どうもimotodaikonです。
今回は変形増大係数について考えます。
変形増大係数とは?
変形増大係数というのは、部材の変形量を算出する際に乗じる係数の事である。
〇木造
・変形増大係数=2
〇S造
・変形増大係数=1(ただしデッキプレート版においては1.5)
〇RC造
・床版→変形増大係数=16
・梁→変形増大係数=8
〇SRC(鉄骨鉄筋コンクリート造)
・変形増大係数=4
〇アルミニウム合金
・変形増大係数=4
〇軽量気泡コンクリートパネルを用いた構造
・変形増大係数=1.6
(2020年版建築物の構造関係技術基準解説書P.328より)
変形増大係数は用途、構造種別により異なる
上記のように、RC造は梁は8、スラブは16の倍率を考慮する必要があるが、鉄骨造の場合は1となり、考慮しない事と同義と言える。他にも木造やSRC等、構造種別によって変形増大係数は異なる。
RC小梁の設計
RC小梁の設計を例にとってみる。梁なので、荷重条件に関わらず変形増大係数を8とする必要がある。
実例を交えて解説する。例えば、下のような設計条件のRC小梁があったとする。
(計算の簡略の為単純梁とする。)
設計条件をまとめると
①梁長は6000mm
②床荷重は6600N/m2【小梁用】
③梁断面:300mmx650mm
④Fc=24N/mm2
⑤変形量の算出式:単純梁なのでδ=5wℓ^4/(384EI)
⑥変形増大係数α=8
計算結果より、おおよそ、たわみ量は18.6mm、たわみ角は1/323となる。
変形増大係数が用途、構造形式によって異なる理由
ここで、変形増大係数がなぜ部材ごと、構造種別ごとに異なる値を定められているのかを考えたい。一つの答えが【規基準の数値は「何でなの」を探る_第1巻P.32】に記載されていたので紹介したい。
Q:「S造の梁は1倍、SRCの梁は4倍、RC造の梁は8倍(それぞれヤング係数も異なるのに)という変形増大係数に違いがあるのはなぜか」
上記の質問に対して、要約した回答を以下に示す。
A:上記に示した各変形増大係数は、研究基盤と実験結果が多く発表されているRC造の床版についての16倍を基準値として決められている。1960年前後から、大スパンスラブを採用する事例が増え、それに伴いスラブの過大なたわみによる不都合が頻繁に報告されるようになった。それらの不都合は、施工によるもの(設計スラブ厚に対して施工後のスラブが薄かったり、支保工の存置期間が短かったり等)と考えられていたが、どうやらそれだけではない事が研究により明らかになった。そこで日本建築学会により出版されたRC基準(1982年改訂版)より、スラブ厚さの算定式を示す事になった。このRC基準改訂版より、現在に至る長期たわみ量を弾性たわみの算定値に長期たわみ係数を乗じる事で算定する方針となる。計算上、完全固定という条件の基、弾性たわみを算定している為、
・実際のスラブの固定度の低さを考慮に入れる必要がある事
・端部に初期ひび割れが生じると曲げ剛性が低下する事
・曲げひび割れが生じた後の剛性低下の影響が梁よりも大きい事
等により実験値として大きな長期たわみ量が生じる事を理解し、設計値に反映させることとした。多くの実験を経て、RCの床版は変形増大係数を16、梁は8、S造は1、SRCは中間値として4を採用するに至った。
という経緯がある。
RCは確かにひび割れを起こすし、ひび割れ後の剛性が低下するというのも納得できる。また、固定端といえば、どれだけ力を加えてもびくともしないような無限の固定度を持った支持端を想像してしまうが、現実にはおそらく存在しない。そのような事を考えると上記の変形増大係数もなんとなく納得できるのではないか。(たくさん実験したみたいだし信頼性は高いのでは)
今回は変形増大係数について考えました。
ではまた。