どうも。
今回はベースプレートの板厚計算方法について考えます。
ベースプレートの板厚の検討方法
ベースプレートの必要板厚の計算方法には以下の2通りある。
①圧縮側の検討
②引張側の検討
①圧縮側の検討は、柱脚に曲げモーメントが生じた時の圧縮側の検討である。下図のように、柱に地震力(水平力)がかかった時、柱脚中立軸を境に引張側と圧縮側に分かれる。①の検討は下図右側の検討になる。
地震力を受けた柱と柱脚(礎柱)の変形
ただ、ベースプレートの圧縮の検討は結構面倒くさくて、リブプレートの存在を考慮し、2辺固定あるいは3辺固定版と仮定→ベースプレートの辺長比"λ"の計算→スラブ計算表から係数を引っ張ってくる→係数を考慮した計算としないといけない。チャートのような計算ソフトでやる分には構わないけど、手計算となると、、、やりたくない…。
そこで今回は、②の引張側の検討でベースプレート厚を求めてみたいと思う。
設計条件のまとめ
この検討では、アンカーボルトの降伏耐力を用いて計算する。計算が格段に楽になるからである。
まず、ベースプレートとアンカーボルトを下記のように仮定した。
・ベースプレート
B=250mm、D=400mm、t=16mm
材質=SN490C、F=325N/mm2、sfb=375N/mm2
・アンカーボルト
径=M22、ねじ部断面積=303mm2、n=4本、nt=2本
材質=ABR490、F=325N/mm2、ft=325N/mm2
ベースプレート
ここでベースプレートのsfbの値はどこから出てきたのか補足を。
ベースプレートやベアリングプレート(台車とコロコロの接合部のプレートとか)の部材が面外曲げを受ける場合は、fb=F/1.3とする。(fb=長期許容曲げ応力度)今回はアンカーボルトの降伏を前提としているので、許容曲げ応力度は短期とし、sfb=F/1.3*1.5=375N/mm2としている。
これについては、鋼構造設計基準や、規基準の数値は「何でなの」を探る第2巻に詳しく記載されている。
・断面のせいより幅の方が広い長方形断面
・矩形断面材が断面の弱軸まわりの曲げを受ける場合
は上記の計算式を用いてよいものとされている。
次に他の設計条件をまとめる。
ベースプレートのサイズ、アンカーボルトのボルト径等以外に設計に必要なのは、アンカーボルトの柱フェイスからの位置及びベースプレート縁からの位置である。
・柱フェイス~ボルト芯 g=71.5mm
・ベースプレート縁~ボルト芯 dt=50mm
とする。
ベースプレートのZの計算
ここでは、ベースプレートの断面係数Zを計算する。Zの計算の為には、曲げモーメントに有効な幅を求める。計算方法は、アンカーボルトから柱フェイスまでの距離に45度の角度成分を考慮した値による。
つまり、有効幅B'=アンカーボルト径R+2g=22+2*71.5=165mm。
よって、Z=B'*t^2/6=165*16^2/6=7,040mm2。
(上図の緑三角形の元端幅がB')
②引張側の検討によるベースプレート板厚の検討
以上で設計条件のまとめは終わり。あとはベースプレート板厚の検討を行う。
検討は、アンカーボルトが引張降伏した時の応力により生じる曲げモーメントに対して行う。
・アンカーボルトの降伏耐力
Ta=ねじ部断面積*ft/1000=303mm2*325N/mm2/1000≒98.5kN
・ベースプレートの負担する曲げモーメント
M=Ta*g/1000≒7.0kNm。
・断面算定
σb=M*10^6/Z/sfb≒1,000N/mm2/375N/mm2≒2.67>1.0:NG
結果全然持ってない事が分かった。断面を持たすためには以下の方法がある。
①ベースプレートの板厚を増す
②アンカーボルト径を落とす
③アンカーボルトの材質を落とす
①を試してみると、
板厚28mmは必要。
②+③で検討すると、
板厚22mmは必要と分かった。
まとめ
今回の検討は、アンカーボルトの降伏耐力に対する検討の為、ベースプレートの板厚計算においては安全側の検討となる。(これ以上の力は生じないため)
アンカーボルトの降伏を先行させ、ベースプレートをアンカーボルトよりも強くする。圧縮側の検討が面倒くさい場合はこの検討でざっくり当たりを付けるのが良いかも。もちろん存在応力に対して検討すれば、必要板厚はもっと薄くて済むだろうし、その辺は必要に応じて検討方法を変えると良いかと思います。
次はできれば圧縮側の検討をまとめたい(できれば…)
では。