支持地盤はどのように決めるのか

どうもimotodaikonです。

 

今回は基礎の支持地盤をどのように決定するか?について考えたいと思います。

 

基礎とは

まず初めに基礎とは何かを考えたいと思います。

基礎とは、建物を支持する部分で地盤に埋め込まれた部材の事です。基礎の役割は上部構造の荷重を地盤に伝達する事で、基礎がしっかりしていなければ建物は成り立ちません。

基礎には大まかに直接基礎(独立基礎・布基礎・べた基礎)、杭基礎(既成杭・場所打ち杭)の二つの形式があります。基礎形式の使い分けは、地盤や建物形状・建物規模にもよります。低層の建物であれば、直接基礎で済むでしょうが、高層建物になると高い支持力や高い引き抜き耐力が必要になるので、地盤下層の硬い地盤に支持させる杭基礎になる事が多いでしょう。

 

地盤を調べる

基礎形式を決定するのに最も欠かせないのが詳細な地盤の情報です。

まず、地盤の成り立ちから説明します。

地盤には大きく分けて二つの地層が存在します。

 

1.沖積層(歴史が浅い地層)

2.洪積層(歴史が古い地層)

 

沖積層とは、比較的歴史が浅い(新しい)地層で、軟弱地盤である事が多い地層です。反対に洪積層沖積層の下部に存する地層で、風化花崗岩や、硬い岩盤などで構成されています。土は堆積するほど土自身の自重で押し固められ、長い年月が経つにつれ洪積層の様な硬い地層が出来上がります。

 

地盤を調べるには?

上で書いた地盤を調べる方法ですが、一般的に標準貫入試験を採用する事が多いです。

標準試験貫入試験とは、下記に示す試験の事。

 

①測定深さまで掘ったボーリング孔底にサンプラーをロッド先端に取り付けて降ろす。

②ロッドの頭部に63.5kgのハンマーを76cmの高さから自由落下させる。

サンプラーを地盤に30cm貫入させる。

 

上記①~③の作業により、地盤の固さ指標であるN値を調べる事ができます。

N値とは、③サンプラーを地盤に30cm貫入させる為にハンマーを自由落下させた回数の事で、N値が大きい程硬い地盤であるといえます。

 

土質区分とは?

一口に地盤と言っても、さまざまな特性を持つ地層が折り重なって形成されています。

砂質土層や粘土層、砂礫層、シルト層、ローム層など。下図を見てもらえばより分かり易いと思います。

 

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(埼玉県ボーリング柱状図ベースマップギャラリーより引用)

https://www.arcgis.com/apps/View/index.html?appid=48e32fbb517e48b1848caa45f5872bba

 

上の柱状図より読み取れる事は、深度9.6mまでは主にシルト質の地層で構成されており、N値1~6と軟弱地盤である事。深度9.6m以深は主に砂層で構成されており、N値が14~26で推移している事。

シルトというのは、粘度質の土の事(広義には泥)で、砂よりも粒度が細かく、粘土より荒い特徴を持った土の事。粒形はシルト=1/16mm~1/256mm。粘土=1/256mm以下であり、粒形1/16mm以下の土を泥と定義しています。

深度10m前後までは、支持力が期待できる地盤ではなさそうです。

 

ボーリング柱状図から支持地盤を判断する

このボーリング柱状図を見て、支持層をどこにするか?を考えてみましょう。

孔口標高(資料一番上の、標高0mの線の事)から深度9.6mまでは、上で書いたように軟弱地盤で支持力が期待できない層だと判断できます。例えば設計するのが高層建築物の場合、この時点で直接基礎という選択肢は除外します。深度9.6m~12.65mまでは細砂で構成された地層でN値も20前後確保できる事から、この層を支持層とするのが現実的だと考えられます。深さ的に杭基礎にするしかなさそうです。

 

基礎形式が決定したら基礎の設計を行う

一般に上に書いた流れで基礎の選定は行います。基礎の設計を行うには上屋の設計が終わっていないと出来ません。なぜなら各基礎に作用する支点反力が基礎の設計に必要不可欠だから。杭基礎とする場合、電算内で杭のモデル化を行い、支持力のみ杭屋(ジャパンパイル等)に出してもらって設計する事が多いです。設計中に上屋の重量が変わったり断面変更による設計応力が変わったりする事はザラですからね。

 

 

本当に杭基礎しか手段がないのか

さて、ここで一つ考えたいのが、上述のボーリング柱状図に示される地盤条件では、杭基礎以外に選択肢は本当にないのか?という点。私は直接基礎は除外すると書きましたが、あくまで高層建築物を想定した場合の一般論に過ぎません。大方、杭基礎を選択する事になるとは思いますが、実際杭基礎以外の基礎形式にする事は不可能なのでしょうか。

 

直接基礎に出来る可能性はある

建物が高層でなく、比較的小規模な建物(重量が軽い建物)ならば、直接基礎にする事は可能だと思います。例えば独立基礎を採用する場合、深度2.6m以深(深度2.6m~5.7mの層)の粘土質シルト層を支持地盤に出来るかもしれません。N値は小さいですが、粘着力次第では建物を支持するのに十分な支持力が得られる可能性があります。

粘着力は、詳細な地質試験を行っていればその値を用いる事ができます。今回のボーリング柱状図を見ると、右から3行目の【資料採取】の項に深度・資料番号・採取方法の記載があります。これは、貫入試験を行った際に抽出した土を持ち帰り、試験を行った事を意味しています。この試験の目的は、一軸圧縮試験(一方向から力を加える)や三軸圧縮試験(三方向から力を加える)を通して、土の強度を測定する事にあります。

(試験箇所は下の赤枠の部分)

 

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粘性土の粘着力は、Nから換算する事も出来ます。

c=1/2qu  c:粘着力(kN/m2),qu:一軸圧縮強度(kN/m2)

qu=12.5N  N:N値

 

 

地盤改良を行う

他には地盤改良を行うという方法もあります。地盤改良とは、文字通り地盤を改良して、良質な地盤に造り変える方法です。地盤改良には、深層混合処工法浅層混合処理工法の二種類があります。

 

・深層混合処理工法とは、"セメント系固化材と原地盤を混ざ合わせ、柱状に固結化させた改良コラムを杭形式、壁形式、ブロック形式に配置する事で地盤を改良する工法の事"。中規模程度の建築物に用いられ、支持地盤が浅く短杭となる地盤改良には本工法が採用されます。一般に軟弱地盤の深さが2~8m程度の場合に適用できます。

 

 

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・浅層混合処理工法とは、"地表面が軟弱地盤で、その下に十分な支持層がある場合に基礎下部地盤を薄層状に転圧改良する工法の事"。地表面より2m程度を2層に分け、セメント系固化材を改良前の地盤と混合し、締固めを行って固結化させます。地耐力30~100kN/m2程度で、

①階数≦3

②高さ≦13m

③軒高≦9m

④延べ面積≦500m2 

の条件を満たす建築物を対象とする。

 

以上より、今回の柱状図を見る限り深層混合処理工法の方が現実的だと考えられます。後は杭基礎と比較して、どちらがコスト安になるか考えて基礎形式の選定を行う事になるかと思います。

 

今回は支持地盤をどのように決定するかについて考えました。今回は表面をサラッただけなので、深い考察はまた次回。

 

ではまた。