水平ブレースの検討をやってみる
今回検討する建物
上図のような建物の水平ブレースの検討をしてみる。
設計条件は以下とする。
①桁行方向は各柱間6mスパンの全長36m。張間方向も同じく6mスパンの全長24mとする。
②建物外周の節点は柱を示す。尚、張間方向の中通は間柱とする。
③桁行・張間方向ともにブレース架構とする。
④ブレースの検討は、地震時に対して行い、X方向、Y方向の両方向に対して行う。
⑤建設地を多雪地とし、地震力に積雪荷重を考慮する(風荷重は省略)
⑥図のP1~P3は各節点の負担面積から求めた節点荷重を示す。(数値は下記参照)
荷重算出
まず各節点の負担荷重を算出する。
超ざっくりの荷重表と節点地震用重量表
◎仮定荷重
①床荷重は、屋根折板200N/m2、大梁・小梁・ブレース等の重量を600N/m2、天井を200N/m2とし、合計1000N/m2。
②壁荷重は、外壁にECPを使用しECPの重量を700N/m2、仕上げに300N/m2、間柱等が300N/m2の合計1300N/m2。建物高さは5mとし、節点荷重の計算には高さの半分の2.5m分を考慮する。
③積雪荷重は、多雪地の垂直積雪量150cmとし、単位重量30N/cm/m2。30x150=4500N/m2。地震時の検討なので、0.35倍する。
◎地震用節点重量
各節点の負担面積および上記条件から算出する。
①P1=屋根+積雪より、合計92.7kN
②P2=屋根+外壁+積雪より、合計65.9kN
③P3=屋根+外壁+積雪より、合計42.7kN
1.X方向の検討
まずX方向に地震力が作用した時の検討からやってみる。
X方向各節点の負担面積(X方向は2列の水平ブレースから成る)
X方向地震時のフレームの変形
X方向に地震力がかかった時、上図のようにY方向の建物中心軸から【手前側】と【奥側】の2列のブレースに力が分散され,最終的に桁面の鉛直ブレースに力が伝達される。今回建物形状を成形としているので、建物中心軸から【手前側】のみを抜き出して検討する。
◎ブレースの検討(X方向)
鉛直ブレースとみなすと分かり易い
X方向のブレースは1列当たり6構面で成り立っている。まず、1列目を抜き出してみる。水平ブレース構面を鉛直ブレースに見立て、柱頭部分に水平力が掛かるものとみなす。
すると、①1列目の検討時の水平力は、ΣPx1=(P1x5+P2x2)/2xCoとあらわす事ができる。ここで1/2倍しているのは、建物中心軸から上下のブレースに力が分散されるから。また、Co=0.2とする。
ブレースの検討には、ブレースの長さ、負担構面数が必要となる。ブレースの長さは、幅、高さから三角関数で求められる。結果、ℓ=√(6000^2*2)=8485 mm。構面数は図より6構面となる。これらの条件からブレース1構面あたりに生じる引張力を求めると、
T1=ΣPx1*ℓ/L/n=14.0kNとなる。
よって1列目のブレースの必要断面積は、
必要Ae=T1*1000/ft(材質をSN400とし、ft=235N/mm2とする)
=14.0*1000/235=59.7mm2。→1-M16(Ae=150.8mm2)で足りる。
2列目の検討には、2列目の負担する重量に、1列目から伝わる重量を加算して計算する必要がある。よって設計水平力は、ΣPx1+ΣPx2となる。
これらから必要断面積は179.1mm2程度と求められたので、1-M20(Ae=235.6mm2)あればOK。
2.Y方向の検討
次にY方向の検討。考え方はX方向の時と同じ。
Y方向各節点の負担面積(X方向は3列の水平ブレースから成る)とフレームの変形
鉛直ブレースとみなすと分かり易い
検討方法はX方向と同じなので省略する。結果、Y方向3列目のブレースは1-M24ないと厳しいという事が分かった。X方向よりY方向の検討の方が厳しかった要因としては、
①負担構面数が少ない事(X方向6構面に対し、Y方向4構面)
②負担重量(負担面積)が大きい事(Y方向の方が1.1倍ほど大きい)
の2つかな。
断面は厳しい方で決めれば安全なので、今回はY方向の結果を採用すれば良い。
今回は以上です。