電算を読み解く-剛性計算条件編-①

どうもimotodaikonです。

 

今回からは私たち構造設計者が普段使用している「電算」について読み解いていきます。

電算を読み解く②については以下参照ください。

 

 

imotodaikon.hatenablog.com

 

 

電算とは

構造設計者が普段使用している構造計算ソフトを一貫構造計算プログラムといい、その略称として電算と呼ぶ。電算というのは、計画建物の形状をモデル化し、長期荷重、積雪荷重、風荷重、地震荷重といった力を作成したモデルに加え、モデル化した部材の応力状態、変形、検定値、小梁やスラブなどの二次部材から、主架構、柱脚、基礎に至るまで、すべての部材の断面算定を行う事を目的としたプログラムの事である。内部では非常に複雑な計算(微分積分・行列等を用いた計算が当たり前のように行われている)が行われているが、計算ボタンを押せば一瞬で計算結果を出力してくれる。ただ、便利すぎるが故になんとなく使っている人も多いはず。特に電算が普及して以降、構造設計の職に就いた人は当てはまる人が多いのではないかと思う。かくいう私もその一人で、この仕事を7年程やっているが、未だに電算内でどのような計算が行われ、計算条件がどのように計算結果に影響しているのか、さっぱりわかっていない。

電算を使う以上、計算条件が結果にどのように反映されているか、各計算条件の意味を理解しておかなければマズイ。そこで自分自身の為にも電算の設定内容を一つずつ読み解いていきたい。

尚、このブログで扱う電算はユニオンシステム株式会社の「SS7」とする。(詳細は下記参照)www.unions.co.jp

 

①剛性計算に考慮する耐震壁の厚さ

では内容に入っていきたい。今回は壁厚の設定について扱う。

剛性計算に考慮する耐震壁の厚さについては、おそらく120mmがデフォルトになっている。耐震壁は大体180mmから、厚くても350mm程度で設計する事が多い。よって、ここの設定はデフォルトの120mmとしておいて差し支えない。壁部材の各種制限値は、「2010年版鉄筋コンクリート構造計算基準・同解説(以後RC基準)」のP.279に記載されている。その内容を以下に示す。

 

(1)壁板の厚さは、原則として120mm以上かつ壁板の内法高さの1/30以上とする。

(2)壁板のせん断補強筋比は、直行する各方向に関してそれぞれ0.0025以上とする。

(3)壁板の厚さが200mm以上の場合は、壁筋を複筋配置とする。

(4)壁筋は、D10以上の異形鉄筋を用いる。見付面に対する壁筋の間隔は300mm以下とする。ただし、千鳥状に複配筋とする場合は、片面の壁筋の間隔は450mm以下とする。

(5)開口周囲および壁端部の補強筋は、D13以上(複配筋の場合は2-D13以上)の異形鉄筋を用いる。

(6)壁筋は開口周囲および壁端部での定着が有効な配筋詳細とする。

(7)柱型拘束域および梁型拘束域の主筋は、13条5項(2)~(5)および14条4項(2)~(4)の規定に従う。特に検討をしない場合、梁型拘束域の主筋全断面積は、本条6項の検討により必要とされる梁型拘束域の断面積の0.008倍以上とする。

(8)柱型拘束域および梁型拘束域のせん断補強筋は、15条2項(4)に従う。

(9)開口に近接する柱(開口端から柱端までの距離が300mm未満)のせん断補強筋比は原則として0.004以上とする。

(10)柱付き壁(そで壁付き柱)では、柱のせん断補強筋比は原則として0.003以上とする。

(11)軸力を負担させる(c)柱なし壁(壁板)では、上記(1)~(6)のほか、原則として壁筋を副配筋とする。

 

今回の記事に関連するのは(1)。

上記のとおり、壁板厚は120mm以上とし、かつ壁板の内法高さの1/30以上とする事とRC基準には明記されている。 

壁板の内法高さhoというのは、階高から上階の梁成を差し引いた高さの事を言う。

 

例えば1階の階高4,500mm、2階の大梁成が1,000mmの建物があった場合、内法高さho=4,500mm-1,000mm=3,500mmとなる。hoの1/30以上を満足すればよいので、壁厚の必要最低板厚tは、ho*1/30=3,500*1/30≒117mm≦120mm。よってこの場合、120mmの規定値によって決まる。

 

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壁厚の算出

 

もし仮に梁成は同じ条件で、階高Hが5,000mmだったら?結果は内法高さの1/30以上の条件で決まる。計算するとt=ho*1/30=(5,000mm-1,000mm)*1/30≒133mm≧120mmとなる。

ただ、上でも書いたように耐震壁の厚みは最低でも180mmは確保するのが通例なので、内法高さによる制限は無視しても問題ない。だから電算でも(内法高さによる規定を無視して)デフォルト値が120mmになっている。

 

今回は壁厚の設定について考えました。

 

ではまた。