定着長の規定について考える

どうもimotodaikonです。

今回は、RC造における鉄筋の定着長について考えます。

 

定着長とは何か

定着長とは何か。RC造は鉄筋とコンクリートによって成り立っているが、鉄筋及びコンクリートがしっかりと体をなしている(お互いにちゃんとくっついてる)から本来持つパフォーマンスを100%発揮できるのであって、そこがうまくいっていないと、力がうまく伝わらなかったり、大げさかもしれないが鉄筋が抜け出したり、不都合がいろいろと起きるわけだ。そこで、鉄筋とコンクリートの一体性を高める為に、必要定着長というルールがある。

 

定着長を決定づける要因

定着長には鉄筋径の40dとか20d+フック付きとか様々な長さがあるが、定着長を決定づける要因の一つにコンクリート強度がある。コンクリート設計基準強度Fcが大きい程、定着長は短くて済むのである。これは、鉄筋とコンクリートの付着が取りやすくなる事に起因している。コンクリート強度が大きいということは、鉄筋をつかむ力(これを付着力と呼ぶ)が大きくなるということだ。要は鉄筋に引張力がかかった時、引抜に対して抵抗しようとする力が大きくなる。鉄筋がコンクリートから抜け出しにくくなる。

 

ちなみに異形鉄筋の許容付応力度の算出式は以下による。(丸鋼は別途計算式による)

 

①上端筋:τa=1/15Fcかつ(0.9+2/75Fc)以下

②その他:τa=1/10Fcかつ(1.35+1/25Fc)以下

 

上の計算式で2つの式に分かれているのは、

①上端筋は、コンクリート打設後、コンクリートの自重により鉄筋周囲のコンクリートが時間とともに沈下し、鉄筋とコンクリートの接着面積が小さくなる事に起因する、②に比べて低減式となっている。

②式は上端筋以外、すなわち2段目、3段目の鉄筋の許容付着応力度の計算式である。

 

・仮にFc=27N/mm2として計算してみる。

 

①上端筋:τa1=1/15*27=1.8N/mm2、τa2=(0.9+2/75*27)=1.62N/mm2。τa=min(τa1,τa2)=1.62N/mm2となる。

②その他:τa1=1/10*27=2.7N/mm2、τa2=(1.35+1/25*27)=2.43N/mm2。τa=min(τa1,τa2)=2.43N/mm2となる。

 

①と②の比率は①:②=1.62:2.43=1:1.5。つまり2段目以降の鉄筋のτaは、1段目の1.5倍とれるという事になる。

 

少し話がそれたが、Fcが大きくなる程付着力が高くなる事は明白だ。計算式の中で許容付着応力度を高める要素はFcしかないからである。

 

 

1段目の鉄筋は、コンクリートとの隙間が生まれる

 

定着長の規定値は?

定着長の規定値は、詳しくはRC基準やRC造配筋指針を参照してほしい。ここでは一般的な定着長として実務でもよく使われる、直線定着とフック付き定着(折り曲げ定着)、それぞれの定着長の規定値についてまとめる。

 

 

 

直線定着長L2と、フック付き定着長L2h

 

上表にあるように、鉄筋の材質がSD295(A・B)~SD490まで規定されており、Fcが大きくなる程、必要定着長は短くなることが分かる。

 

例えば、SD295を例にとってみると、Fc18だと30dのものが、Fc48~Fc60だと15dと、1/2になる事が分かる。ちなみにdは鉄筋の呼び径の事で、D13の13、D25の25をそれぞれの係数にかけた値とすれば良い。

すなわち、直線定着で鉄筋径D16、かつFc18の場合→L=30*16=480mmが、Fc48~Fc60の場合→L=15*16=240mmとなる。

上の表を見てもらえば分かるが、当然直線定着よりもフック付きの方が、必要定着長は短くて済む。どちらがコンクリートから抜け出しやすいかを考えるとイメージしやすいはずだ。なんのひねりもなくただまっすぐコンクリートに突っ込んだ鉄筋と、90°~180°のフックを付けた鉄筋はどっちの方がコンクリートから抜け出しにくいか。そう、フック付きの方なのでありますしおすし。

 

ここで、直線定着とフック付き定着で、どの程度必要定着長に差があるのかを比較してみた。それが下の表である。

 

 

 

直線定着とフック付き定着の必要定着長の比較

 

なんと全てのFc及び鉄筋材料において、きれいに10d差である事が分かった。さっき上でさらっと書いたが、フック付き定着のフック角度(折り曲げ角度)は90°、135°、180°の3パターンある。いずれの場合も必要定着長に違いはない。違うのは、"余長"と呼ばれる、折り曲げた後の鉄筋の引き延ばし長さである。

 

・90°フックは余長=8d以上

・135°フックは余長=6d以上

・180°フックは余長=4d以上

 

である。ほんとは図も押せたかったけど面倒くさいので気が向いたときに貼っときます。

 

では今回はこの辺で。ではまた。