肢が2つ用意されているはずだ。

 

①短期設計による(RC基準によるもの)

②終局時の検討による(基準解説書)

 

の2つである。

 

この選択によって、接合部の検討方法は異なるし、接合部の必要帯筋比が異なる。

 

①の場合は帯筋比0.2%以上

②の場合は帯筋比0.3%以上 である。

 

『2020年版建築物の構造関係技術基準解説書Q&A』に帯筋比について言及されている

上で書いた内容は、『2020年版建築物の構造関係技術基準解説書Q&AのNo.17』に記述があるので質疑文と回答文を引用する。

 

Q:『鉄筋コンクリート造の柱はり接合部のせん断補強筋量 pwについて、②によって付録 1-3.1 の靭性指針式(p.689)を用いる場合、同指針 8.6 によれば pw は 0.3%以上と規定されていますが、④で pwは 0.2%以上としています。靭性指針式で検討する柱はり接合部の pw を 0.2%とすることが可能でしょうか。

 

A:『鉄筋コンクリート造の検討に靱性指針を用いる場合、性能を確保するためには同指針で求められるせん断補強筋量(0.3%以上)とする必要があります柱はり接合部の②の検討では、設計者が接合部のせん断終局強度を適切に設定する必要があり,その一例として付録に記載の方法を用いることができることを示しています。従って,付録に記載の式以外を用いる場おいては,その用いた式の基規準で定められる pw の値と④に示された数値を比較して、より厳しい数値を採用する必要があります。(質疑 No.1 も参照して下さい。)』

 

質疑の②というのが終局時の検討の事。終局時の検討を行った時も帯筋比Pwは0.2%で良いか?という質問に対し、ICBA(一般財団法人建築行政情報センター)は、明確に、靭性指針式(終局時の検討)に則り接合部の検討を行う場合、靭性指針の規定に基づくもの(Pw≧0.3%)とする事。と回答している。

↓Q&Aリンク

https://www.icba.or.jp/zzfilebox/kenshuka/2020qa.pdf

 

帯筋比0.3%を満足する柱断面について

接合部の検討を靭性指針式によって行った場合、帯筋比が0.3%以上必要だという事は分かった。では、帯筋比0.3%を満足する為に必要となる帯筋本数及びピッチと、柱断面との関係について見てみたい。

 

 

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柱梁接合部周辺の配筋

 

柱梁接合部周辺の配筋は上図のようになっている。帯筋は@100を基本とし、小ピッチでも75@までとする。これは、コンクリートの充填性を考慮した上での規定値である。(2010年版配筋指針P.200に記述がある)

 

 

 

 

コンクリートには、粗骨材と呼ばれる大きめの石が含まれている。粗骨材の最大寸法は25mm(20mmの場合もあるが)とする。少なくともこいつが鉄筋の間を通らないと、コンクリートと粗骨材が分離してしまうのでマズイ。よって、帯筋に限らず、あばら筋を含めたせん断補強筋のピッチは、細かくしすぎるのは良くない。施工の手間も増えるしね。

 

上図青枠内を柱梁接合部、別名パネルゾーンと呼ぶ。

 

 

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帯筋比が0.3%以上となる条件

 

 

このパネルゾーンの帯筋比が0.3%以上となる条件は上図の通りだ。

 

①2-D13@100なら柱幅B及び成Dが846mmまでなら0.3%を満足できる。

B=D=2*127mm/100mm/0.003≒846.6mm→846mmまで。

 

②3-D13@100なら柱幅B及び成Dが1270mmまでなら0.3%を満足できる。

B=D=3*127mm/100mm/0.003=1270mmまで。

 

③2-D13@90なら柱幅B及び成Dが940mmまでなら0.3%を満足できる。

B=D=2*127mm/90mm/0.003≒940.7mm→940mmまで。

 

ちなみに帯筋2本で、最小ピッチである@75とした場合は、

B=D=2*127mm/75mm/0.003≒1128.8mmm→1128mmまでとなる。

 

まとめ

①帯筋比は0.2%以上必要

②柱梁接合部の検討方法は「短期設計」or「終局設計」のどちらかを選択する

③②によって、必要帯筋比が異なる。

・短期→帯筋比0.2%以上

・終局→帯筋比0.3%以上

 

 今回は必要帯筋比について考えました。

ではまた。