露出柱脚の中立軸・回転剛性の求め方

今回は、露出柱脚の中立軸、回転剛性(回転ばね)の求め方について考えます。

 

回転剛性は曲げに対する抵抗力(剛さ)の指標

既製品の柱脚、例えばハイベースだったりベースパック等の場合、柱サイズによって採用できる規格が決まっており、ハイベースならセンクシア、ベースパックなら旭化成の柱脚検討用の簡易ソフトで断面算定できる。既製品の魅力は何といっても露出柱脚に比べて高剛性を有している事、そしてサポートがしっかりしている事だろう。保有耐力接合も満足する様に設計されているし。

一方、露出柱脚は構造設計者が自分でアンカーボルト、ベースプレート、必要に応じてリブプレートの検討を行わなければならず、個人的に超面倒くさい。

しかも軸力と曲げモーメントによって中立軸の位置が変わるので、手計算は本当に面倒くさいのである。最近はRC/Sチャート等の検討ソフトも充実しており、基本それらのソフトを使って検討を行う。しかし、検討の中身を知っておくことは、構造計算において非常に重要である。私も最近、SS7で露出柱脚の検討をする機会があったが、出力された検討結果が何を示しているのか、なんの検討でNGでどうやったらOKになるのか悩んだ経験がある。そういった状況を回避するためにも、計算手順を知っておくことは必要(というか知っとかないとほんとはやっちゃダメ)なのです。そういった意味で、手計算で当たりを付けたうえで、一貫計算ソフト等を駆使して妥当性を確かめる、という手順で進めないと危険だなと痛感している。

 

蛇足になるが、構造設計を手書きでやっていた時代では、柱脚をピンとして設計する事が当たり前だった。柱脚をピンとするメリットは、柱脚の曲げモーメントに対する抵抗力がないという事なので、上屋の設計において安全側の設計になる事である。しかしこれは、柱脚に対しては危険側の設計となる。柱脚にも剛さがあるのに、それを無視して設計するという事だからだ。

実際、これまでの多くの大規模震災の経験から、柱脚の剛性を無視した設計により建物の倒壊などの事例が多数報告された。これにより、柱脚部のような建"接合部"の重要性が見直され、今では間柱の柱脚の検討も計算書に入れておかないと、確認検査機関から指摘を受ける。(実際間柱なんて柱脚の剛性に期待せずにピン-ピンで解くし、少なくともアンカーボルトのせん断力に対する検討をしておけばいいと思うんだけど)

 

露出柱脚の回転剛性の計算方法

前置きが長くなったが、回転剛性の計算方法は以下による。

 

KBs=E・nt・Ab(dt+dc)^2/2lb

 

E:ヤング係数=2.05*10^5N/mm2

nt:引張に有効なアンカー本数

Ab:アンカーの軸部断面積(ねじ部じゃないよ!)

dt:柱芯~引張アンカーのボルト群重心までの距離

dc柱芯~圧縮側の柱フランジ外縁までの距離

lb:アンカーの有効長さ(20dとか35dとか)

 

詳しくは鋼構造設計基準を参照ください。(2005年版P.120)

 

 

 

今回の記事で言いたいのは中立軸の求め方

今回記事にしたのは、今までずっと中立軸の求め方を知りたかったけど計算方法が分からなかったが、やっと計算方法を見つけたからである。

 

中立軸は"Xn"で表し、計算方法は

 

Xn={-A/2+(B/108)^1/2}^1/3+{-A/2-(B/108)^1/2}^1/3-x

A=2x^3-90pdx^2-180pd^2x-90pd^3

B=27A^2+4(-3x^2+90pdx+90pd^2)^3

 

による!

何回か上式に数値を入力して計算してみたけど、たぶんAは負値になる。それでもそれらしい数値は出てきたのでまああってるんでしょう。

 

Xnの妥当性の確認

黄色本の露出柱脚の検討資料と上式による中立軸Xnの値を比較し大きく外れていないか確認する。

 

 

 

 

①黄色本P.639 設計例-1との比較

 

②黄色本P.645 設計例-3との比較

どちらも概ねあっていることが確認できた。

 

今までさんざん調べてきて、Xn^3+3xxn^2+90pd(x+d)xn-90pd^2(x+d)=0とかいうよくわからない計算式で躓いていたのに、上の式に数値を当てはめると中立軸が求められるのである!これはうれしかった。しかも鋼構造設計基準に書いてあるなんて…。どんだけ読み込んでないんでしょうか。まあ上の計算式使わなくても、計算図表なるものはあらゆる参考書に載っていてそれに当てはめれば求められるんだけど…。細かい数値までは追えないからすっきりしなかった。

 

ちなみにXnの式は2005年版の鋼構造設計基準だとP.118に載っています。良ければ参考にしてみてください。

 

では。