鉄骨造③_二次部材~小梁の計算

どうもimotodaikonです。

 

前回、RH(ロールエイチ)の断面性能の算出を行ったので、それをもとに今回はより実践的な部材の検討を行ってみたいと思います。

 

断面算定とは

断面算定という言葉は構造設計ではよく用いられます。

断面算定とは、材に作用する荷重を元に、使用部材が持つのか・持たないのか確認する作業のことです。

例えば鉄骨造のRHには、細幅・中幅・広幅といった規格品(主に市場に流通している部材、鉄工所にもストックされているような一般的な鉄骨材)があります。

サイズは様々で、それに応じて断面性能ももちろん違います。

今回は、各種断面性能の意味も解説しながら、例題を解いていきます。

 

断面算定実践其の1~使用部材と断面性能

今回使用する部材は細幅のH-300x150x6.5x9とします。

小梁では比較的用いる部材です。

断面性能は以下の通りです。

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・鉄骨材質はSS400とします。 

・Fは材質に応じた材料強度のことです。

・Eはヤング係数といいます。部材のたわみ計算等に用いる値で、鉄骨は一律205000N/mm2となります。

・Λは限界細長比といいます。部材の許容応力度(後述)の算定等に用います。

・ftは許容引張応力度といいます。Fと同値をとります。引張応力に対する許容値です。

・h以降は省略しますが、Ix,IyZx,Zyは重要な概念なので触れておきます。

 

Ix,Iyは断面二次モーメントといいます。

I=BxH^3/12で求められます。

部材の硬さ・変形のしにくさを表す指標です。

IxとIyの違いは強軸側か弱軸側かの違いによります。

 

また、Zとは断面係数のことで、曲げモーメントに対する抵抗力と考えてよいです。

x,yの違いは断面二次モーメントと同じく強軸か弱軸かの違いです。

 

断面算定実践其の2~荷重の算出

断面算定に必要な荷重を求めます。

仕上げは1000N/m2+天井とし、用途は居室とします。

また、デッキ受けの小梁として設計しましょう。

以上より荷重条件は以下とします。

 

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断面算定実践其の3~検討モデル及び部材条件

検討モデルは、ℓ=5,000mmの単純梁とし、中間に座屈止めが入っているものとします。

荷重条件は等分布荷重とします。

接合部はHTB(ハイテンションボルト)2-M16としましょう。

 

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断面算定実践其の4~許容応力度の算出

断面算定に必要な条件が揃ったので、ここから断面算定に必要な許容応力度を求めて行きます。

 

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許容曲げ応力度fbとは、文字通り曲げ応力に対する許容値と考えてよいです。

許容曲げ応力度はfbAとfbBの2つの式の内大きい方の値を取ってよいとされています。

ただし、一点注意点があります。

それは、長期荷重時であればF/1.5=156.7N/mm2を超えて許容値を設定することは出来ないということです。

F値は材料強度と先述しましたが、降伏応力度と言い換えることもできます。

降伏とは、部材が変形して元に戻らなくなった状態(塑性)を指します。

これに対して、荷重を除けば元の形状に戻る状態を弾性と呼びます。

主フレーム(主柱・大梁)の一次設計及び二次部材の設計では部材が降伏することを許容しません。

設計荷重に対し降伏しない部材を選定する=弾性範囲内で部材を決定することを弾性設計と呼びます。

ちなみに長期のfbの最大値をF/1.5とする理由は、長期荷重は常時かかり続ける荷重であるからです。

安全率として1.5分の1倍している訳ですね。

長期許容応力度を1.5分の1倍するのはfbに限らず、許容せん断応力度、許容圧縮応力度も同様です。

短期荷重時のfbの最大値はF=235N/mm2となります。

 

許容せん断応力度fsは長期であればfs=F/√3/1.5、短期であればfs=F/√3で求めます。

 

接合部耐力は使用するボルトの断面積と基準張力によって求められます。

F10Tの基準張力To=500N/mm2

許容せん断応力度(1面せん断)fs=0.3To=150N/mm2

ボルトの軸部断面積A=(16/2)^2xπ=200.96mm2

 

ボルト耐力Rs=fsxA/1000≒30.2kNとなります。

断面算定実践其の5~等分布荷重及び支点反力の算出

等分布荷重w1は仮定荷重∑Wに負担幅Bをかけ、自重をプラスした値を用います。 

支点反力は、等分布荷重w1に部材長ℓをかけて1/2倍した値となります。

 

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断面算定実践其の6~断面算定

 以上より断面算定に必要な条件は出揃いましたので、断面算定を行います。

 

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曲げモーメントは単純梁で等分布荷重の場合Mo=wℓ^2/8で求められます。

部材中央が最大値となります。

 

せん断力には支点反力を用います。

一般にH形鋼ではせん断力はウェブで、曲げ応力はフランジで負担すると考えます。

なのでせん断力Qをウェブの断面積Awで除して応力度を算出しています。

 

接合部耐力はボルト耐力x本数になります。

せん断力は同じく支点反力を用います。

 

最後にたわみ計算です。

たわみ量は等分布荷重の場合、δ=5wℓ^4/384EIxで求めます。

たわみ角の許容値は鋼構造設計基準2005年版P.81より1/300以下とします。

 

以上で断面算定は終了です。

各応力に対し、母材・接合部の検定値が1.0未満であること、たわみ角1/300以下であることが確認出来ればOKです。

場合によっては圧縮力が作用することもありますが、一般的な小梁の場合は考える必要はありません。

 

今回は、断面算定について考えました。

いかがだったでしょうか。

本来は設計荷重や部材条件(長さなど)から部材を決定します。

今回は断面ありきで解説していきましたが、実践では荷重算出→部材条件の確認・設定→部材の選定の流れになることに気を付けてください。

 

また、今は二次部材の検討も電算内で済ませられますし、二次部材検討用のソフトもあります。

ですが、設計者全員分のライセンスを保持している会社は少数だと思うので、手計算ベースで計算できるようになっておくことをお勧めします。

 

今回はこの辺で。

ではまた。

 

鋼構造許容応力度設計規準

鋼構造許容応力度設計規準